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神須屋通信 #12

令和3年10月 コロナ終熄?関東へ

1001(金)
●白鵬が正式に引退会見を行った。間垣親方を襲名するという。当然認められるべき一代年寄りが認められなかったり、年寄り襲名の前に誓約書を提出させられたり、これだけ相撲界に貢献した大横綱に対して、どれだけ相撲協会は辛くあたるのか、怒りさえ覚える。
●今日から、4月以来の、緊急事態宣言も蔓延防止措置も、何もない状態が始まった。

1002(土)
●午後、ビデオに録画してあった「鬼滅の刃 無限列車編」をやっと見ることができた。やたらコマーシャルが多かったので、録画で見たのは正解。大ヒットしたのも納得できる、とてもよく出来た作品だった。最後の方で、大の男が泣いたというのもわかる。でも、ネットで、一部の人だが、あまりに説明過剰で乗れなかったという感想を書いていて、それもよく理解できる。こちらが解釈する前に登場人物が映像の意味を解説してもらう。あまりに分かりやすい。きっとこれが子供から大人にまで受け入れられた原因だと思うが、底が浅い。

1005(火)
●夕方から天王寺で中国語教室がある日。午前中、早めに家を出て大阪市内へ。天王寺から地下鉄に乗って中津駅で下車へ。中津から、安藤忠雄事務所を目指して歩いたが、方向を間違えたようで、中崎町へ出てしまった。古い町並みに、しゃれた店があちこちにあって、良い街だ。ここでようやくスマホで位置確認。まったく勘違いしていたことがわかった。JRの高架をくぐると思い込んでいたが、高架の手前の豊崎町だった。無事に発見。結局、中津駅からかなり近かった。私は昔から一種のストーカー趣味があって、尊敬する作家や学者などの自宅を探し出して、付近を散策するのが好きだった。ちょっと危ない人間だ。広告会社のサラリーマン時代に、安藤さんとは何度か一緒する機会があったが、直接会話をかわした事はない。安藤さんの事務所は、何十年か前に偶然発見して、今回は、その時のうっすらした記憶をたどって歩いたのだが、やっぱり迷ってしまった。
●研究所の写真を撮ったあとで、茶屋町から梅田へと歩いた。阪神百貨店新館はあと5日でオープン。緊急事態宣言がなくなったので、平日の昼間だから人は少ないが、以前に戻りつつある。茶屋町あたりも、まだまだ人出は少ないが、活気は戻りつつあった。
●昨日からノーベル賞週間。昨日は生理学医学。mRNAワクチン関係に賞が与えられず、肩透かしだったが、今日の物理学賞には、ノーマークの米国籍の日本人、真鍋さんが入っていた。地球温暖化がらみだそうで、やや政治的授賞。研究内容は知らないが。

1006(水)
●朝から、ワイドショーはノーベル賞の話題一色。それで分かってきたのは、真鍋さんは、潤沢な資金があり、自由にコンピュータを使えるアメリカに、若くして渡ったことが、この業績につながったという。現在はアメリカ国籍。でも、その真鍋さんの仕事は50年前のもので、その頃は地球温暖化など話題にもならなかった。真鍋さんも、そのために研究したわけではない。今になって、この研究が物理学賞を受賞したのは、現在の地球温暖化へのノーベル賞委員会としてのメッセージだろうということだ。現在のノーベル賞委員会は環境左派が牛耳っているという人がいるが、そうかもしれない。私は今でも、温暖化より寒冷化の方が怖いと思っていて、地球温暖化への危機感は少ない。想像力が不足しているのか、それとも、子供や孫がいないせいだろうか。

1007(木)
●今日は、amazon primeで映画を二本見た。「JOKER」と「007 スペクター」。前者は、暗い映画だろうと覚悟して見たが、思った以上に暗かった。でも傑作。それにしても、バットマンシリーズからは、どうしてこうも傑作が次々と生まれるんだろう。後者は、もうすぐ最新作を見るので、その準備。さすがに老舗のシリーズ。堂々たるエンタテインメント。どれだけ資本が投下されているのか、気が遠くなる。
●ワクチンパスポートの実証実験を政府が始めたが、民間はとっくに先を走っている。新規感染者、東京は100人台。誰も、どうしてこうも急に減ったのか理由はわからないようだ。
●ノーベル文学賞。相変わらず日本では村上春樹に期待する声が大きいが、今年の受賞者はタンザニア出身のグルナという英国の作家に決まった。アフリカ難民の出身だという。年齢はたぶん村上春樹と一緒くらい。今年は、早稲田大学に、隈研吾設計の村上さんのライブラリーがオープンしたので、受賞していればさらに大きな話題になったに違いないが、たぶんもう彼が受賞することは今後もないと思う。
●夜、東京近辺で震度5の地震があった。東日本大震災以来10年ぶりだという。震度5は揺れる。特に、高層マンションは大変だ。

