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中江広踏の連載小説のまとめ他
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#韓国語

チョン・ヤギョンなんて知らない 「第七回」

 第四章「丁若鏞とその時代」はこんな内容だった。丁若鏞は、1762年、英祖38年に京畿道で生まれた。牧使を務めていた父、丁載遠は、この年に隠退している。兄が二人いた。若詮と若鐘である。三人の兄弟は、いずれも神童と呼ばれた。若鐘は朝鮮天主教界の大立て者となり、若詮は博物学者として多くの著作を残した。英祖とそれに続く正祖の時代は李朝の変動期だった。秀𠮷とヌルハチの侵攻で荒廃した国土はようやく回復し、商品貨幣経済も浸透しつつあった。その時期に登場したこの二代の国王は、いずれも英明な

チョン・ヤギョンなんて知らない 「第八回」

                  21   仙石さんと杉本さんは、韓国語の個人授業(仙石さんは「デート」だと思いたがっていたが、)だけをしていたのではなかった。何度か会ううちに、互いにすこしずつ自分の過去や現在の生活について話すことになった。そして、年齢差や社会的立場を越えて、互いの心の距離をせばめていった。少なくとも仙石さんはそう信じた。しかし、いろいろと話をした後で、話題が仙石さんのS市役所での仕事に移った時、仙石さんがまず話題にしたのは長谷部さんの事だった。長谷部さ

チョン・ヤギョンなんて知らない 「第九回」

                最終回                  24  また淫らな夢を見てしまった。仙石さんは思わず股間に手を伸ばした。ペニスは硬く勃起していた。まさか、中学生の時のように夢精していないだろうな。もうすぐ還暦だという男が。触ってみると、どうやら夢精はしていないようだった。仙石さんはほっとすると同時に、夢精するほどの精力が自分にはすでに失われていることを少し残念に思った。仙石さんが杉本さんの夢を見るようになったのは、杉本さんから韓国語の個人レッスン