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2022年_限定シール

今回は久しぶりに『浮世絵マン』シールの裏書き解説です。
2022年に作った非売品シール二枚を取り上げます。

【シール解説①】市川団十郎六世


先に七代目

『浮世絵マン』シールは通常52mm角の正方形なのですが、2022年は前々からやりたかったほぼ2倍サイズの100mm角シールを2種類作りました。

《大入だョ!浮世絵マン》豊國画 七代目市川團十郎
《大人だョ!浮世絵マン》一勇齋國芳戯画 朝比奈小人嶋遊(シール二枚揃)
外袋には「大入」と「大人」


このうちの一枚「七代目市川團十郎」は、もともと歌舞伎演目『暫』の主人公を描いた浮世絵だけをシール化する《暫だらけの浮世絵マン》というネタをやろうとしたときにシール候補に挙がった一枚でした(余談ですが、似た企画に『伽羅先代萩』に登場する荒獅子男之助だけをシール化する《アラッ!男だらけの浮世絵マン》も考えていました)。
結局思ったほどの広がりが感じられず《暫だらけの浮世絵マン》はお蔵入りして「龍を制する七代目」だけが100mmシールとして残ったのですが、『暫』について調べるついでに代々の團十郎についても掘り下げていたら、六代目市川團十郎の一生がとても印象に残りました。

六代目市川團十郎は1791年に14歳で團十郎の名跡を継ぎ、華やかな美男子として人気を博しながら、1799年の3月に家の芸である『助六』を初めて演じて大当たりをとった直後に風邪で休演。同年5月に亡くなったそうです。享年22歳。
「こはいかに 折れします菖蒲しょうぶ太刀たち」という辞世の句からは、痛いほどの戸惑いや悔しさが伝わってきます。


からの六代目

さて「七代目市川團十郎」の100mmシールを発売したところ、おまけとして付けた折り紙シートを見事に折り上げてツイートしてくれた方がいました。
何か御礼をしたいと考え、そこで六代目のことが頭に浮かびシールを作るに至ったのです。

おまけとして付けた折り紙の完成図



「市川団十郎六世」シールのオモテ面イラストの元ネタは初代歌川豊国の摺物で、1795年11月に上演された『帰花雪義経(かえりばなゆきのよしつね)』に登場する六代目を描いたもの。



ウラ面は同じく豊国の摺物「六代目小玉団十郎」のイメージを加工して使わせてもらいました。
折り紙を連想してほしくて、『暫』衣装のチャームポイントといえる座布団みたいな大紋部分を強調しています。それにしても『暫』の拵えの個性的なこと!


先に紹介した100mm浮世絵マンシールのシリーズは『スーパーマリオブラザーズ3』に登場する「巨大の国」のような滑稽さが出したかったので、本家ビックリマンの裏書の中で自分が知る限り文字が一番大きくレイアウトされている第21弾のヘッド(若返ったブラックゼウスと創聖使)の裏面デザインのオマージュとなっています。
そのため、そこから派生した「市川団十郎六世」シールでも同じレイアウトを採用しました。

【参考】ビックリマン第21弾のヘッドのウラ面



【裏書き解説①】市川団十郎六世

菖蒲しょうぶどきまでしばらく

「自分(六代目)が死ぬ菖蒲の時期(5月)まで暫くの間は」という意味に加えて、病床での闘病を「勝負」と捉えて「勝負時」とする意味を重ねたつもりでした。ですが「勝負時」という言葉は存在せず、「勝負どころ」から連想した自分の勘違いなようで…(恥)

折々おりおりいろどヒーローなり

六代目のシールは、折り紙シートを折り上げてくれた方へ御礼として贈ることを目的に作ったので、折り紙を連想させる「折々」という言葉を使いました。「成田や」はもちろん市川團十郎家の屋号・成田屋から。
荒事で有名な成田屋にとって舞台の華とはやはり豪快な主人公だろうということで「華」に「ヒーロー」とルビを振りました。

ここまでの裏書き文は「菖蒲時に死ぬまで暫くの間は、観客にとって折々を彩る華のような存在でありたい」という六代目の願いを想像して書いていますが、これは死期を自覚してこその言い回しなので本当はおかしいですね。六代目の人生をドラマチックに伝えるためにこうしました。

にらんで見世みせます

「ひとつ睨んでみせましょう」と宣言してから無病息災を願う特殊な見得を切る、成田屋のお家芸「にらみ」には邪気を祓う力があるといわれます。
「見世〼」の〼(枡記号)は字数削減の目的と文末で菱形を使うことの助走として。

□□□ミマスカエリ◆◆◆◆バナ

直前の〼、最後の◆と合わせた三段階の視覚効果を狙い、成田屋の家紋・三升紋を一文字分の記号として使っています。

最後の「帰花(かえりばな)」とは、初冬の小春日和のころに桜、梅などの草木が時節はずれに花を咲かせることだそうです。シールの元ネタが『帰花雪義経(かえりばなゆきのよしつね)』に登場した六代目を描いているので、元気だった頃の六代目を象徴する言葉として「帰花」を締めに持ってきました。
「帰花」は人が忘れた頃に咲くため「忘れ花」とも言われるとのことなので、亡くなった後も六代目の芝居が人々の口に上り、話に花が咲くようなことがあるといいな、という想いも籠めています。

花が四つ菱になっているのは、本シールの元ネタのビックリマンシールで文末に菱形の枠で囲まれた番号が振ってあることのパロディとして。
100mmシールの裏書でこの菱形を活かすアイデアを展開したので、そこから派生した六代目のシールも文末は菱型のバリエーションで締めようと考え、四つ菱を花の形に見立てました。



【シール解説②】跋陀羅尊者

続いてこちらは、2022年の5月末から同じ絵柄のカードとセットで封入してきた初回購入特典のおまけシールです。初めて試した金印刷の印象は「渋くて超好み…だけどウケないんだろーなー」でした(笑)
サンプルを見た時にビックリマンというよりもドキドキ学園っぽく見えたので裏書きもそちらの雰囲気でデザインしてみました。

ちなみにこのシール、封入し始めたのは2022年の5月末から(100mmシールの発売と同時)ですが、実は2021年末には完成して手元にありました。寅モチーフの題材で「賀正」と書いてある通り、新年に合わせて作ったのに肝心の新作が作れなかったので半年寝かせることになってしまいました。たはー

そして2023年用のおまけシールも大体そんな感じになりそうです(笑)


【裏書き解説②】跋陀羅尊者

さて、本来はここで裏書きの解説をしないといけないのですが、実はこのシールの題材は調べても情報が少なくて、正直解説できるようなことがありません。裏書きに書いた内容がほぼすべて。あとは目が見えないらしい、というくらい。
文体のこだわりとしては、カタカナの使い方や言い回しはドキドキ学園の裏書きを意識しています。書いてないけどナンバリングは芳-16です。
オモテ面イラストの元ネタになった国芳の摺物も詳細がわからないまま「かっこいい!」という衝動だけでシール化しました。

まぁとりあえず、ブラックライトで光ります。※光らないのもあるよ!

最後までお読みくださった方、そしてシールをご購入くださった皆様、誠にありがとうございました。

またこんど!!

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