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WEEKEND

金曜の晩は『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023)』を面白く観た。扱う主題に対して承転結の時間配分が興味深い。「権力」への憎悪と、禊は済んでおらぬ、という意志の宿る構造。次いではオーマイオールタイムベストこと『バスターのバラード(2018)』を観るのだが。前述の作品とは異なった、力感を覚えさせぬ演出には毎度酔いしれる。

酔っていたから寝たのだ。チェコで買うた、あの丸々とした大ぶりのジョッキを使い始めて三日ほど。明らかに飲酒量が増えているが、こちとら気分はボヘミアンである。そんなことは気にしちゃあいけない。

土曜である。午前には具合よく風が吹き、それが身体を包む熱をせっせと払っていたのだが、ちと働きすぎたのか正午を回ると私は放ったらかしに。こちら、大いに暑いのですが。風鈴も鳴りを潜め、コップを口に運ぶたびにポトポトと膝元濡らす水滴。こちらは冷たい。

風涛社『〈場所〉は語る』を読んだ。「場所」について各々が、実際ほんとうに各々のアプローチで文章を連ねている。多様性なる言葉が"良くも悪くも"の文脈で用いられる今日であるが、この類の試みは個人的に大の好みである。論考に随想、詩から写真まで。顕になるのは「書籍」というトポスの効用であり、そこには上下がない。

文学における場所論のようなものも展開されており、空間描写云々で漱石の『こころ』も登場しておったが、去年だかに読んだ岩波文庫『漱石文芸論集』においてもちょうどこの"空間"は論ぜられていた。該当する部分が面白かったことだけは覚えているけれど、メモ欄には何にも書き留めていなかった。

夕方から烏丸の界隈へ出掛ける。六月度の〈観る会〉である。その正式名称こそ〈月一絶対映画観る会(会員二名)〉であるから、駆け込みも駆け込みだ。アップリンクで『スリープ(2023)』なる韓国産ホラーを。これが予想に反して非常に良かった。

終わってみれば「忠実に、オーソドックスに仕上げられた作品」で、優等生的であると評しても過言ではなかろう。しかしながらその秀逸な着眼点には虚を衝かれるとともに、「一本取られた」という爽快感すらある。閉じられた空間という点もまた、風刺という側面を一層際立たせていた。途中からはコメディ要素(ブラックな類だが)すら漂いだして、これにはずうと笑いを堪えておった。

思い出したのは『マリグナント(2021)』なるホラー映画で、観ているこちら側の弄ばれる心地好さが重なった。『スリープ』に関してはそこに「信頼」すらも感じられてちょびっと嬉しい。職場のホラー好きの面々には直ぐに勧めよう。

解散するまでの一時間足らず、バアで話し込んだ。知らぬ間に熱が籠って、一口が大きくなる。麦味の清涼飲料酒── 帰ってからは『神在月のこども(2021)』をNetflixで。タイトルへの条件反射で観始めたものの、これは子供向けであった。それだけ。

昼までスリープは日曜日。家の事は多々溜まっており、それらをせっせと消化していく。途中から師走かと思うほどの、本格的な空気になってきたものだから、堪らずエスケープ。喫茶店である。「これ、今日食べるやつやで」と差し出された水無月。明日からは文月。

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