わたしはバケモノだった⑥

6・繰り返す過ちは父性を求めていた


彼と別れる時ちょうどコロナが流行り始め、仕事もリモートワークになって会社に月の半分だけ出社すればいいことになりました。

実家に帰るつもりもなかったわたしは会社を挟んで間反対にある、海沿いの町に引っ越しをしました。彼と別れる一年前からどうしてもサーフィンがはじめたかったので、海から自転車で 5 分ほどの家に決めました。


33 歳にして、生まれてはじめての一人暮らしのためにわたしは自分の家具を購入し、自分が
好きな食器やリネンを揃えました。すべてを整えた後に、リビングルームに寝転がって深呼吸
しました。

一人で真っ暗な家の中なのに、何も怖くなくて、家で一人きりなのに安心しました。

わたしはすぐに近所で受けられるサーフィンスクールに通いはじめ、サーフィンにどんどんはまり、毎日海に行きました。

サーフィンはわたしの生活を変えていきました。

毎日、波情報をチェックして、朝日が上がる前に海に行って波をチェックし、夕方には散歩
をしながら夕日を見て、満月の日には砂浜で月光浴。自然のリズムでの生活で体も健康になり、精神も安定していきました。

今までは家と会社の往復でしたが、サーフィンを初めてから、今まで出会うことのなかったような人たちと仲間になり、さまざまな価値観に触れていきました。

仕事中心ではなく、波中心の生活を送る人たちはいい波を逃さないでいられるようにフットワ
ークの軽い働き方をしていました。海の近くで自営業、完全リモートワーク、冬は季節労働を
して、夏はサーフィン三昧!

今まではいい大学に入って、いい会社に入って、いい仕事について、結婚してという道しか存在しないと思っていたわたしには衝撃的でした!

なんだこんなに生き方ってあるんだ!こうやって生きていいんだ!と。

それを自分の意志で自由に決めてきた人たちはいつも楽しそうでした。
自分で決めて、自分でやりたいことをやっている人たちと出会えて、そこにいる自分もまた自由になれたような心地がしていました。

この人たちといられるということはわたしもきっともう大丈夫なのだと思いたかったのだと思います。
しかし、みんなと別れて、一人で家に帰って考えると、サーフィンで会う人たちもクリアな雰囲気にいるほど、自分の闇が濃くなっているような心地もしていました。

生活も慣れて落ち着いてきたときにさみしさもあり、彼氏がほしいと思いました。

サーフィンや仕事ではなかなかできず、わたしはまた、以前遊びにつかっていた、性的な関係を趣味としている人たちが集うサイトにアクセスして会おうと思いました。わたしは結局っ頃の奥底ではわたしは普通の人とは付き合えない、ダメな人間なのだと思っていました。

そこで、あった人はわたしの一つ下の彼でした。ただSEXするためだけにあったのですが、趣味などもあい意気投合して、とりあえず 1 か月だけ試しに付き合ってみようという話になり付き合い始めました。
この人なら大丈夫、今のわたしならきっと大丈夫と言い聞かせて。


彼は自分の中のルールが強く、それをわたしが間違えるとわたしのことを無視し、怒り始めました。
彼の口癖は、
本当の俺は違う、いつもの俺だったら、
もっとこうだったというものでした。

わたしは今の彼が十分魅力的だったので、そのように伝えていましたが、それをとても嫌がっていました。
また、わたしが家事などで気になったことを伝えると、ちゃんとできていない俺はだめなのかと落ち込んで問うてくることがありました。

1ヶ月たって、やはり付き合うのは難しいということを電話で伝えると 1 か月たって話し合う
なんて約束していないと彼は怒り始め、SEXをもう一度しないと家の鍵を返さないと言って
きました。

わたしは怖くなりました。会ったら殺されると思ったのです。
しかし、彼と会うと、彼の態度は想像と全然違うものでした。
彼は肩を落として、おどおどとしていました。そしてわたしに意を決したように聞いてきました。

『俺のどこがダメだったから別れるって言っているんでしょう?
あの時にこういったから?
あの時、こういう行動をとったから?
あのとき、こういう返信したから?
だから、俺のこと嫌いになったの?
言ってくれれば直すから。』

それに対してわたしは一つ一つ、これは気にしていない、これは腹が立ったからちゃんと言葉
で伝えた、これはわたしが悪かったから仕方ないなどとすべてに答えていきました。

そのうえで、わたしの精神がまだ人と付き合う状態ではない。
まだ一人で回復させる必要があると感じたから別れたいということをこんこんと 2 時間ほどお茶をしながら伝えていくと、彼は自分が悪くて嫌われていないことにほっとしたようで、鍵を返してくれました。

彼は、最後に、
もしかして俺もおかしいのかなと聞いてきたので、もししかしたらそういう部分もあるかもしれないねとだけと伝えて別れました。

わたしは彼と別れたあと、わたしはやはりまだ人と付き合えるほどまともな人間ではないのだ
と思いました。

自分もおかしくなっていくし、彼も普通の人だったのに、わたしと一緒にいるからおかしくなってしまったのだと思って怖くなりました。

わたしはそのあと、より一層、仕事とサーフィンにのめり込みました。
海に入ると、悩んでいたことなんかどうでもよくなって心が落ち着くので、波があればサーフィン、なかったら泳いで、砂浜で寝ころんでという生活を繰り返しているうちに気持ちがどんどん楽になっていきました。

