小説(SS) 「動物園へようこそ」@毎週ショートショートnote #なるべく動物園
お題// なるべく動物園
となりのテーブルは、毎度おなじみ動物園タイムに突入していた。
ビールジョッキを両手に持って交互にイッキ飲みしたり、その勇姿を称えて肩を組み合ったまま校歌を歌い出したり、それを見て野太い声援を飛ばしたり、手を叩いて笑ったり、指笛が鳴り続いてる。
これが、大学最強を自称している、俺達ラクロスサークルの日常である。ちなみに俺は二年生だが、ラクロスで使われるクロスと呼ばれるあの長い棒に触れることはごく稀だ。俺達は、飲み会という競技を楽しんでいることが多い。
しかし、今日は他の大学サークルとの合同飲み会だった。男構成比90%のうちと違って、女子比率が圧倒的に高い。この出会いの機会を逃すわけにはいかなかった。俺は思春期を迎えているが、彼女はいないのである。
同じサークルだが、無関係を装いたかった。
幸いにも、こちらのテーブルは微笑ましい談笑が続き、かわいい女子がにこにこと並んでいる。
俺は、あのノリやばいね〜、と言ってる女子に、やばいよね〜、と無難で楽しい会話に全力を注いでいる。せっかくのいい雰囲気を壊されないためにも
なるべく動物園とは距離をとらねばならない。
今日の俺は、ジェントルマンでいく!
「次! 玲人の番だ!」
俺の名前だった。三年生の野太い声が響いたが、まるでその場にいないかのように、テーブルの皿に残った唐揚げのカスをゆっくりと口に運ぶ。
「玲人いないのか!」
掘りごたつの下にでも隠れようと思ったが、気を使ってくれた向かいの女子が「玲人くん、呼んでるよ」と声をかけてくれた。
三年生が笑顔で近づいてきた。
動物園への入園時間だった。
その後、俺はなぜか担がれ脱がされ、気付けば裸で大胆こんにちはをしていた。それ以上のことは、思い出せない。思い出したくない。
〈了〉736字
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最近、『ぐらんぶる』というアニメを見まして、
これがとても面白いアニメでございまして、
完全にそれを引きずって書きました。
いいねしづらいかもしれません?が、
ぜひいいねをしていただければ、なんて思います。
『ぐらんぶる』、おすすめです。
未視聴の方はぜひ。
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