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マンガMee人気作家の漫画の作り方を大公開!『シンジュウエンド』セモトちか先生インタビュー【連載立ち上げ編】

マンガMee公式noteでは、デビューを目指すみなさんへ、面白い漫画作りのヒントになる情報を発信中。マンガMeeで活躍する人気作家さんに、漫画家志望者なら気になる漫画作りのアレコレを教えてもらうインタビュー連載を公開しています。

今回は、ドラマ化もした大ヒット作『サレタガワのブルー』が完結し、新連載『シンジュウエンド』も早速大人気で話題沸騰のセモトちか先生に、漫画の作り方を教えてもらいます。

  1. 連載立ち上げ編

  2. ネーム編

  3. 作画編

と、全3回にわけて掲載予定です。第1回となるこの記事では、セモトちか先生の漫画家デビューから『シンジュウエンド』の立ち上げまでの道のりについてご自身に語っていただきました!


初めましてのみなさまも、読者のみなさまもこんにちは!漫画家のセモトちかです。マンガMeeで昨年『サレタガワのブルー』を完結、現在は新作『シンジュウエンド』を執筆しています。

今回、マンガMee編集部さんから「漫画家志望者に向けて、セモトさんの漫画の作り方を教えてほしい。セモトさんご自身のことも深掘りしたいです……!」的な熱いご依頼を受けましたので、僭越せんえつながら漫画家になってから『シンジュウエンド』を連載するまでの道のりを、自分語りしてみようかと思います。

長くなりますけどいいですか? 本当にいいんですね?


漫画との出会い

私は、物心ついた頃から漫画が大好きで。毎週兄が買ってくる『少年ジャンプ』をハイエナのようにおこぼれで読んでいました。

自分で漫画誌を買い出したのは小学校高学年の頃かなぁ……。『りぼん』を買っていました!今思い返してみると、生粋の集英社っ子です(決して、編集部さんに媚びているわけでは……笑)。

漫画を描くほうは、小学生の時に、自由帳に好きな漫画の絵を描いていたのが始まりです。はじめは模写だったのが、そのうちに自分のオリジナル漫画を描き出しました。今見たら、それはそれは恐ろしい特級呪物で、黒歴史ですけど(笑)。

自由帳漫画は中学生、高校生の時も、趣味としてずーっと描いていました。その頃から私の中で “物語を生み出す作業” は日常で。でも、兄がものすごく絵がうまくて、“絶対に追い抜けない人” だと思っていたので。私自身がプロの漫画家になれるとは、当時カケラも思っていませんでした。

ただ楽しいことをしてるだけ。クラスメイトに読んでもらって、感想をもらって、それで大喜びしていました。

なので、当時は「たくさんの人に読んでもらいたい」など大きなことを思ったことはなく、“半径5メートルにいる、私の漫画を好きと言ってくれる人を喜ばせたいだけ” という感じでした


プロ漫画家になった理由

そんなこんなで漫画が大好きで生きてきた私ですが、大学を卒業してからは普通の社会人をしていました。ずっと漫画は好きだったものの、いつしか “漫画を描くこと” からは遠ざかっていて、自由帳漫画もすっかり描かなくなっていたんです。

でも、デザイン会社の友人から頼まれて映画やCMの絵コンテを描くなど、 “絵” を描くことは、変わらずすごく楽しくやっていました。

そんななか、人生の転機が訪れて。

詳しくは書けないのですが、底なしに明るい性格の私がガツーンと死にたくなるほどに、ものすごくつらい出来事があったんです。そして恥ずかしながら、私はそれを受けて自殺をしようとして、失敗したんですけども……。そんな時、思いました。「どうせなら、人生やり残したことはないかなぁ」って。

それで思いついたのが “長編漫画を描いてみたい” でした。
儲けたいとかそういうことじゃなくて “描きたい” 。ただそれだけ。

そしてcomicoのインディーズで『星になる前にキミと』(以下『星キミ』)を描きはじめました。完結まで描いて「満足したら、死んでもいいかな」くらいの気持ちで。パソコンで漫画を描いたのは、『星キミ』の1話1コマ目が初めてでした。

『星になる前にキミと』冒頭 ©︎セモトちか/comico

今見返したら下手すぎてつらいです(笑)。


担当さんとの出会い

ありがたいことに、『星キミ』は予想外に多くの人に愛していただけました。「続きが気になる!」「楽しみ!」「ファンです!」なんて嬉しすぎることを言われて、「あぁ、こんな死に損ないの私でも、誰かの楽しみを生み出せるのか」と勝手に自分も救われた気持ちになったりして。

