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2023年#2 余命10年 記:大橋

藤井道人監督は人をどん底に突き落とす映画しか作らないのですが、この度ちょっと趣向を変えたやり方で皆さんを絶望させてくれます。

余命系は、ウエストランドさんがM-1で腐していた通り、悲しいだけなんですよね。トム・クルーズの映画の99.9%がトム・クルーズが活躍するだけのように、余命系は、死ぬことが約束されているヒロイン(いつも死ぬのは女の子)にナイーブな心を持つ男の子が恋して懸命に尽くすも死別してしまい、悲しみに打ちひしがれつつ残された手紙とか日記とかを読んで、少しだけ再生して終わる、というのがパターン。

藤井監督じゃなかったら100%観てないです。

誰もが知っている肉じゃがみたいな、捻りようのない料理をあの鬼才がどう作るかなとそんな目線でみました。

ちなみにこの映画は芹沢が2022年3月に観た映画で3位につけておりました。
寸評は以下の通り圧倒的な肯定。期待が高まりまくってました。

映像美・物語・演技。エンタメ性・興行実績・クオリティ。そのバランス。現時点での日本映画の最高到達点ではないかと思う。
2022年3月に観た映画

以下、ネタバレありです。


2時間があっという間に感じた、というのが感想でした。それだけ没頭させてくれたということだと思います。緩急のつけ方が絶妙でした。
これはコーダを見た時も感じたことで、ダレないってすごいです。
誰もがその先の展開を簡単に予想できるプロットで飽きさせない、どんな技を使っているのか。

普通の余命ものなら、前半元気なくだりがあって、ある二人が出会って恋するまでに一山あって、それを越えてちょっと安定してきてこのままハッピーエンドになればいいな、と思ったあたりで病気が発覚、死にたくない、私はこれがやりたい、うんちゃらかんちゃらで、死、悲しい、でも俺頑張る、というのを、だいたい平均1~2年くらいでやるところをたっぷり10年。
ひょっとしたらこれを2時間で表現しているからダレないという、コロンブスの卵的な発想なのかもしれません。
自分の本を出す、焼き鳥屋をオープンする、という自己実現の2軸の後ろで春夏秋冬をぶん回して10年を経過させます。

生きたくても生きられない」と芹沢さんは表現していましたが、ストーリーの主軸は、ぜんぶそれになってしまわざるを得ないので、どう見せるかですよね。もうタイトルで出落ちしてますから力量が問われます。

何を言いたいかわからなくなってしまいましたが、結論から申し上げますと、「現時点での日本映画の最高到達点では」ないですが、見始めたら最後まで見ちゃうこと必定の余命系です。パターンにはまってるのに見てしまう。これは逆にスゴイ。

リリーフランキー(改めて考えるとおかしな名前だ)が寡黙な焼き鳥屋の親父を静かに熱演してまして、実に美味しい役所で名言しか言わないのもパターンなのにいい。

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