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不思議夜話(ふしぎやわぁ) 第一集

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実際に見た”夢”をほぼ忠実に書いた自作のショートショートの取りまとめ。 第一夜から二十三夜まで。何の教訓も笑いもありません。(^-^;
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2022年2月の記事一覧

不思議夜話 21

薄暗い小さな部屋の中に佇んでいた。 右側に広がる窓には、重厚で黒光りのする鉄製の窓枠が嵌っており、ガラスも歪んでかなりレトロな感じがする。こちらは3階くらいなのか、見下ろす下に、小さな石畳の通りを挟んで町並みが僅かに広がり、地方都市に昔あったような小さな二階建てがハモニカの如くに並んでいる。それぞれの一階は、概ね二間間口くらいの木製でできたガラスの引き戸になっていた。夕暮れなのか、家々には黄色い明りが灯され、店だなに並べられた商品が歪んだガラスの向こうに行儀よく座っている。正

不思議夜話 20

片側二車線が交差する広い道路の端に、ひとり立っていた。 道路幅の割に車は少ない。斜向かいには無機質な厚みのない灰色の小さなビルが一つ立っており、それ以外には建物は無さそうだ。どうやらそのビルへ行かなければならない用事があるようだ。それにしても、射す光が黄色がかっている。どことなく南国の風情がする。服も派手な開襟シャツで、頬を撫でる風まで生温かく感じた。信号が変わって目の前に車がゆっくりと停止する。道路を横断しようとして、交差点にはスクランブル横断歩道の白線が斑に引かれているの