見出し画像

四則演算で分析してみた その5 ~バズワード検証編「教官殿、人生100年時代は何時到来するのでありますか」~

最近「人生100年時代」という言葉がバズワードのように方々で使われている。例えば、人的資本経営について書かれた伊藤レポート2.0でもこの言葉が使われている。
思想がパンクな筆者は、
「なんでもかんでも権力者の言うことが正しいと鵜呑みにするのはよくない。おかしいコトも言うてるはずやで!」
とどうしても考えてしまいがちなのだ。

そんな筆者は、6月のとある日にPLAN75という映画を見た。ネタバレにならない程度に概要を述べると、少子高齢化が進んだ日本社会で、75才になった高齢者が自らの意思で安楽死を選べる世界観が描かれている作品である。
社会問題を煮込んだ良作なので是非映画館でご覧いただきたいのだが、この作品を通して高齢者が直面する健康、経済、孤独など様々な壁を疑似体験し、人生100年時代というバスワードについて筆者は考えさせられたのだ。

人生100年時代と言われてるけど、それはいつ現実味を帯びる話?
ここで言われている100年って平均寿命?健康寿命??
達成までの時間軸がそもそも自分に関係してる???
本当に100才まで生きたい????

これが今回の記事を執筆しようとしたきっかけだ。

では四則演算で「いつ人生100年時代が到来するか」を分析してみよう。

上記図表は、厚生労働省のホームページ(※1)に掲載されているものを転載したものだ。皆さん、この図から男性、女性の平均寿命、健康寿命がいつ100年を迎えると想像されるだろうか。30年後?それとも50年後??

以下で分析していくが、その際に使用するデータは、上記図表の元データであり、厚生労働省が公開しているデータだ。※1

医学の進歩によって、平均寿命と健康寿命の伸び率は変化すると思うが、変数が多すぎてまったく読めない。なので、単純に厚生労働省が公開しているデータの伸び率をもとに人生100年時代の到来時期を分析する点はご了承いただきたい。

分析ステップは次のとおりだ。
①男女の平均寿命、健康寿命それぞれについて、最も伸び率が高かった部分を計算する。使うのは単純な引算だ。
②①で計算された伸び率をもとに、2016年時点から起算して、男女の平均寿命、健康寿命がいつ100才に到達するかを計算する。使うのは単純な引算、割算、掛算だ。

では順番に計算してみよう。

まずは①を計算してみよう。
男性の平均寿命、健康寿命でもっとも高い伸び率になったのは、2013年~2016年までの3年間である。平均寿命は0.77ポイント、健康寿命は0.95ポイントの伸び率である。
女性の平均寿命、健康寿命でもっとも高い伸び率になったのは、平均寿命が2001年~2004年で0.66ポイント、健康寿命が2004年~2007年で0.67ポイントである。

次に②を計算してみよう。
計算式は、
(100才-2016年時点の寿命)÷ 最高伸び率(①の数字) ✖ 3年
である。

計算結果は次のとおり。

【男性の平均寿命】
(100-80.98) ÷ 0.77 × 3 =74.1(年後)

【男性の健康寿命】
(100ー72.14) ÷ 0.95 × 3 =88.0(年後)

【女性の平均寿命】
(100ー87.14) ÷ 0.66 × 3 =58.5(年後)

【女性の健康寿命】
(100ー74.79) ÷ 0.67 × 3 =112.9(年後)

いかがだろう。

筆者はこの数字をみたとき、現実的な数字には思えなかった。
逆算すると、
平均寿命は、男性は現在26才、女性は現在41才であれば、平均寿命が100年という世界を見れるのだ。
健康寿命は、男性は現在12才であれば100才でも健康な世界を体験できる可能性があるが、女性は現在到達可能な人が生まれていない。

やれ働け、だの、投資がどうだ、老後の趣味は、だのは、健康でないと意味をなさないという価値観を筆者は持っている。心身ともに健康でないと、お金も使えないし、十分なパフォーマンスを発揮して仕事もできないし、何より人生を楽しめないじゃあないか。そんな思いから人生100年とは、健康寿命が100年なのだと考える。健康寿命を軸に考えると、人生100年時代は遥か未来すぎるため、自分自身が生きているとは到底思えず、もはや他人事である。

100年時代と言われたときに、その前提が平均寿命なのか健康寿命なのかをしっかり把握した上で話を聞かないと、論者の都合の良いように論理が展開されてしまい、何となくで意思決定してしまうことがありうる点は、非常に危険であると感じた。

バズワードは鵜呑みにせずに、自分自身に関わることは、自分の頭で四則演算を使って分析し考え、決めて、健やかに生きていきたいものです。

以上

※1  (mhlw.go.jp)https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-06.html

是非サポートお願いいたします。サポート頂いた資金は、アンケート費やデータ購入の為に使用させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。