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マンガMee人気作家の漫画の作り方を大公開!『シンジュウエンド』セモトちか先生インタビュー【ネーム編】

マンガMee公式noteでは、デビューを目指すみなさんへ、面白い漫画作りのヒントになる情報を発信中。マンガMeeで活躍する人気作家さんに、漫画家志望者なら気になる漫画作りのアレコレを教えてもらうインタビュー連載を公開しています。

今回は、ドラマ化もした大ヒット作『サレタガワのブルー』が完結し、新連載『シンジュウエンド』も早速大人気で話題沸騰のセモトちか先生に、漫画の作り方を教えてもらいます。

  1. 連載立ち上げ編

  2. ネーム編

  3. 作画編

と、全3回にわけて掲載予定です。第2回となるこの記事ではセモト先生に、ネームの描き方を教えていただきました!

第1回はこちらから▼


こんにちは、漫画家のセモトちかです。

第2回「ネーム編」とのことで。前回はいささか余計なことまで語りすぎたような気もしていますが、わりと好評だったようで嬉しいです。

僭越ですが第2回自分語り、スタートです!はたして需要はあんのかい!?

最終話までプロットを練るのがセモト流

前回の「連載立ち上げ編」でも話しましたが、私は連載開始前に企画を出す時点で、ざっくり最終話近くまでの内容を考えています。その時に、『サザエさん』のサブタイトルのようなかたちで、毎話どんな話かを書いておくんです。『第61話 藍子、裸土下座!』とか(笑)。

ネーム作業での指針になるし、長編の物語の中で自分が迷子にならないように、この作業は大切にしています。伏線も張ったりして。

「来週はいよいよあのシーンを描く時間だな〜! 楽しみ〜!! フッフゥ!」と想いを馳せながら、私は頭の中で寸劇をしながらネームを考えていくので、寸劇の準備を常に脳内でしています。

そして、この作業をしておくと、基本プロットどおりに話を進められるんです。エピソードの順番が前後したりはありますが。

ただストーリーに関係ないところは、サブキャラを突然気まぐれに出したりもします。具体的にいうと『サレタガワのブルー』の水無瀬くんは、途中で決めたポッとで出のキャラです。“ネームを描きながらキャラ作りをしていった”という、私の中で非常にレアなケースで、いい人にするか悪い人にするか、イイ意味で迷子になりながら楽しく描き進めていました。

水無瀬葵 『サレタガワのブルー』©︎セモトちか/MIXER/集英社

水無瀬くんのキャラだとどっちに転んでも “メインキャラクターののぶるこずえを掻き回す” という大筋の当て馬的な役割に変わりはないんですよね。ストーリーが変わることはないし、どう動いてくれるか、私自身もすごく楽しんで描くことができました。

前回もお話ししましたが、「次週どうなるか作者さん自身もまったくわからない」というスタイルで週刊連載している漫画家さんも多いとのことで、それはそれで読者も先が読めなくて素敵だなーと感じていて。水無瀬くんで試したのですが思いの外、楽しかったです!

いつかそれで長編やってみたいです。未熟者なので大迷子になるかもしれませんが(笑)!

ネーム前のネタ準備を万全に!

そんな感じで、先に大まかな各話ごとの内容は考えているので、企画のOKが出たら詳細な内容のネームを毎話考えていきます。1話分のネームにかける時間は基本的に1日です。

私の漫画は会話劇が多いし、会話のテンポ的にも勢いが大事なので「あんまりネームに時間かけないようにしよう!」と心がけています。ネーム段階で絵も細かく描かないんです。それをすると、セリフの勢いが止まるので。本当にスピーディーに!ただ、表情は担当さんにしっかり伝わるように心がけて描いてます。

セモト先生の『シンジュウエンド』のネームを大公開!
©︎セモトちか/MIXER/集英社

なので、ネームを描くまえのネタ準備を結構コツコツとしていると思います。例えば、担当編集・きたさんと、週に1回程度雑談のような感じで電話打ち合わせをします。でも我々の場合、一般的な漫画家さんのような “THE打ち合わせ!”って感じでは多分なくて。かなりラフに今流行りのニュースや出来事について話したり、面白いと感じた漫画やドラマについて話したり。恋バナしたり(笑)。

私の漫画は “女子会で話題になりそうな漫画” を心がけているので、友達が笑ってくれそうな話や、流行りを取り入れようと意識しているんです。その結果、打ち合わせも女子会みたいにワイワイキャッキャ雑談するだけで終わることもあります(いいのかな…(笑))。きたさんとの楽しい会話はそういう意味で重要なインプットタイムであり、やっぱりちゃんと打ち合わせですね(笑)。

あとは、私の兄が、小学生の頃『SLAM DUNK』の相田彦一っていうメモ魔のキャラクターが好きで。「要チェックや!」と、なんでもメモしていたんですよ。それが面白くて私もマネしていたら、子供の頃からメモ魔になりました。なので、おもしろい出来事や、友達、きたさんの言葉などを100均のらくがき帳に電話しながら、いつも書き込んでます。

経験上、かしこまった上等なメモ用紙じゃダメなんです。くだらないことも躊躇なく殴り書けるよう、100円ショップの子ども用のやつ(笑)!いつもなんでも書き殴ってます。いつか使えるであろうネタのストックに。そのネタ帳で見つけたきたさんとのくだらない会話を、ネームに取り入れるときたさんが笑ってくれるので嬉しいです!ただのお母さんに褒められたい子供的な心境ですね(笑)。

