相合橋で待ってる

街を歩いていて私が
「あ、ここおいしそ」
と思うお店には、共通点がある。
 
それは、どこか“恥ずかしがりン”なたたずまいのあるお店である。
 
お店の規模は、できれば小さなほうがいい。
お店の立地は、大通りに面したトコよりも路地裏がいい。
のれんの向こうのドアは半開きで、入ってほしいんか入ってほしないんかどっちなんか、というお店が、すき。
外からのぞき見るようにして店内に目をこらすと、店主と目が合う。
合ったかと思いきや「どうぞいらっしゃい」と声を張り上げるでもなく、急いで目をそらしてカウンターの台やらなんやらをごちょごちょ拭きだすようなのがいい。
意を決して入ってみると、愛想が悪いというわけではなく「いらっしゃい」と今初めて目が合ったみたいに出迎えてくれる、そんなお店。
 
わたし、戎橋筋はギンギンピカピカでキライである。
千日前筋は普通である。
相合橋筋は、いいなあ。
相合橋筋を歩いている人は、くすんだ服とくすんだ表情でドタドタ歩いてるオッサンや、映画『レスラー』のミッキー・ローク風の、何して生計を立ててるのか分からんようなトシ行った茶髪のオッサンなど、大阪という鍋で煮詰まった雑炊の残りじるみたいな人が多い。
しかし、くちゃくちゃの恰好した彼らこそ、ほんとうにおいしいものを知っているのではないか、と夢想する。
彼らが人に教えず、だいじにだいじにしてる隠れ家のようなお店はどんなお店なのだろう。
 
私もそんなお店をひとつ持つことができたら、オトナのふりをして胸を張れるような気がする。
そんなお店を、探している。

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