1008(金)
●朝一番に確かめたのは、W杯最終予選の試合結果。日本時間の深夜に行われたが、地上波でも衛星でも放送がなく、放送したのは有料放送局だけ。その結果。サウジに1-0で敗退。これで予選2敗目。日本の連続出場は実に難しい状況になってきた。まあ、ヨーロッパだと、あのイタリアだって、W杯に出られなかったこともあるのだ。今までずっと出場できていたのが幸運だったとも言える。アジアは強くなっている。なんだか世界における日本の位置をみているみたいだ。
     
1010(日)
●柳家小三治さん死去。81歳。知らない間に人間国宝になっていた。東京の人だし、テレビに出なかったので、芸を味わうことができなかったのは残念。記憶にあるのは、談志の弟分だと言われた、若い頃の飄々とした姿だけ。

1011(月)
●10月だというのに、きょうも真夏日の暑さ。午後、kindleで、Rutger Bregman"Human kind A Hopeful History"読了。これは時代を変える名著かもしれない。そうなってほしい。kindleのあちこちにマーキングしてしまった。
●月曜だということもあるが、新規感染者が、東京でも大阪でも49人になった。あまりにも劇的な減り方に驚く。なにが原因なのか誰も説明できない。(急激な減少の理由を誰も説明できないのではなく、ワクチンなど、様々な要因が複合していることはわかっているが、それがどんな割合で影響しているのかがわからないのだという説がネットにあった。)それなのに、専門家たちは(メディアも)、相変わらず、第6派の可能性を訴えている。オオカミ少年化しているのではないか。

1012(火)     
●夜、W杯アジア最終予選、運命のオーストラリア戦を見た。絶体絶命の日本だったが、2-1で辛勝。なんとか首の皮一枚でつながった。しびれるような試合だった。見ているだけで疲れる。

1013(水)
●午後、岸和田カンカンのユナイテッドシネマで「007 no time to die」を見た。前作「スペクター」の続編。ダニエル・クレイグの最後の映画だとは知っていたが、ボンドが死んでしまう、この終わり方なら、007シリーズそのものが終わったように見える。でも、最後に007は戻ってくるという文字が画面に登場した。さて、次回作はどうなるのだろう。あの黒人女性が007としてそのまま登場するのか、それとも。楽しみが増えた。前作でファンになったフランス人女優、レア・セドゥは今回も登場。しかも、ジェイムス・ボンドの子供まで密かに産んでいたという設定は、まるでハリー・ボッシュの物語のようだ。彼女たち母子は、次回作ではどうなるのか。これも関心事。私と家内の推理は、この女の子が成長して、007ボンドを襲名するというもの。
     
1014(木)
●国会は午後1時過ぎに解散になった。選挙投票は月末。史上最も短い選挙活動期間らしい。
●午後、amazon primeで「007カジノロワイヤル」を見た。15年前の、ダニエル・クレイグ版のボンド初回作。当時は、こんな金髪の悪党面がボンドかと思っていたのを思い出す。この映画の内容はほとんど忘れていたので、初めて見たように面白かった。ボンドの永遠の女性で、今回の最終話でも大きな役割を果たしたヴェスパーの魅力を確認した。そして、ボンドのヴェスパーへの罪悪感の由来も。最終話において、ボンドはマドレーヌに対して、同じ過ちを犯すところだった。クレイグ版のボンド映画は全てがつながっていて、ひとつのサーガになっているようだ。次の作品も見ることにする。この映画では、ボンドへの全裸の拷問シーンが面白かった。なにしろ、攻撃箇所が男の最弱ポイントの股間なのだから。歯を攻められるのも怖いが、ここも怖い。
     
1017(日)
●平野啓一郎「ある男」読了。ミステリの要素もある本格的な心理小説。帰化した在日男性を主人公にした小説というのは、これが初めてではないか。とにかく、奥歯の隙間に届く繊細な毛先を持った歯ブラシのような文体で描かれた心理描写が素晴らしい。物語そのものもとても巧緻。最近の平野啓一郎は、佐藤正午に匹敵する小説の名手になった。
     