「漫画を描くって楽しいな」って改めて思いました。本当に、読者さんのおかげです。面白い漫画を生み出して恩返ししなければと、今でも常に思っています。

そして固定の読者さんが増えて、comicoインディーズで1位になった頃、元comicoの編集者の北室美由紀さん(通称“きた”さん)が、私が住んでいる九州まできて、プロデビューのスカウトをしてくれました。

でも、最初は断りました。

きたさんから「プロの世界では、作者の一存で決められないこともある」みたいな話をされて。『星キミ』は「私の死ぬ前の自己満足作品」みたいなもので、ストーリーを変えたり、キャラを変えたりなど、手を入れてほしくなかったんです。完結までストーリーをしっかり考えて描いていたので、どうしても人の意見で話を曲げたくありませんでした。

そして絵も上手くないし、「売れなければいけない」というプレッシャーのなか、プロ作品として世に公開する自信も覚悟も、まるでなかったです。だから、当時の私は「あ、やめよう」と思ってしまったんです。「『星キミ』は、そういうんじゃないしなぁ……」って(なんてもったいない 笑)。

でも、きたさんにものすごく熱心に口説かれて。その内に、「こんな私でも、漫画家という雲の上の人みたいな職業につけるのか…!」「や、やってみようかな…!」という熱い気持ちになり、プロになろうと決意しました。

決意した以上は、本当に「がんばって生きよう」と泣きました。

きたさんにガッツリ心を掴まれたというか。第二のお母さん、命の恩人です。このデビューから今までずっと、きたさんに担当してもらっていて、きたさんを喜ばせたくて私は漫画を描いているのかもしれません(笑)。

また、アシスタントもなしに『星キミ』の週刊連載の全作業を完結までやり切れたことによって、漫画家としてこれからやっていく物理的な自信はついていました。

そしてなにより、完結までついてきてくださった読者さんたちのことがものすごく好きになったというか。愛が溢れちゃって。死に損ないの未熟な私が、情熱だけで描いた自己満足漫画だったのに「感動した」とか「心震えた」とか言ってもらえて……。本当に本当に、救われました。

「生きていこう」と、改めて思いました。


そして『サレタガワのブルー』へ

『星キミ』の連載完結後、きたさんがcomicoから転職され、私もついていきました。結果、次回作はマンガMeeで出すことになり、その企画が『サレタガワのブルー』(以下『サレブル』)です。

当時、マンガMeeというアプリ自体がまだ世に出ておらず、“店がないのにオープニングスタッフ募集中☆” みたいな状況で、「え、本当に大丈夫……?」と実はまだ内心半信半疑でした(笑)。でも、お声をかけていただいた時は「集英社さんとお仕事できるなんて!!」とたかぶったのを覚えています。生粋の集英社っ子なので……!(決して、媚びているわけでは……。)

『星キミ』で読者さんに反応をもらえることが、漫画家の一番の喜びなんだなと学んだので、次の企画は「人を喜ばせたい。人の心を動かしたい」の一心で考えました。学生時代の自由帳漫画を書いていた時に思った、“半径5メートルにいる、私の漫画を好きと言ってくれる人を喜ばせたい” という気持ちに戻った感じかなと思います。『サレブル』はエンターテインメントに集中して生み出しました。『星キミ』と『サレブル』の圧倒的な違いはそこだと思います。

やっぱり、根が “九州の女” なので、よくも悪くも尽くし系で(笑)。人のために描くのが性にあっているなと。

拾ってくれたきたさんのために売れる作品を作りたいと思ったし、読者さんを守れるような新しい漫画が作りたいなと思って。なので、『サレブル』では “不倫したくなくなる” と思ってもらえるようにと意識しましたし、今回の『シンジュウエンド』では、 “死にたくなくなる” と思ってもらえることを意識しています。

生きる希望、明日への小さな光、みたいな。

昨今、芸能人の突然の自死で胸を痛めるニュースも多いように感じていて。私自身も自殺未遂の経験があるので、 “死から思いとどまること” を今回の連載のテーマとして選びました。

『シンジュウエンド』©︎セモトちか/MIXER/集英社


セモトちか流 企画の立ち上げ方

実在の人物からキャラクターを考える

作品の立ち上げをするときに、私はまずドラマの企画書のようなものをいつも作ります。私自身、昔から漫画の初期設定を考えるのが大好きで、そして日本のドラマが大好きなので、前にも書いたような “死にたくなくなる” や “不倫したくなくなる” など、読者のみなさんに伝えたいメッセージから、初期設定をイメージして企画書を書いていきます。

“漫画の初期設定の発案” は趣味かもしれません。「あの人が主役のこんなドラマが観たい」みたいなこともずっと考えています。好き、本当に好き!