そこから一年ほどになって、サーフィンも1人でできるようになり、仲間ともよく一緒にいるようになって楽しく過ごしていました。

職場も1人で色々なことができるようになっていたのでクライアントへの提案や取り組み先様との改善など忙しく、ある意味余計なことを考えずに入れていました。

プライベートではわたしは自然両方にハマっていました。ハーブや野草、食事の仕方、無添加などを食事にとりいれていました。

精神安定剤を飲んでいた時よりも、今の方が体調も良かったので、薬ではなく、自分で治せるものは自分で治したいと考えていたからでした。

しかし、どれだけ海に入っても、どれだけ仲良くなっても、仕事が楽しくても1人で家に帰ると落ち着かなくなり、早く時間が流れるようにと、過食をしたり、たくさん寝たり、ネットで買い物をしていました。

前よりは遥かに良くやって来てあるけれど、孤独感はまだまだありました。

むしろ、カウンセラーの資格もとったんだからしっかりしてるって周りに見せないといけない気がして、逆にプレッシャーになっていました。


またさみしさが爆発した日に、わたしはまたただの体だけの関係で人に会うことにしました。

その人は料理人をしていて、発酵食品やハーブに詳しい方なのもあり、会ってみると、自分が知りたかった情報がたくさん得らましたし、話を聞いてもらえてとてもホッとしました。

その人に自分が何をしているのか、今までのことを話していると、彼も昔弁護士になろうと思ってたくさん考えて思考してという世界にいたのだけど、ある日友人に偏りすぎていると言われたそうでした。
その彼から
『考えるのは今までめいいっぱいやったのだから、感じる世界に戻してみたら?』と言われました。

そう言われた瞬間わたしは言葉に表せないような衝撃を受けました!
今まで自分を覆っていた何かが壊れるような心地でした。

もうこれ以上頑張らないんでいいんだ。
わたしは必死になって考えてすべてに説明をつけなくていいんだと思ったのです。

その後、その人の家に行って一緒に食事をして夜を過ごしました。

彼に、彼女になってよと言われたものの、遊びだろうと思ったし、知らない人と付き合わないと伝えました。

それに聞いてみると彼はバツイチだ子どもが
4人いるそうでした。

しかし、好きだと言われ慣れていないわたしは彼女になってと言われてから彼に夢中になりました。彼への恋愛感情と生き方の憧れがありました。

わたしが漠然とごはん屋さんをやりたいなぁと思っていたところに、彼が家で人を招いてごはん会をやったり、ケータリングや人に料理を振る舞っていたのです!それもすべて無農薬無添加!わたしが理想としている形でした。

まじかでみて、わたしも同じようなスタイルで、家に人を招く感覚でお店をやりたい!と強く思いました。

彼は料理以外にも味噌や麹のワークショップもやっていて、わたしは彼の助手のようについて行って手伝い、家での会にも呼ばれたらすぐに行って彼が何をしているのかみて、そのまま泊まり、彼と寝ることを繰り返しました。

彼の家は鍵がかかっておらず、いつも誰かが来ていたので、いく度にいろんな人に会えて面白かったです。自分の世界がまた広がっていく気がしました。

ある日のこと、彼の友人たちが集まる会に急遽呼ばれて、彼らは大麻愛好家だということを告白されました。でもこの会は吸う人も吸わない人もいる会だからと。

わたしはその人との付き合いがその後も続きましたが、彼のくすり、酒、女、ギャンブル。アドレナリンの出る刺激はすべてやっている人間でしたし、ウソばかりで目がちばしっていました。そのコミュニティへも依存している姿をみてだんだんと冷静になって来ました。

わたしのことを上から目線で馬鹿にしていること、雑で乱暴に抱かれること、物やお金をたかられること、前の奥さんと子供たちへの未練がすごいこと。

そんなある日、
『何でわたしと付き合ってくれないの?』とシンプルに聞くと、
『いや、独身だったらすぐに付き合ってたよ。でも、俺まだ離婚できてないから』と帰ってきました。

今までは別れたといっていたのに、実は話し合いが難航して正式には別れていないことが発覚しました!

聞いてみると、彼が何度か薬物で逮捕されたことが原因ですべてが自業自得。

薬物を使用している自分を愛してくれない妻にだだを捏ねているだけの子どものような人だったのです!なんやねん!

わたしの今までの彼への幻想は崩れ去りました。
わたしは一体彼の何にそんなに惹かれていたのかを自分と向き合って考えると、
それは父性でした。

5年の不倫していた相手も、
この人もそれはもう愛おしそうに
娘について語る人でした。

大好きで、愛おしくて、かわいくてたまらない。
子どもたちがいれば、それでいい。
何をしていても、素晴らしいのだと。

彼らが子どもに抱く父性をこどもに直接渡せない、言えないが
ゆえに持て余したものをわたしはかわりにもらっていたんです。
おこぼれに預かっていたというのが正しい。

わたしはわたしの父にわたしを愛してほしいと思っていたし、
愛されていないとわたしが思っていることに気が付きました。

それに気が付いてから、
そのまま自然と彼には会わなくなりました。


わたしは何度も何度も同じように身体を重ねれば人といられると思って軽はずみな行動をとってしまったことに自己嫌悪しました。

それと、いつも、わたしは自分が相手を好きだと思い込んでいるだけで、単に相手が持っている考え方やいい部分をまるで弟子入りのようにしてくっついて周り、自分が欲しいものが手に入ったら、その人のことを必要としなくなっていました。

わたしは結局人をもののようにしか考えていないのだ。わたしな人を愛さないのだと思って胸が苦しくなりました。

そんなわたしが人を愛するのは無理だと思いながら、あがなっているのに並行して、実はカウンセリングではない方法で自分を見つめ直す方法を試してもいました。


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