てっちゃんの一人旅

てっちゃんはバスガイド時代の友達。
おっとりした口調でほのぼのした彼女だけど、とてもアクティブで
「やりたい事は全部やる!」と人生を謳歌していました。
免許を取り、車を買い、スキューバーダイビングを習い、スキーに出かけ、毎日を楽しんでいました。

借金を抱えて大変!と笑っていましたが、その借金を返すから仕事がんばる!という目標に変えてコツコツ努力の人でもありました。

そんなてっちゃんが私はとっても大好きで、寮住まいの頃には
ちょくちょくてっちゃんの部屋にお邪魔して、遅い時間まで夢の話や「本当に大人になるってどんな事なんだろうね」と哲学的な話をしたりしていました。

てっちゃんにはずっと夢があり、二十歳の誕生日には一人旅をする!と決めていました。
本州で一番星がきれいに見えると言われる島根県日原近くにあるペンションに予約を入れ、愛車「竹千代号」で一人旅を実行しました。

今ならスマホがありますが、当時はそんな便利なものはありません。
一人で出かけると電話かけない限り、または現地で誰かと知り合わないかぎり、ひたすら孤独です。

「今頃出発したかな?」「今どの辺走ってるかな?」「楽しんでるかな?」
私はそんな事を思いつつ、仕事をしていました。

一泊二日で帰ってきたてっちゃん。
感想は?と尋ねると「仕事とかわらんかったー」
おいしいもの食べても一人、きれいな景色を見てもひとり、感動を分け合う人がいないのは、やっぱりさみしいようでした。
今なら、InstagramなどSNSが普及しているので、孤独じゃないかもしれませんね。

とはいえ、ペンションの方たちも、一人旅の二十歳の女の子の記念になるように、いろいろ用意してくださったり、思い出はたくさん出来たようでした。

その後、てっちゃんはスキューバーダイビングの仲間の一回り年上の男性と知り合い結婚。
ふたりだけで、南の島(海外)で式を挙げたのだけど、メイクなどが現地の趣味なので、奇天烈な髪形におてもやんのようなお化粧されて嫌だったぁと記念写真を見せてくれました。
いちばんおもしろかったのは、集合写真が現地の人たちと映ってたのですが、ご主人が日に焼けすぎてて現地の人に紛れてて、どれが新郎かわからなかったこと。
披露宴の無い結婚式だったので、私にはてっちゃんの結婚式の思い出はその一枚の写真だけなのだけど、強烈なインパクトで印象に残っています。


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