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エメラルド


カネコアヤノさんのライブを数日後に控えている。
好きになってはや数年…待ちに待った初ライブという事もあり、並々ならぬ思いだ。
その事もあってか、ついに夢にもでてきたのだ。



舞台は母校、小学校の体育館。
田舎の古びた体育館である。
どうやらここがライブ会場のようだ。
体育館の入口に設置された演目台らしきものには筆文字で講演名が書いてある。
私はその入り口に立ち「いよいよか」と呼吸を整えていた。

体育館の靴箱付近に受付があり来場客はまず受付を済ませると、
次に何故か更衣室へと誘導されていった。

私は誘導されるがままに更衣室へ到着。
更衣室内は衣装部屋のようになっており
所狭しと並べられたラックには服がぎっしりかけてある。
どうやら来場客はここで
ライブ会場で身にまとう衣装を選び、着替えてから会場へ入るシステムになっているようだ。
アーティストでいう"ステージ衣装"といった位置付けだろうか。

私はなかなか衣装を決めきらず、うだうだと迷い続け開演時間はすぐそこという所まで来ていた。


やっと衣装が決まった。
元気の出るオレンジカラーで全身コーディネートし
いざ会場へと更衣室を出た途端、
学生時代の教師と鉢合わせになった。

「スポーティーな服装好きなんだね笑」と
その教師は言った。

その途端、私は
違う…私はスポーティーなコーディネートにするつもりはなかったのだ…そう見えてるのか…。あと「笑」が気になる「笑」が…。
せっかくのカネコアヤノさんのライブ、ドレッシーに仕上げたいのに…。TPO、TPO…。
ともやもやし始めた。


気づけば再び更衣室内にいた。
他の来場客はすでに会場へと足を運んでおり、更衣室には私たったひとり。
落ち着かない足取りで更衣室内中のラックをカチャカチャと忙しなく見渡し、その中で自分の思う1番ドレッシーなワンピースを選んだ。

クローゼットの中で一番気に入ってる
ワンピース着ていくね

この曲の歌詞にわずかばかりリンクした状況とでも言えるだろうか。


衣装が決まると、猛ダッシュで会場へ駆け込んだが
入場列には到底並び損ねており、1番後ろの方から観賞するはめとなった。


体育館の真ん中はネットで仕切られており、
ステージ側の半分はカネコアヤノのライブを観に来た客でごった返し、
もう半分はバドミントンの大会が行われているようだ。
羽根の音が響くというのにこの中で演奏ができるものなのか…。
観客も何の違和感もないような顔つきで開演を今か今かと待ち望んでいる様子だった。

ついにステージのカーテンが開かれ、真ん中には椅子に座ってギターを抱えているカネコアヤノさん。
そして始めに歌った曲は「エメラルド」。
彼女のその力強い声は、古びた木材がきしむ体育館を震わせ、
直前まで服に悩んでいたような私の中のあらゆる雑念を吹き飛ばし、
つい先程まで後ろで鳴っていたバドミントンの音はまたたく間に耳に入らなくなった。
私の耳の中には彼女の歌声だけが響きわたった。



全てにおける設定が全くの意味不明な夢である。
夢って本当に不思議。私たちをまだ見ぬ世界へ連れて行ってくれる。
こうして夢たちは、数々の作品のインスピレーションになってきたのかもしれない。

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