ゴジラ-1.0
主題はゴジラなる存在、というよりも"いのち大事にしようね"であった。軽いように聞こえてはしまうが、実際そんなものである。そのメッセージを効果的に伝えるための、戦後という舞台設定であり、同じくゴジラという舞台装置だったのではなかろうか。ご都合主義等の批判はこの期に及んでは的外れであって、物語の展開は先の主題に添えられたに過ぎない。ラストシーンを考えてみると明らかだろう。かけがえのない人のいのちと、取り返しのつかない死一一
それはそれで置いておくとして、とにかくゴジラの暴れっぷりは天晴れ。臨場感溢れるカットといい、得体の知れぬ恐怖、異質さを際立たせる音楽。ここまでの表現があってこそ、逆説的に作品の一貫したテーマ性が際立つ。それから俳優陣の演技、これまた素晴らしい。危うさの滲む感情の昂りは、時代の特質とも言えるのだろうか、我々の失ったものであり失くすことのできたものでもあろう。
あくまでエンターテインメントの文脈で、且つキャッチーな舞台装置を用いて"いのち"の大切さを説く。陳腐なようで、これはこれで映画という一種の大衆文化の可能性である、とか。そんなことを考えながら。
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