【映画の話】『THE BATMAN』に、私が解釈が違うと思った理由

もうそろそろあちこちで公開が終わっているだろうし、配信も始まっているようだから、公開日とその後1回観に行った人間として、少し書いておきたい。
そして、各映画サイト等で思った以上に高評価を得ておりなかなか衝撃だったので、「がっかりー……」と思った理由を書き残しておきたい。

まずは良かったと感じたところから。

「プレイボーイ」設定が消えた。
この「プレイボーイ」設定は、いかにも「アメコミ」という感じで、活かせそうで活かせない設定だった。
これまでのバットマンは、その設定を踏襲していたが、今回はなし。
そこはとても良かったと思う。

また、「リドラー」も良かった。
贅沢をいうともっと個性的でも良かったが、どんなに個性的にしたとしても「ジム・キャリー」には勝てない。
だったら個性的な部分を外してしまう方がいい。

画面の暗さも良かったと思う。
ずっと雨が降っている画面から、「ゴッサム・シティ」の陰鬱さがにじみ出ていた。

ロバート・パティンソンのマスク姿は、おそらく今までで一番似合っていた。
マスクから出ている部分が重要なんだよ。
ジョージ・クルーニーはダメだった。
マスクをかぶっても顔の下半分でジョージ・クルーニーなのがバレバレだった。

良かったと思って思い出せるのはこのくらいだろうか。

次に本題の、「あーあ……」と思ったところ。

本作には、ブルース・ウェインがバットマンになってから「2年」という設定があるらしい。
「青年ブルースが、バットマンになろうとしていく姿」と、公式でもいわれているが、両親を殺害されて20年経っているという。
ブルースの両親が亡くなったのは、明確な数字は出ていないものの、8〜10歳だったといわれている。
そこから20年とすると、現在28歳〜30歳ということだ。
立派なアラサーである。

主演のロバート・パティンソンがインタビューで、
「また、心の中で両親を死なせてしまった10歳の少年の自分を乗り越えていないなら……」
と語っており、『THE BATMAN』のブルースは30歳、バットマンになったのは28歳のときだったということがわかる。

実際、バットマンは30代中盤〜40代の設定といわれているのでこの設定は間違っていないが、アラサーにしては些か情緒が不安定すぎやしないか。

バットマンがバットマンになるまでというのは、描くのが非常に難しい。
個人的に好きなノーラン版も、「ビギンズ」は酷いものだった。

ブルースは幼少期から「コウモリ」にトラウマがある。
両親と観に行った舞台にコウモリが出てきたために退場、そこで強盗?に襲われて目の前で両親を殺害されたことで、癒えない心の傷を負うことになるというのが、大まかなブルースの設定である。

そこからバットマンになるまでがごっそりない(ご都合)なので、ある意味美味しい部分ではあるが、そこの描き方は、どの作品を観ても今一つピンとこないのだ。
いつか、「これだ!!」というバットマンに出会いたいものである。

次に、ブルースとアルフレッドとの関係である。
これが私にとって今作一番の「解釈違い」である。

今作のオリジナリティの部分ではあるが、ブルースが
「わたくし、不幸でござーい」
という顔をしているのが本当に解せなかった。

幼い頃に大きな不幸に見舞われたブルースだが、「裕福」という意味ではゴッサム・シティでは圧倒的勝ち組であり、そのことを本人も知っている。
その中で20年も生きてきたのだ。
だからこそ、表の顔は余裕に溢れ、心の奥底では大きな傷を抱えているというのが魅力なのだ。

そして、その「恵まれている」ことを20年かけて教えたのが執事のアルフレッドであると、私は考えている。

なので、アルフレッドからやや口うるさくいわれたブルースが、
「やめてくれ、お前は私の父ではない」
と言ったのは、究極の悪手だと思っている。

それを言っていいのは、アルフレッドだけ。
つい父親を相手にしているように甘えてしまうブルースを、主人と執事である(例えば「あなたは私の息子ではない」等)と突き放すのはアルフレッドであって、主人から突き放しては、関係が崩れてしまう。

また、描くのが難しいと考える「ブルースがバットマンになるまで」を、「アルフレッドが仕込んだ」という一言で片付けてしまったのも、良くない。
そこが一番オリジナリティが出せるのに捨ててしまったとは。

このアルフレッドの描き方が良くなかったことが、個人的にこの作品の評価があげられない大きな部分でもある。

作品自体はどんでん返しが多々ある。
評価している方たちの中には、この、どんでん返しにつぐどんでん返しを評価している方も多くいるが、個人的には緩急に欠けていたと思っている。
人の感情が追えないのも、約3時間という上映時間を考えると、なかなかにキツイ。

不条理が蔓延るゴッサム・シティだとしても、そこに生きる人々の立場によって様々な感情や、正義があって良いはずなのに、徹底的にそこを排除したのかと思うほど、人の感情がみえてこない。
そして、謎に上半身裸で謎解きをするブルース……。

なぜ脱いだ。
サービスショットなのか。

絵コンテ(監督がどう撮りたいか)が先にあったのではと疑いたくなるレベルで妙なシーンがあった。

そのほかにも、ジェームズ・ゴードンが黒人になる、市長選の本命候補が「黒人」の「女性」など、昨今のハリウッドの政治的な臭いをやや感じるが、そこは作品の邪魔はしていないと思った。

日本人として気になったのは、最後のシーン。
3月11日に公開日を設定した日本の配給会社には、「本気か?」と聞きたい。
たかが日付ではあるが、わざわざこの日に、「津波を連想させるようなシーン」がある作品を公開しなくても良かったのでは。
1週間前に公開しても、1週間後でも問題なかったのでは。
ちゃんと観て公開日決めた?
そこをとても疑ってしまった。

最後に。
キャットウーマンの衣装がダサすぎる。
なんだあれは。
ほつれたニットの目出し帽のようで、せっかくのキャットウーマンがとても残念だった。

絵は素晴らしいが、設定にところどころの緩さを感じた作品だった。
3部作だという噂なので、後の2部作で詰めてくるのだろうか。

バットマン好きとして、ある意味楽しみに待ちたい。

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