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2020年が来る前に

幼稚園での世間話をきっかけに、2020年10月に「学習指導要領が変わる」という話を知った。

なんでも、プレゼンテーションやディスカッションを取り入れるらしい。

それ自体は悪くない。むしろ遅いくらいだ。

私も「プレゼンテーション力」は「自分の気持ちを全力で表現し、相手に理解してもらう力」だと、「ディスカッション力」を「誰かと思考を切磋琢磨し、より本質に近い結論を目指す話し合い」と定義し、子どもたちと過ごす毎日の生活の中に取り入れている。

4歳と6歳の娘たちなので、まずは自分の気持ちを感じてもらい、自分の状態や欲しいものを、言葉で表現してもらうよう促している。

4歳の娘は脳と言葉の発達が早い方なので「今はお母さんとギューッとしたい気持ちなの」「近くにいて欲しいの」などと自分の気持ちを言葉にできる。付き合う側としては、非常に楽である。

6歳の娘は言葉が得意ではないようで、よく癇癪を起している。言葉は不自由だが、絵を描いたりできる。それはそれで大切な力だと思う。プレゼンテーションは言葉やボディランゲージだけに限定するものではない。

ディスカッションは、夫婦で毎日やっている。自分の知識と経験をもとに、とある事象について議論・検討するのが私たち夫婦の毎日である。

議論はスポーティであり、公平で誠実な心や、相手へ敬意や尊敬の念が必要だと思う。言葉で打ち負かす、勝つといった程度の低いものではなく、より高いレイヤへ、より本質に近い何かを目指すものだと思う。

ただ、プレゼンテーションもディスカッションも、本質を理解しにくいものである。

私自身はどちらも出来ると思うが、他者に教えることはできないという認識だ。

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誰かの仕事を悪く言うのは気が引けるのだが、どうにも気になることがある。

パワーポイントで作成したであろう、文部科学省の「学習指導要領」を説明するPDF資料を、プレゼンテーションの状態になっていないとを指摘する人は現場にいないのだろうか。マスコミにいないのだろうか。みんな、この資料で理解できるのだろうか。

新学習指導要領について(文部科学省)

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パワポの資料は、読ませるものではない。wordやexcelで作る資料とは本質的に違うのだ。過不足なく、でも極限にまで、本質にまで削る必要があるのではなかろうか。

多分、私が職場でこんなパワポ資料を作ったら、上司に叱られ、大きく直すことになるだろう。

ディスカッションについては、そもそも日本人で”正しい”ディスカッションを経験出来ている人がどれだけいるだろうか。

たまに見る国会中継。国会で開かれるのは「議会」、参加しているのは「議員」だが、果たしてあれは「議論」、ディスカッションだろうか。

仕事の現場で、データ等の信頼できる根拠を示しつつ、自分の意見、特に反対意見を言うと「生意気」「遠慮がない」と言われてしまうのが実情ではなかろうか。

そういった現在である。教師の身近な場所に、子どもの身近な場所に、手本となるものがないように思えるが、気のせいだろうか。

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私が感じる不安は、日本の現在が暗澹たるものであるからだけではない。

”現在の学校”で、プレゼンテーション等を教えるのが可能だとは思えないのだ。教師の負担が大きすぎると思うのだ。

教師はスーパーマンではない。ただの人間だ。新しい学習指導要領が、現在でもブラックと言われる教育の現場を、余計にブラックにしないか。日々の生活に時間的・精神的余裕がない教師が、プレゼンテーションやディスカッションといった高度な技術を教えることが出来るのか。

プレゼンテーション(自分の思考や思想、感情を表現すること)も、ディスカッション(議論)は、1種類ではなく、1人1人に合うスタイルが必要だと思う。

教える側に技術や経験が必要になるが、すべての学校に、そういった人材(教師)はいるのか。学ぶ余裕があるのか。

2020年に合わせて、例えば1クラスの人数が20人程度に減らされる。1クラスの担任が2人制になる。そういった負担を減らす施策とセットであれば、教師も学ぶ時間を確保できるかもしれないし、1人1人の子どもを見つめる時間を確保することも出来るかもしれない。

でも、それはしない。無理難題を突き付けているだけに見える。

立法する議員も、文部科学省の職員も、現場にいる教師も、一番人数が多い保護者も。人に教えるということを、人を育てるということを、軽く、甘く、安易に捉えてはいないか。

「未来に合わせて、今の教育を変えましょう!」と号令をかけることを、”教育の実践”と勘違いしていないか。

表面的な行動で、本質をごまかしていないか。

ごまかしや嘘は、バレる。大人が分からないことでも、子どもは気付くと思う。

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子育てをしていると、色々な気付きがある。40歳になり、仕事の場で上司や同僚から叱られることが減った現在、子どもを育てつつ、自分の驕りや慢心、思い込みを戒める、正すことが出来るのは幸せなことだと思う。

自分の行動が表面的にならないように、形骸化しないように、気を付けて生きる。本質を目指して生きること。

これがなかなか、難しい。

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可能であれば、2020年からの「学習指導要領」が実行される前の時期に、今のうちに、積極的に議論・検討してほしいと思う。

オリンピックも世界を巻き込んだ大事な行事だと思うが、あれは1回で終わるお祭りである。

教育は続いていく。そもそも教育とは、子どもを”大人の良いように洗脳する”システムである。家庭教育も大事だと思うが、公教育の影響は大きい。

例えば「ゆとり教育」は、計画された教育が実行に移された数年後に、教育関係者から「失敗だった」とされている。教育を受けた側としてはたまったものではない。

同じ過ちを繰り返しませんように。歴史から学べますように。

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毎度毎度、長い文章を読んでくださってありがとうございます…。またよろしくお願いします。





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