![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104853257/rectangle_large_type_2_53047beb0f477769026579480df90294.jpg?width=1200)
竹田城は登るところなのじゃ!
長い間、竹田城というのは眺める場所だと思っていた。考えを改めるに至ったのは一年ほど前だっただろうか、祖父母の家で流れていた映画、高倉健が竹田城跡を歩く場面を見てからだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104854669/picture_pc_2cbd7323de725b5c21f42d1c4c6abf27.png?width=1200)
同じ高度で霞む碧々とした山々と芝生の若緑。反り立つ石垣の間を縫って登っていく高倉健の渋味のある表情、透き通った女性の歌声。是非に及ばず私も登らなくてはと思った。調べてみると映画の名は『あなたへ』というらしい。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104854476/picture_pc_910cc06333aed3d6e14304b254765945.jpg?width=1200)
晴天の下、ほど近くの山城の郷へ降り立った。羊が草をムシャムシャと毟り食っているのがなんだか微笑ましい。腹拵えを済ませて城跡を目指す。道中の植物は普段目にしない類で、それも楽しい。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104855024/picture_pc_8a46d74d50fe4c87dd33a7e2860bf5ad.jpg?width=1200)
城跡に辿り着く。ブンブンとそこらを飛び回る熊蜂は気が立っているらしく、近くを優雅に舞う蝶なぞ動くものに見境なく突撃していた。城に居着いたことで戦闘本能が養われたのかしら。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104856195/picture_pc_dbf96c11f8a838daae0b957803f27bd5.png?width=1200)
熊蜂云々は置いておくとして、そこは確かに"天空の城"に相応しい場所であった。城としての機能は入り組んだ石垣を見れば言うまでも無い。軍事施設でしかない山城というものの残滓に、なぜこうも甘美な趣が漂うのであろうか。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104856259/picture_pc_4d118584f428ab117f41fd3f3a4fe925.jpg?width=1200)
精神的充足。地理学者ジェイ・アプルトン氏の言葉を思い出す。この城跡は眺望と潜伏、この二つの欲求を高度に実現する場所なのではなかろうか。眼下を見渡すことが出来、且つ数歩後ろに引けば下から見えることも無い。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104856084/picture_pc_a92bb4e65a0ea290d94938865766a893.jpg?width=1200)
ここに大きく関わるのが天守建築の有無であろう(石垣は抜きにして)。精神的充足は無意識の領域に関わることであろうから、戦の有無どうこうは関係ない。四方に開けた視界と充分に余白のある空間。有無を言わさぬ孤高の場である。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104857706/picture_pc_345ad50ad7b704bbc37feb71f54de19f.jpg?width=1200)
論理的に言葉を並べたいのではないゆえ、このくらいにしておいて。上の方で甘美な趣と表現したのは冲融と表現するのが正しいのだろうか、どこか充たされる感覚があってのことで。それはもちろん天気のこともあるのだけれど。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104858346/picture_pc_04e079b7050260ca1abd044f11c56be5.jpg?width=1200)
実際にこんな場所は国内においてはほとんど見当たらない類であろう。敢えて言うならば"浪漫"、これに尽きる。こんなところにお城があった。こんなところに作られた。細かい歴史の説明など抜きにしても、誰もが往時の姿に思いを馳せよう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104858685/picture_pc_0fa56edab12e6cdfad0fe77d54299936.jpg?width=1200)
全国各地にあろう同様の建造物の残滓。これがまたとない場所にそれと分かる姿で残っていること、訪れることが出来ること、そしてその場所の浪漫に心置き無く浸かることが出来たこと。満足感を言い表すのにはこれで充分だい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?