1019(火)
●今日も、中国語教室のある日。昼前に家を出て、梅田の阪神百貨店へ。先日、部分的にオープンした店内をざっと見物した。やはり、新しい施設は気持ちがいい。地下の食品売り場はまだ以前のままだが、上階は新規オープン。9階の「阪神食堂街」で昼食。名称は古めかしいが、中身はオシャレな店が集まった、ゆったりしたフードコートだった。いろいろお洒落で美味しそうな店があって迷ったが、「リエゾン」というフランス料理の店で注文。珈琲込みで2500円くらいの肉料理。なかなか美味しかった。

1020(水)
●阿蘇山が噴火した。午後、コナミスポーツ。
●邱永漢「わが青春の台湾 わが青春の香港」読了。いまになって、どうして邱永漢の本を文庫で出したのかと疑問に思っていたが、読んでわかった。なによりも内容が面白いし、香港や台湾の現状を見ると、今こそ、この貴重な歴史の記録が読まれるべき時だ。邱永漢は澁澤栄一のような人物なのかと思っていたが、「金儲けの神様」と呼ばれるのは後半生のことで、若い頃は読書と学問が好きな、台湾出身というハンデがなければ東大教授にだってなれた人物だったのだとわかった。邱永漢と澁澤栄一の共通点は、時代に翻弄されながらも、前向きの姿勢をいつも忘れなかったことにあるようだ。
●BRUTUSが二号続けて村上春樹特集を出したのを読んでみた。この雑誌と村上春樹のつきあいは、意外に長い。私は創刊号からのこの雑誌の愛読者だから、当然知っているべきだったが、忘れていた。この特集は、早稲田大学に村上春樹ライブラリーがオープンした記念出版。ノーベル文学賞の受賞は今年もなかったが、村上さんはノーベル賞よりも、ヤクルトの優勝の方を望んでいるかもしれない。現在、ヤクルトは阪神と優勝を争っている。私は阪神ファンだが、村上さんが喜ぶなら、ヤクルト優勝でもいいかと思っている。

1121(木)
●amazon primeで映画2本。ダニエル・クレイグ版007「慰めの報酬」と「スカイホール」。これで、全5作を一ヶ月内で見たことになる。クレイグ版の007は、ジェイムス・ボンドをなぞった名前であるジェイソン・ボーンを主人公とする、マット・デイモン主演のボーンシリーズ(私は大好きです。)を、肉体を駆使した激しいアクションという点で、本家が分家の真似をする形で始まったのだが、終わってみると歴史的なシリーズだったことがわかった。ダニエル・クレイグは、ショーン・コネリーとはまた違ったボンド像を見事につくりあげた。歴代のボンド役者は、みんなそれぞれ良いのだが、身体を張ったという意味で、このクレイグのボンドは実に好ましく思えた。いよいよ、次のボンド映画が楽しみになった。

1124(日)
●夜は、いつものように、「青天を衝け」と「花郎」。前者は、澁澤栄一がいよいよ民間に転出。後者は最終回。あっけなく終わってしまった。史実にのっとれば、こういう終わり方しかないのだろうが。日本版が大事なところをカットした可能性があるので、以前借りたDVDでチェックするつもり。楽しめたドラマだったが、悪役がもっと憎々しくて迫力があるとよかったと思う。