初期設定ができたら、キャラクターを考えます。キャラクターは芸能人でキャスティングを仮定して、イメージを固めることが多いです。実在の人物と重ねてイメージするのが大事だと思っています。芸能人でも、友人や知人などでも。

ここだけの話『サレブル』の場合は、主人公・田川たがわのぶるは犬飼貴丈さん、Kis-My-Ft2の玉森さん・吉沢亮さん、山下智久さんの4人の集合体なイメージです(なので、実写化が決まって、犬飼さんのお名前を見た時は震えました……!!)。

『サレタガワのブルー』田川暢©︎セモトちか/MIXER/集英社

藍子は、わりと苦労しました……。「私のせいじゃないもん」的な強い発想は、「私のせいだごめんなさい」と常に考えちゃう弱々女子な私とは、真逆すぎて。色々な人と話して、自分とちがう性格の人の考え方は「常に取材・取材・インプット!」 を意識して、構成していきました。

『サレタガワのブルー』田川藍子©︎セモトちか/MIXER/集英社

企画の絞り方

企画ができたら担当さんに送ります。常日頃、描きたい漫画のストーリーが降りまくってくるので、担当さんにものすごい量の企画書をブワッと送って、困らせがちです(笑)。『シンジュウエンド』の場合は、初期設定が細かく描いてある色々な話の企画書を8〜10案くらいは送りました。

そこから担当さんと企画の絞り込みをするのですが、基本、私は自己肯定感低めの女なのに、漫画の初期設定を思いついたときだけは「これこそ神作! 私すごい!!」と思うし、自分で言うのもアレですが、本当に全部おもしろそうで(笑)。絞り込みが本当に大変でした。

でも、ツカミが面白い漫画はどれだけでも描けますが、最終回まで面白い漫画を描こうと思うと、限られてくるなぁと思っていて。漫画の描き方って人それぞれで、正解などないと思いますが、私は “最終回まで頭の中で考えておく派” なんです。

もうね、四六時中、考えてますよ!

『サレブル』も「こうなって。次はこうなって。最後はこうなる」というのを連載前に60話分くらい文章で書き、担当さんに提出しました。【61話・藍子、裸土下座!】とか(笑)。

細かい設計図や伏線を作ってから、ネームを描き始めています。超A型です。

コメント欄などを読んで、読者さんの反応から物語を変えたことは一度もありません。揺らぐことは何度もありましたが、私がブレちゃうとダメだと思うので……!「次回どうなるかまったく考えてない」という名作を作られている漫画家さんもたくさんいらっしゃるので、それはそれで憧れます!

たまにあるのですが、その時に描いているシーンより、ものすごい先で面白い展開を思いついたら、手書きのメモでぶわぁぁ〜っと書き出すようにはしています。メモが手元にない時に「今、私が記憶喪失になったらヤベェのでは?」と連載中、何度も不安になりました(笑)。脳にペンが追いついていない感覚が常にあって、最終回まで紙にアウトプットできた日は泣きそうなくらい安心しました。『サレブル』、描き終えることができてよかったです。

こんなふうに、“最終回までずっと面白い” “売れそう”というポイントを『サレブル』以降は重視して真剣に考えています(『星キミ』は恥ずかしながら自己満足漫画だったので……)。ドラマ好きの私にとって“面白い” “売れそう” は、“昼ドラテンション!波乱万丈の展開!女子会で話題にしてもらえるようなやーつ!”です。常に意識しています。やんや、やんや言うて読んでもらえたら嬉しいです!

最後に

今回、漫画家志望のみなさまに対してこの記事を書いてくださいということで、この記事を読んでくれているあなたは、もちろん漫画が大好きなんだと思います。

私自身まだ連載3作目。心は新人なので偉そうなことは言えませんが、あなたが心から「読みたい!」と思える漫画を、ただただ生み出してください。きっと、誰かが待ってます。きっと、誰かの心に、刺さります。私も読みたいです。

熱い作品、待ってます! 読ませてください! 折れずに描こう! 私も描くよ!楽しもうねーーー!!(大声)

・・・

次回予告

第2回【ネーム編】も準備中!お楽しみに!

関連リンク

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文・セモトちか / 編集・戸田帆南

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