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賭したもの
「もちろん、私も賭けてるわ」
ポール・シュレイダー監督作、マーティン・スコセッシ製作の『カード・カウンター』を観た。本国より凡そ二年遅れての国内上映。大方の予想とは異なり、本作の主人公がベットしたのはゲームでなく、ある青年に、であった。
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ゆえにカジノを舞台として、手に汗握る高度な知能戦、心理戦が繰り広げられることはなく、形勢がひっくり返るカタルシスなども勿論ない。彼にとってカジノゲームは"賭け"と言うより、むしろ"計算"であるのだ。
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そんな彼がひとりの青年にベットする。過去を、未来を、復讐、贖罪、救済、そして合理性をも。果たして彼は賭けに勝ったのだろうか。
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アブグレイブ刑務所で実際にあった出来事を下敷きに、人間の存在そのものにまで迫る本作。主人公の愛読書、マルクス・アウレーリウス『自省録』よろしく物語も彼の内省と行き交う。
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本作を重厚あるいは荘厳たらしめるのが、そのハード面の部分。楽曲も含めた音響、目に焼き付くようなカメラワーク、動きの少ない"静"の演技。主人公を演じたオスカー・アイザックは言うまでもない。
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形式からの離脱、転じて回帰を印象付けるカットと合わせ鏡のカットはもはや凄まじいまである。そして所々、周囲から浮いた形で耳に入る小鳥の囀りと犬の遠吠え。当該カットで描かれる内容と照らし合わせても、これまた面白い使い方で。
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頭を使って観なければならない、というより、考えを巡らす主人公に誘われる形で、観る側もまた知らぬ間に頭を使っている、そんな風な映画だった。
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鑑賞後の疲労感とも重なる満足感、それが全て。
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