1125(月)
●今日から全国で時短が解除になった。ほぼ一年ぶりに平常に戻ったことになる。
●新大阪駅で朝食を食べて、ほぼ2年ぶりの新幹線で横浜へ。関西以外の地に行くのも2年ぶりだ。今回の宿泊は、横浜駅前のベイシェラトン。家内の話では、かなり安かったそうだ。まだ、コロナ対応の料金なのか。ホテルの部屋に荷物をおいた後、昼食は、横浜駅前の高島屋のレストラン街で、夫婦それぞれ違う店で食べた。私は、青葉というタン焼きの店で食べた。
●食後、JR横須賀線に乗って鎌倉へ。北鎌倉駅で下車。めざすは、円覚寺の塔頭のひとつ、松嶺院にある開高健の墓参り。院の門が閉まっていたので躊躇したが、思い切って入った。墓はネットで調べて、崖の上の墓地にあることはわかっていたが、墓地に墓守の人がいたので、場所を尋ねたら親切に教えてくれた。花を持ってこなかったと言ったら、線香の無人販売があるというので、墓前に線香をたむけた。赤い自然岩石の墓。自殺した娘さんの道子さんと、奥さんの詩人だった、牧洋子の三人が同じ墓に葬られていた。寺の墓守の人に教えてもらって、同じ墓所にある、田中絹代と佐田啓二の墓にも手を合わせてきた。どちらも、日本映画が生んだ名優である。場所は違うが、円覚寺には小津安二郎の墓もあって、そこには以前、墓参りをしたことがある。実は、今回の旅行では、茅ヶ崎にある開高健記念館に行くつもりだったのだが、あいにく、臨時休館しているということで、墓参だけになった。
●墓参の後、ふたたび電車に乗って、鎌倉駅へ。平日の昼間なので、さほどの人出ではなかったが、観光客はそれなりにりいた。ほぼ全員がちゃんとマスクをしているのは、いかにも日本らしい。小町通りを歩き、鶴岡八幡宮に参拝した。ここも久しぶり。以前参拝した時には存在していた、実朝を暗殺した公曉が隠れていたという、有名な大銀杏が、10年ほど前に老齢のためか、倒れてしまった。その後のことが気になっていたのだが、どうやら、根の部分を残して、切断した幹を横の敷地に移し、残った根から新しい芽が出ることを期待していたのだが、どうやら成功したらしい。私たちが見た時には、それらしい、銀杏の若木が青い葉っぱを出していた。
●夕食は横浜に戻ってから。駅前のジョイナスの地下でみつけた「えん」という和食創作料理の店で食べた。もう無制限で酒が飲めるこの店でも、お客さんはみんなマスクをしているし、店も感染対策をちゃんとしているようだった。おいしい料理を堪能。
●夜、ホテルの私たちの部屋と同じフロアにある宿泊者専用クラブラウンジへ行ったら、無料のオードブルを出してくれたので、夕食後だったのに、また食べてしまった。

