31 熱から始まる五大味覚
昔は「塩味(しおあじ)」、もしくは「塩っ気(しおっけ)」と言っていたものが、最近はテレビの調理番組なんかを見てると、みんな「塩味(えんみ)」って言うよね。あれ、いつからそうなったんだろう。誰か言い出しっぺがいるのかな?
基本の味覚というのは「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の5つだそうだ。最後のうま味ってなんだよという気がしないでもないが、まあいい。本来ならそこには「辛味」が入るんじゃないの? とも思うが、辛いのは味ではなく、舌にある痛点への刺激によるものであることくらいは知っている。ともかく、「甘・塩・酸・苦・うま」で、これを基本の「五味」という。
これらの味覚には、人それぞれに好み(優先順位)がある。甘いものが好きな人、酸っぱいものが好きな人、五味には入らないけど辛いものが好きな人もいる。同じく五味には入らない「渋味」を好きな人だって、広い世の中にはいるかもしれない。
自分の中でのこれらの順位を考えるというのは、昔から好きな遊びである。さて、とみさわ昭仁の味覚の順番はどんなものか? 発表します。
1位「熱さ」
2位「塩味」
3位「うま味」
4位「辛味」
5位「苦味」
予想通りだったでしょうか? それとも呆れているでしょうか?
温度は味じゃないよ! と言われるでしょうけれど、ぼくにとって温度は味より重要。ぬるいというだけで駅弁を食べる気がしないし、冷たいというだけで冷やし中華を食べる気がしない。逆に熱さは七難を隠すと昔から言われているように、あんまり美味しくないラーメンでもグラグラに煮立ててやれば、なんとなく美味しく食べられてしまう。そういうもんです。
ところで、何かにつけて温度を上げて食事をするぼくだけれど、意外なところに「冷え」を求めることがある。それが「とんかつ」。揚げたてのとんかつが美味いことに異論はないが、前日の残り物の冷えたとんかつが意外にも好きだったりするのである。その際、ソースをかけたんじゃダメ。冷えたとんかつにかける調味料は塩に限る。冷蔵庫で冷え冷えになって脂身部分が白く固まってるようなとんかつに塩を振ってかじる。これが最高に美味い。なんだろね? この嗜好だけは自分でもよくわからない。
好きな味覚の第1位が「熱さ」というのは、まあ半分本気、半分冗談なのでスルーしてもらってかまわない。本当の1位は塩味なわけだけど、考えてみれば、ぼくは昔から割となんでも塩を振って食べてきた。揚げ物なんてだいたいいつも塩を振って食う。ステーキも店の自慢の特製ソースよりは、できれば塩胡椒で食べたい。
若い頃から痩せっぽちで、食が細くて、栄養失調だったり貧血だったりの人生を送ってきたから、血圧のことなんて意識してこなかった。実際、会社員時代に健康診断を受けても、血圧が高かった試しがない。
ところが、昨年やけに頭が締め付けられるような感覚があったので血圧を測ったら上が200もあった。こりゃヤバい。あわてて地元の総合病院に行ってMRIを撮ってもらったが、幸い悪い兆候は見られなかったので、単なる高血圧だろうということになった。
……おれが高血圧?
まあ考えてみればもう老人だし、塩分過多の食事ばかり摂ってるし、毎日お酒も飲んでいる。そりゃあ高血圧にもなろうってものさ。
とりあえずうすくち醤油を買ってきた。減塩生活の始まりである。
※写真はほていちゃん名物ワカメのかき揚げ。これも塩で食うと美味い。