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小説(SS) 「未来断捨離」@毎週ショートショートnote #未来断捨離

お題// 未来断捨離
 

「私は、私が何者かを知りたいんです」

「視えました。なにも案ずることはありませんよ。あなたはこの先、未来断捨離をするでしょう。それにより、あなたの本当の姿が暴き出されるのです」

「……未来断捨離?」

「あなたがそう名付けるのです。私から、それ以上のことは」

 街角の占い師にそう言われ、わたしはふわふわとした気分で帰宅した。シャワーを浴びながら、少し考えてみたりもしたけど、よくわからなかったので今日は寝ることにした。なんたって今日は金曜日。休みが待ち遠しかった。

 朝起きると、頭がすっきりしていた。ここ最近は睡眠不足だったけれど、久しぶりにたくさん寝れたからだと思う。
 私は目玉焼きをつくりながら、今日なにをするかを考えていた。せっかくだから遠出してもいい気がするし、近くの日帰り温泉に行ったり、マッサージに寄るのもいい選択だと思う。けれど、家の掃除をしたい気もするし、こないだ壊れた家具の買い替えに出といた方がいいかなとも思う……が、やらなければならないことで休日が終わるのは勘弁だ。
 よし。やりたいこととやらなくちゃいけないことを全部書き出してみよう。

 全てを紙に吐き出した。そしてやらなくちゃいけないことを書いた紙をビリビリに破り捨て、くしゃくしゃにして思い切り踏んづけた。すっきりした気持ちになったので、コーヒーを用意する。続けて、やりたいことリストを眺め、あんまり心が乗らないものに、次々と二重線を入れていく。

 気づくと、書き出したすべてのやりたいことに、二重線を足していた。
 すっかり、やりたいことがなくなってしまった。でも、未来を捨てて、今このときを生きている気分になった。私はニートになりたいのかもしれない。私はなんもやらない。天気がよくてもどこにも行かない、日焼け止めがめんどくさい。昼寝をするのもとてもだるい。仰向けに寝そべり、蹴伸びをして、「ん〜」とか言ってみる。いいじゃんいいじゃん。このままわたしの未来も断捨離しちゃおっか。未来断捨離、とか言ってみちゃったりして。

 あ。占い師のやつ、こんなつまらない休日の話を予知してやがったのか。それに、なんてもん暴いてくれてんだ、私の本性はニートってか。ぜんっぜん笑えないし。もう寝る!
 

〈了〉922字



またくだらないものを書いてしまいました。
書き終えたあとに、竜泉寺成田さんのショートショートを読んだら、なんかそれを思い知らされてしまいました。

こういう、ぐっとくるもの、私も書いてみたいです。

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