今回は “新人漫画家さんに向けてのアドバイス” というのも聞かれているので、「担当編集さんを愛すべし!」は声を大にして言いたいです!!担当編集・きたさんが一番の自分のファンであると私は思っているので、きたさんからリクエストが届いて、それに応えようとネームを考えることも多いです(『シンジュウエンド』でいえば、ヒロインの鈴編が続くと「そろそろ真志が見たいですぅ〜」とか)。愛です。愛。

寸劇をしながらキャラに憑依

そして、いざネーム。私はネームを描くにあたって、まず全体のセリフを考えています。自分にキャラクターを憑依させて、寸劇を脳内でしながらiPhoneのメモ帳にメモをするんです。考えに指が追いつかない時は、思いついたキャラの会話をボイスメモに残すこともあります(人に聞かれたら死ねます)。

話の途中で夜が明けたりするのなら実際に夜を挟んでみたり。ベッドシーンは夜考えたり(笑)。わりと生身の時間をシンクロさせているかもしれないです。ふと鏡を見ると、描いてるキャラと同じ顔をしていたり(笑)。取り憑かれ系の作者です。いつかキャラに自我を奪われる気がしてます(ホラー)。

もしいいセリフが出てこなくて詰まってしまった時は、さっさとネーム作業に入って表情を絵に起こすと、不思議と浮かんできたりします。

縦スクロールの流行りって?

ネームについて昔の自分と比較すると、私のデビュー作『星になる前にキミと』の時のネームは「コマ詰まりすぎィ!」とすごく不愉快に感じますね(笑)!!

『星になる前にキミと』第2話 ©︎セモトちか/comico


でも、縦スクロールにもどうやら流行りのコマ間があるらしいんですよ。きたさんから、最近の流行りをきいて、ネームを描くときはコマ間をその時の流行りに合わせて描いています。

2015年あたりの人気作品はみんな、ギュッとしてましたね。2020年あたりでは、韓国作品も増えてきた印象で “コマ” → “セリフ” → “コマ” → “セリフ” な感じが流行りでした。だいぶコマ間がゆったりしていた時期です!私は三半規管が弱めなので、ゆったりめは読んでいて酔っちゃうタイプなので、個人的には苦手です。

そして今の流行りは、また前よりも1スクロールあたりの情報量が詰まってきています。流行りってあるんだなぁと意識して人気作品を読むと、おもしろいです!新人さんが悩んでいたら、ネームの練習はひたすら好きな縦スクロールの漫画を読んで、コマ間を模写してみるといいと思います!スマホの画面の大きさも意識してみてください。

私がなぜ横読みのページ漫画ではなく、縦スクロールにしようと思ったかというと、2013年あたりのcomicoがすごく大好きだったんですよ。たくさん読んで、刺激を受けて…私の漫画家人生の青春時代です。ウェブトゥーン(縦スクロール)のはしりというか! 漫画の新時代でした。夜宵草先生の『ReLIFE』やくろせ先生の『ももくり』など、ものすごくクオリティの高いフルカラー漫画が盛り沢山で、本当にびっくりでした!

なかでも、野中かをる先生の『失格人間ハイジ』の37話。電車の中でのキャラの様子が描写されていて、ガタンゴトンという様子が実際の電車の様で……!!ぜひ読んでみてほしいのですが、横組み漫画では味わえない親指をスクロールする喜びというか、独特の臨場感が味わえて「これからは縦スクロールの時代だァ…!」と、当時震えました。

まだまだ自分は未熟者なので、縦を生かした新しい表現にはもっと積極的に挑戦していきたいです。漫画の表現って無限大です、まだまだ勉強していきたいです!

楽しくて震えますぜ!!

ネームで悩む新人漫画家さんへ

私は2015年にデビューして、いまだかつて「ネームが描けなくて苦しい」という感覚を味わったことがないんですよ、恵まれたことに。

もちろん担当編集さんに指摘されて描き直すことはありますけど、描き直したモノは見違えるほどよくなるので、いつも的確な指導に感謝しています。

ネームを描く作業が自分の中で一番好きなので、「次描きたい! 早く次!」と常に荒ぶっています。なんでだろうなぁと考えたときに、やっぱりそれは「読者さんを楽しませたい」という気持ちが、常に私の真ん中にあります。「続きが楽しみ!」と言ってもらえること。それがネームの原動力。ありがてぇです。私が止まらない理由です。感謝でいっぱいです。

人の寿命が約80歳だとして、“漫画家人生の中で、長編ストーリーは描けて平均5作”って話を聞いたことがあります。それを思い出したら「止まってる場合じゃねぇな!」っていつも焦ります。私はもう3作目なんで! 

でも確実に体力は衰えてきてますし! 少なくともあと20作くらいは描きたいストーリーが脳内にハッキリとあります。やっべぇです(笑)!!

やっぱり人を愛して、漫画を愛して「人を喜ばせたい」っていう気持ちを忘れずに、常に止まらず描き続けたいです。誰か1人でも楽しく読んでくれるのなら。

「ネームが苦手だと悩む新人漫画家さんに、一言アドバイスを!」と言われたんですが…。「愛と勢いやで!!!!!」と熱く、現場からはお伝えしておきます!!

あなたの名作を待ってます!! はぐ!

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文・セモトちか / 編集・戸田帆南

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