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月と六文銭・第十四章(27)

 田口たぐち静香しずかの話は続いていた。厚労省での新薬承認を巡る不思議な事件の話に武田は引き込まれ、その先の展開に興味を示していた。
 彼女のカバー(仮の姿)である高島たかしまみやこは、ターゲットであるネイサン・ウェインスタインと関係を持った。彼の謎の力が発揮されるのも経験した。
 しかし、対処の仕方が思いつかない初めての経験に戸惑っていた。

~ファラデーの揺り籠~(27)

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 ネイサン・ウェインスタインは考えてから、都に聞いた。
「昨日、ミヤコを抱きたかったけど、ミヤコの気持ちがそれに向かっていないのが分かったので、無理に誘わなかったんだ」
「うん、ありがとう。一晩ゆっくり考えることができたから、今夜は気持ち良くネイサンに抱かれることができたし、ネイサンも満足する経験ができたでしょ?」
「すごい経験だった。日本女性は皆こうじゃないんだね?」
「違うと思うわ。私は小柄だし、元々アソコが狭い上に男性経験が少ないの。いろいろな要素が重なった結果で、日本女性がみんなこうとは限らないと思うよ」
「そうなんだ。ミヤコは何度もできるの、セックス?」
「またしたいの?」
 都は、わざとちょっと困った顔をウェインスタインに見せた。
「今日はもう…。多分、濡れないし、痛くなってしまうわ。ごめんなさい」
 都はすまなそうな顔をしてウェインスタインを見た。
「明日とか?」
 ウェインスタインはどうしても、もう一度都とセックスがしたかったのだ。どうしてもあの膣の動きをもう一度経験したいと思っているのだ。
「分かったわ。でも、私も思い切り声を出したいから、明日はあなたの部屋でしましょう」
「分かった、明日、僕の部屋ね」

 約束を取り付けられたとの満足感もあり、ウェインスタインはゆっくりと都からペニスを抜いた。コンドームに着いた白い愛液に少し戸惑い、ティッシュで先端から引っ張ってはずし、それをまとめて丸めてゴミ箱に捨てた。

 それを見た都は"やったぁ!"と頭の中で軽くガッツポーズをした。ウェインスタインのDNAサンプルが手に入る。これを東京のR&D(研究開発部)で分析してもらったら、何か分かるかもしれないと思ったのだ。
「ネイサン、シャワーを浴びていく?」
「自分の部屋で入るよ。同じホテルだから」
「そう。じゃあ、私、明日も早いから、今夜はおしまいにしましょう」
「そうだね。じゃあ、戻る。また明日の夜に!」
 ウェインスタインはパンツ、ズボン、靴下を順に履き、ワイシャツを着て、その上からジャケットを羽織った。
 都にキスをして靴を履き、部屋を出て行った。靴は運転に特化したドライビングシューズだったから、やっぱり運転が好きなのね、と都は思った。
 ホテルのガウンを着たアラサーに見送られながら、ウェインスタインは部屋を出て行った。廊下には誰もいなかったので、都は扉から頭を出して、エレベーターの方を見て、ウェインスタインが見えなくなるまで見送り、エレベーターの音がするところまでを確認した。

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