小説(SS) 「くしくし、しくしく」@毎週ショートショートnote #穴の中の君に贈る
お題// 穴の中の君に贈る
君はなかなか、その穴から出てこない。
ふかふかのウッドチップが敷き詰められたケージの隅に掘ったくぼみで、君は一日中お昼寝をしている。
愛くるしい顔をしているのに、なかなかその顔は拝めない。夜行性だから、仕方ないのだけど。
君は、ごはんのときだけその身を乗り出す。
大好きなひまわりの種をトレイに置くと、本能で察知するのか、おもむろにもぞもぞしはじめる。
ずるいけど、こうして引っ張り出して、少しでも可愛い顔を見るために、穴の中の君に贈るのだ。
寝起きの君は、両手で頭をくしくしと毛づくろいして、食べものを拾い上げる。
君はいつものように、真っ先に一口だけ頬張る。 そしてすぐさま、残りを持ってお気に入りの定位置に戻ってしまった。こちらを警戒するように、穴の中から顔を出して口をもぐもぐとさせている。
もっと、なでなでしたり、触れ合いたいのにな。
ああ。
まるで今年でもう26歳にもなる、わたしの息子みたいじゃない。
〈了〉410字
*
久しぶりに410字に収まりました! 感激!
とまあ、今回はとても楽しいお題でした。
どんな「穴」か、「君」は誰か、何を「贈る」か。
3つの問いがあり、いろいろ想像が膨らみました。
ギャグを入れこもうとしましたが、今回ばかりは入れたら邪魔になるので抜きました笑
……もう今年もあと一ヶ月切りましたね。
バタバタしながらも、楽しく過ごしております。
ではではまた〜
↓↓ 前回 ↓↓ ※一部加筆
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