1126(火)
●旅行二日目。今日は、ホテルでビュッフェ形式の朝食を食べた後、個別行動。家内は座間にいる友人のところで、太極拳教室に参加。私は、ほぼ3年ぶりの東京見物。横浜駅から、東急東横線で渋谷へ出た。初めての沿線風景。車内で読書はせず、子供のように、ずっと車窓の風景を眺めていた。武蔵小杉や自由が丘などの、名前だけは以前から知っていた駅を通過。
●渋谷の地下駅を出て、まず向かったのは、スクランブルスクエアの屋上、SHIBUYA SKY。平日の午前中、しかも強風ということもあって、2000円を払って、貸し切り状態のエレベーターを上り、バッグ類をロッカーにしまって屋上へあがると、先客は一組だけで、観光客よりも関係者の方が多かった。しかしながら、絶景。これまで、いろいろな建物や塔からの展望を楽しんで来たが、たぶん、今まで見た最高の景色。風が強かったせいもあって、白い雪をかぶった富士山を眺めることが出来た。かつての江戸の人たちは、毎日、こういう風景を眺めていたのだ。江戸の中心は江戸城ではなく、富士山だったと言った学者がいたが、まさにその通り。
●寒いので、早めに降りて、100年に一度の変貌中の渋谷のあちこちをぶらぶら。東急Bunkamuraで、シアターコクーンやオーチャードホールなどの場所を確認した後、渋谷パルコへ。ここも、我々の世代にとっては、かつての流行の発信地だった憧れの場所。特に私は、大阪で、広告業界の片隅にいたので、東京で石岡瑛子や糸井重里の展開するパルコのコマーシャルは実にまばゆいものだった。今の渋谷パルコは、新しいビルになっている。内部をざっと見物。心斎橋のパルコとほとんど同じ。ここで昼食をとろうと思っていたのだが、年寄り向けのレストランはなかったので、パルコの向かいにあった喫茶店で、サラダとパンとカフェオレの昼食をとった。パルコだけではなく、渋谷の街全体が、あまり年寄り向けではないようだ。
●次に向かったのは、線路沿いに長く伸びる渋谷宮下公園。若者向けのショッピングセンターの屋上を、各種スポーツ施設のある公園にした斬新な設計に感心して、ぜひ見物したかった。期待通りの素晴らしい施設。ここもまた、テナントの店店は年寄り向けではなかったが。
●JR渋谷駅に行き、先日、数日間電車を止めて線路の移動工事をしたプラットホームから、内回りで東京駅をめざした。途中、隈研吾さん設計の、高輪ゲートウエイ駅で途中下車。駅の隅々まで見て回った。明るくて、とても気持ちのいい空間。
●東京駅へ。久しぶりの東京駅。八重洲口に建設中の高層ビルを眺めた後、ぐるっと迂回して、大手前のビル群を見物。世界でもまれなほど、大企業の本社が集中している、日本資本主義の中枢であるこの地へ来るたびに、日本は落ちぶれたとはいえ、まだまだ大丈夫だと妙に元気になる。今回は、箱根駅伝の出発とゴール地点である読売新聞本社の建物を見物した。そこには、ちゃんと駅伝を顕彰するランナーの像と、歴代優勝大学名を記した碑があった。
●かなり歩いたので、東京駅前の新丸ビル一階のカフェで休憩。午後3時頃だった。横浜に戻るにはまだ早いので、谷中墓地にある、毎週見ている大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、澁澤栄一の墓参りをすることにして、東京駅から山手線に乗った。日暮里で下車。谷中墓地へ。もう十年以上前だが、ここにはかつて一度来たことがある。森まゆみさんの「谷根千」関連のエッセーを読んで関心を持ったのだと思う。その時、誰の墓を見たのかもう記憶がないが、その時は、澁澤栄一のことは考えもしなかった。今回は、便利なスマホがあったので、澁澤の墓の番号を調べてあったのだが、広大な墓地は入り組んでいて、なかなか目指す墓にたどりつけなかった。徳川慶喜公の墓という標識を見つけて、ああ、この近くに澁澤の墓もあるはずだと思って、まず慶喜公夫妻の、ふたつ並んだ、小さくて丸い石の古墳のような墓に手を合わせた後で、澁澤の墓を探したのだが、これが見つからない。あたりを10分以上も歩き回って、やっと見つけた。形は普通の四角い墓だが、普通の4,5倍はありそうな巨大な墓だった。本人の墓の両隣に、奥さんと同居していた2号さん(たぶん)の墓が同じ大きさで並んでいるのは、好感が持てた。その三つの巨大な墓石の隣に、小さな(といっても、これが普通の大きさ)澁澤敬三さん夫妻の墓が並んでいた。敬三さんは、日本民俗学の恩人の財界人だった。
●横浜のホテルに戻って、座間から帰ってきた家内と合流した。私は2万歩近く歩いて疲労困憊、家内もみっちり太極拳をやってきた疲労困憊。というわけで、夕食は、クラブラウンジの部屋ですますことにした。昨夜と同じ、オードブルの他、白ワインとビールで乾杯。横浜の夜景を眺めながらの食事は無料とは思えない、充実したものだった。ホテルの部屋に戻って、夜のニュースで、この日の出来事を確認した。秋篠宮家の長女、眞子さんが小室圭さんと結婚して記者会見。セリーグでヤクルトが優勝。長島茂雄さんが文化勲章を受けることが決まった。

