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子育ての歴史を調べてみた(その2)~戦後から1950年代

この記事の続きです。

子育ての戦後史

昨日も簡単な出来事を一覧にしましたが、その時代に起きた事件や社会問題と合わせてみていきたいと思います。

1945年からひとまとめに2020年までまとめようと思いましたが、長いので10年づつに分割しました。

なお、古い育児論は主張にエビデンス(科学的、数値的根拠)がないものも多いです。

【前提条件:明治時代はターニングポイント】

調査不足なので詳細は書きませんが。戦後や昭和期に生じた子育ての問題を追及していくと、明治時代に行きつくことが多いです。

明治時代から四民平等となり、学制が始まり、家父長制度が導入され、日本国民の姿は江戸時代と大きく変わります。

四民平等なのに、なぜか初期から女性は差別されていて、選挙権はなく、女性の政治活動は禁止されていました。また、職業差別もあり、女性がつける職業そのものが少なかったと言われます。

明治の女性は「婦人解放運動」を行い、女性の権利拡大に努めますが、その一方で「女性は家事育児をみるもの」とした、政府の考えを支持する女性も増えており、運動はスムースには運びませんでした。

余談ですが、明治期に発行された雑誌「青踏」は、イギリスの婦人運動「blue stockings(→青い靴下)」から名前をとっています。

1945年

第二次世界大戦の終戦。

それまでの「天皇制」、明治期に定めた「学制」を撤回し、GHQ主導による戦後教育が始まります。

戦後の教育についてはこの表が分かりやすいと感じました。

教育の未来にとって真の課題とは何か(藤田英典)

おおまかに言うと、

・「天皇制」=封建制度から、「民主主義」への変革

・平等主義

…の2つの柱があったように思われます。

1970年代には「一億総中流」と言われる時代が訪れましたが、それは、こういった戦後教育の結果(賜物)だったとも言えます。なお、1990年代、バブル崩壊によって「格差社会」へと移行します。

1950年代

どういった出来事が生じたか。こちらのまとめが便利です。

●1950年代流行(出来事)/年代流行

上述したような「民主主義」「平等主義」に加えて、「能力主義」的な教育が主流だったようです。

【娯楽】

1951年(昭和26年) テレビの民間放送がスタート。1953年には本放送に。1952年(昭和27年) 「鉄腕アトム」連載開始。1950年代の漫画は貸本と、子ども向け月刊の児童雑誌が主流でした。

1952年(昭和27年) ラジオ放送で『君の名は』放送開始。大人気に。1953年から映画化もされ、ヒットした。

1954年(昭和29年) 映画「ゴジラ」の第一作が公開。

1955年(昭和30年)『太陽の季節』(石原慎太郎)発表(小説です)。若者(新世代)を赤裸々に描いたとして賛否両論を巻き起こした。単行本は1956年のベストセラー1位。

1955年(昭和30年) この頃から、漫画へのバッシング、親やPTAによる「悪書追放運動」が始まる。

1956年(昭和31年) 『太陽の季節』映画化。ヒット。

1959年(昭和34年) 週刊少年サンデー、マガジンが創刊。1960年代にかけて、マンガ雑誌の出版ラッシュが始まります。

【若者の姿】

『太陽の季節』発表後、若者の中に「太陽族」が現れます。

※太陽族=”石原慎太郎の小説『太陽の季節』にカーッとなった無軌道な若者を指してこう呼んだ。 命名は大宅杜一。石原慎太郎のヘアスタイルをまねた慎太郎刈りにアロハシャツが彼らのトレードマークで、 夏の夜の海岸をうろつく月光族、盛り場で暴力を振るう愚連隊とも重なるところが大きかった。”

戦後昭和史 > 「族」言葉一覧より引用

「太陽族」、「月光族」、「愚連隊」と呼ばれる、いわゆる”不良”の若者(未成年、多くが中流以上の豊かな家庭の高校生男女)が登場したようです。

こちらのブログに「月光族」をレポートした雑誌記事(1957年の「娯楽よみうり」)が掲載されています。”グレさせるのは家庭の冷たさ””ヘマを叱る犯人の母”といった見出しが躍ります。

1957年「月光族ハンランす」無軌道な青春!

1952年(昭和27年)にHONDAの「カブ」、1958年(昭和33年)に同「スーパーカブ」が発売され、人気に。その流れから1959年には、暴走族のルーツとも言われる「カミナリ族」(公道をオートバイで暴走する集団)が現れます。

【社会と経済】

1950~1953年(昭和25~28年) 朝鮮戦争。

1955年(昭和30年) この頃から「高度経済成長」が始まる(~1975年のオイルショックまで)。「三種の神器」と呼ばれる家電(電気冷蔵庫、電気洗濯機、テレビ)が拡販します。

1956年(昭和31年) 「経済白書」に”もはや戦後ではない”との記述。流行語に。「神武景気」とも呼ばれますが、”神武(天皇)以来”=日本が建国以来最高ともいえる好況の時代となりました。

1958年(昭和33年) 東京タワー建立

1959年(昭和34年) 皇太子ご成婚、パレードをテレビ中継

【未成年がかかわる事件】

1954年(昭和29年) 鏡子ちゃん殺人事件(小学校で授業中に女児殺害)

1958年(昭和33年) 小松川女高生殺害(高校屋上で同校生により暴行絞殺)

1959年(昭和34年) 通り魔事件第一号と言われる、「荒川連続自転車通り魔殺傷事件」が発生。

【教育関連の動き】

昭和30年代から、学力の低下が叫ばれるようになり、1958年(昭和33年)に 「小中学校学習指導要領」1960年(昭和35年)に「高等学校学習指導要領」の見直しが図られました。(この辺については1960年代に詳細を書く予定…)

感想と考察

1950年代は好景気で上り調子。経済に勢いがある感じがします。

終戦直後は浮浪児や栄養失調といった言葉が並び、復興の話題が多かったですが、1955年頃から豊かになってきて、今と通じる問題(非行など)が生じ始めたように思います。

昭和は「不良がかっこよかった」時代だと認識してましたが、1950年代からだったとは…。驚きました。

元都知事を務めた石原慎太郎さんの若い頃をよく知りませんでしたが、年長者から「近頃の若いもんは…」的な扱いを受けてたのでしょうか。

ちなみにこの後、1969年に『スパルタ教育』という本を出して教育論を語ります。国会議員や都知事時代の慎太郎さんを、戦争を経験した世代(年長者)や、太陽族だった同世代がどう思っていたのか、気になります。

参考サイト

昭和戦後史

年代流行

ジャパンアーカイブス

少年犯罪データベース

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