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おい、日本政府おい。新型コロナウィルスの課題は解決できるのかいできないのかい、どっちなんだい!?第2話

 さて、前回の記事ではもっとも重要な根幹部分の課題とその施策について述べた。今回は、更なる新種株が発生した場合に向けて、更に第2の課題、第3の課題、第4の課題について論ずる。

 更なる新種株が発生した場合に重要な事は、”緊急事態”にしない事である。まずは、感染症の患者の行動の流れを分析してみると次の図のようになる[6]。

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 この流れをスムーズに行う事で感染症のケアシステムは循環する。重要なのは、上記図の4と7の機能を担う診療所(町医者のような小規模の病院)、病院(入院施設のある中規模の病院)、大病院(大学病院等の大規模な病院)を階段状に位置づけステップを確実に踏ませることだ。具体的には、患者はまず診療所に行き、次に病院、最後に大病院に行くという段階を踏ませるのである。この各段階を正しく機能させ、なるべく各段階のステップを多くし、時間の猶予を各段階に与える事、各段階に応じて適切な判断を行わせ、診療、治療システム全体を効果的に循環させる事が重要である[Appendix 参照]。

 今回のオミクロン株の感染拡大で露呈した第2の課題は、このシステムが正しく機能しなかったことである。ファーストステップにあたる診療所が患者を受け入れず、直接サードステップの大病院がコロナ患者を受ける体制を作ってしまいBullwhip現象[7]が起きてしまったのである。もちろん感染症患者の治療について、他の人に感染させないために一ヵ所に集中的に患者を集めるという考え方もある。しかし、今回のように、大規模に一気に患者が発生し一定数を超える場合には、Operation Management の考え方からしても、各段階の構造を壊してはいけない。第2の課題に対する提案として、そもそも論として対処方法が誰にもわかっていないという問題はさておき、日本で通常のヘルスシステムとして作動している段階診療への戻しを早い時点で行う必要がある。さらには、この処置を行う判断を行う機構を作り、戻す準備を前もってする必要がある。
 第3の課題として、例えば、上記表の4「治療を受ける」において、感染者が診療を受けるべき病院がすぐに把握できない事が挙げられる。また、患者が診療を受ける予定の病院待ち時間や診療時間が長く、また、オンタイム予約体制も無く、患者は病院に行って良いか分からない状態になる[6]。この課題への提案としては、診療所の位置づけをプライマリケアとして常日頃から国民が診察を受ける診療所を決めておくこと[8]、また、どの診療所が受け入れ可能なのかを可視化し患者自ら取るべき行動を理解できるように各プライマリケアの情報を提供し混乱を避ける必要がある。これらが整うと、より多数の患者が扱え、患者の状態悪化も避けられ、“緊急事態”になる確率を下げる事が出来ると考える。
 第4の課題は、国際的な足並みが揃っていないことである。新型コロナウィルスのうちオミクロン株については、欧州と日本でその対応に大きな違いがあることは報道から明らかである。ゴールあるいはビジョンについて、欧州は、②経済の維持・発展を軸に対応しており、感染者数が増加することを許容する立場であった。これに対し、日本は、水際対策の徹底、3密の回避などにより感染者数を抑え込み①国民生活を守りながら、②経済を維持・発展を狙う立場であったと言える。しかし、新型コロナウィルスの特徴は、地球規模ですさまじい速度と強い感染力でウィルスが拡大する点にある。このような特徴に鑑みると、1つの国あるいは地域の感染者数が大幅に増加することを許容されている一方で、他の国が感染者数を抑え込む(すなわち①国民生活を守る)のは不可能だろう。繋がりが断てれば実現可能かもしれないが、人類は「分業」と「繋がり」で発展しており、社会システムが「繋がる」ことを前提としているからである。このような社会システムの中では、地球規模でどのように足並みを揃え新型コロナウィルスに立ち向かうのか、全体の方向性をあわせる試みが必要であろう。今後、新型コロナウィルス対策のゴールやビジョンを設定するにあたっては、自国のみではなく他国がどのように決断しているのか、特に①国民生活を守ることに軸を置いているのか、あるいは、②経済の維持・発展に軸を置いているのかを分析した上で意思決定していく必要があると考える。

今回の記事はこれにて終了です。次回の記事をお楽しみに!!

                               以上

[6] オミクロン療養記 https://note.com/manpa/n/n77483a4f3371
[7] The bullwhip effect: Progress, trends and directions(2016): Xun Wang Stephen M.Disney
[8] ヘルスケアシステム(2010):冨塚 太郎

Appendix <病院の対応可能モデル>
 物流のモデルを元に段階的診療の動きを観察するためにモデルを簡易に作成した。以下で分かる事は次の2点である。
1.段階が増えるほど、単純に同レベルの病院を増やすよりも、感染してからの扱い患者数を増やせる。各段階で扱えない限界が分かり、上位レベルに回す事で流れがスムーズになる事が理由である
2.感染数増加、通院増加の時期と大病院の繁忙時期をずらせる。つまり、大病院の準備期間が出来る。

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