1127(水)
●旅行最終日。この日は、あいにくの小雨まじりの天候。この日は横浜見物。まずは、横浜駅からみなとみらい線に乗って、みなとみらい駅で下車した。以前にも来たことがあるが、駅の真上に巨大なビルの吹き抜け空間があって、実にダイナミックな景観である。当初は、赤煉瓦倉庫方面に向かうつもりだったのだが、なんとなく、巨大なビルの中を逆の方に歩いていくと、ランドマークタワーの前に出てしまった。家内が、せっかくだから上っていこうと言うので、この天気では眺望がきかないと思ったが、のぼることにした。ここには、まだあべのハルカスが出来る前、つまり、日本一のビルだった時に来たことがある。たぶん、その時とは、付近の様子は一変しているはずである。みなとみらいは、その名の通り、未来都市に変貌していた。私たちは、地元の小学生の社会見学とかち合ってしまったので、展望フロアは子供達の歓声で、とても賑やかだった。コロナ期間中は、こんな社会見学も自粛していたのだろうか、いまようやくコロナ禍が収まって、子供達がのびのびと振る舞っているのを見るのは気持ちがよかった。ただし、天気は最悪で、あたりは曇っていて、ほとんど遠くの眺望はきかなかった。しかし、足下の、みなとみらい地区のビル群の様子ははっきりと見えた。
●展望フロアから下に降りた。雨が強くなってきた。コンビニでビニール傘を買ったけれども、このまま赤煉瓦倉庫まで歩くのは億劫だったので、再び、みなとみらい線に乗って、終点の中華街に行くことにした。といっても、中華街で昼食をとろうというわけではなく、目的は、山下公園の前にある、クラシックホテル、「ホテルニューグランド」だった。ここで昼食をとる。ここの新館には以前泊まったことがあり、その時に旧館も見物したが、当時は旧館の2階は使われていなかったと思う。今回、昼食をとったのは旧館2階の部屋だった。日光の金谷ホテルや奈良ホテルを思い出させる、古い寺院か神社のような内装なのに驚いた。このホテルは、かつてマッカーサーが宿泊し、大佛次郎が長期滞在した由緒あるホテルだが、彼らもこの部屋で食事したのだろうか。なお、昼食のメニューは3種類しかなく、私はハンバーグステーキ、家内はナポリタンスパゲッティを食べた。美味。
●雨はあがっていたので、ホテルを出て、山下公園の中を大桟橋方面めざして歩いた。湾岸の高架通路を利用して、大桟橋前を通過した。赤煉瓦倉庫の近くに来たが、今は何もイベントがないようだし、外壁の修復工事中なので、そのまま通過した。実は、この時、私たちが目指していたのはロープウエー乗り場である。ランドマークタワーに上った時に家内が見つけて、これに乗りたいと言ったのだ。その駅に着いて、この都市ロープウエーがYOKOHAMA AIR CABINという名前であることを知った。こことJRの桜木町駅を結んでいるという。料金は、おとな片道1000円。わずか5分ほど乗るだけだが、これが高いと感じるかどうかは、乗ってみてからの判断というわけで、乗ってみた。で、乗った感想。もう少し長い距離を乗りたかった、まあ1000円は高いなというところ。
●桜木町駅から電車で横浜駅へ戻り、今回の旅行はほぼ終了。コロナ禍の後、ずいぶん久しぶりだったが、なかなか充実した旅だった。あとは大阪岸和田へ帰るだけ。それにしても、帰りに思ったのだが、大阪駅と新大阪駅の連絡と比較して、横浜駅と新横浜駅の連絡はとても不便ですね。横浜線の新横浜駅は、ずいぶん改良の余地がある。この日、パリーグではオリックスが優勝した。阪神淡路大震災の後、イチローがいて優勝して以来、25年ぶりの優勝だという。タイガースも優勝できていれば良かったのだが。
●帰りの新幹線で、筒井康隆「世界はゴ冗談」読了。80歳になった筒井さんが書いた短編集。まさに筒康隆は老いず。もう天才としか形容のしようがない。特に「不在」の不思議な読後感が気に入った。

1128(木)
●夜、ほとんど2年ぶりに、かつての職場の仲間達と、天王寺公園てんしば内のイタリア料理屋で会食。メンバーの紅一点の女性に、本来ならば2年前に渡すべきだった、還暦祝いの赤いバラの花束を渡した後に歓談。いつものような四方山話。あまりに楽しくて、マスクをするのも忘れてしゃべってしまった。もう、以前のような自粛生活に戻るのは勘弁してもらいたいものだ。    

1129(金)
●朝ドラ「おかえりモネ」が終わった。素晴らしい脚本と役者達。いいものを見せてもらった。ドラマの最後、菅沼先生とモネが海岸の砂浜で会うシーン。なんと、2年半ぶりに会ったという設定。あれはきっと、菅沼先生はずっとコロナ禍と闘っていて、ひさしぶりに気仙沼にいるモネと再会できたということなんでしょうね。ドラマでは何も説明していないけれど、時代設定からはそうなる。もう入籍はしていたのかな、気になる。
     
1131(日)
●夜は、「青天を衝け」。衆院選の開票速報番組の後、今夜から始まった韓国歴史ドラマ「王女ピョンガン」。今度は高句麗が舞台。
●選挙の結果は、自公政権は絶対安定多数を維持。共産党と共闘した立憲民主は議席を減らした。今回躍進したのは維新。特に大阪で圧勝。私の選挙区でも勝ったのは維新だった。私は、与野党伯仲を期待して、今回は名前も知らなかった立憲の候補に投票した。でも、大阪では立憲の存在感はほとんどない。地方組織は脆弱だし、日常活動が何もないから無理もない。比例代表は国民民主に投票したが、この党にも将来性は感じられない。こんなに受け皿がない状態では、政権交代はいつのことか。でも、幹事長の甘利氏や小沢一郎氏が小選挙区で落選するなど、世代交代を感じさせる結果もあった。
 
      
     

 
     

     


      

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