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小説(SS) 「ダジャレを求めて」@毎週ショートショートnote #全力で推したいダジャレ

お題// 全力で推したいダジャレ

 その夏、夜ごはんを食べていたら、ビールを飲みすぎたお父さんが渾身のダジャレを言い放った。
 さっきまでは楽しい雰囲気に包まれていたはずの食卓が一瞬にして凍りつき、食器の音だけが響く。

 静寂の中で、ぼくは思った。
 この世に、笑えるダジャレは存在するのかと。
 
 心から湧き起こった疑問を解決すべく、ぼくは旅に出た。日本全国、津々浦々、地方で生まれ地方で死にゆくおじいさんおばあさんのダジャレを集め、崇高なるダジャレのひとつまみを得ることで、答えが見つかるような気がしたのだ。

 ぼくは小学生という身分なので、夏休みに大人たちの力を借り、専用のトラックを走らせ、クラウドファンディングで集めたお金を使って日本一周することにした。
 北海道から日本海側を南下し、東北から近畿地方にかけて移動していく。その行く先々で、あらゆるダジャレに出会うことができた。

 けれどぼくは、おじいさんおばあさんが繰り出す数々のダジャレをちっとも面白いと思わなかった。
 そもそもいままで、ダジャレで笑ったことなど、一度たりともないのだから、当然かもしれない。

 それにしても、地方のおじいさんおばあさんは、なぜかインタビューを終えると、新鮮なとれたて野菜をくれることが多かった。
 自分の畑で収穫したものらしく、みんなにこにこしながら、いいからいいからと渡してくるのだ。

 だけどぼくは、野菜が好きじゃなかった。
 ピーマン、トマト、ナス、キュウリ。夏にとれるものは、だいたい青臭くて、給食ではいつも残していた。

 気は乗らなかったけれど、両親がもらった野菜を天ぷらにしてくれるので、ぼくは仕方なく食べることにした。
 不思議と、そのとき食べた野菜は美味しいと感じられた。青臭さがないどころか、甘さすらあった。
 旅を続けていく中で、ぼくはいつのまにか、野菜を食べられるようになっていた。特に、ピーマンが好きになった。

 結局、日本一周をしても、笑えるダジャレに出会うことはできなかった。けれど旅を経て、全力で推したいダジャレが見つかった。
 ぼくはいまから、家族に披露したいと思う。

 「ピーマン食べて、うれぴーマン!」

〈了〉887字




わたしは、ダジャレが苦手のようです笑
オチの一文のため、考えに考えましたが、振り絞っても振り絞ってもいつまで経っても出てきません!

これが……わたしの全力のダジャレなのです!

ではでは、また来週〜

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