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三人の二代目

信長の野望というゲームがある。
自分が戦国武将の誰かになって、全国統一を成し遂げるゲーム。
登場人物(大名、武将、姫君云々…)が、何と1000人以上!!
しかも人物ごとに、ひとりひとりの能力値が数値化され、得意分野なども設定されている。

ワタクシ、このゲームにハマったことがある。
ただ恥ずかしながら中学レベルの日本史の知識しか無い。
めちゃくちゃ有名な人物は知っているものの、ほとんどが知らない人ばかり。
○○は確か政治が得意な人だったな・・・くらいのノリで仕事を割り振っていた気がする。
このゲームをやったことで、高校日本史の教科書ですら到底出てこないであろう人物も数人知ることが出来た。


で、ここで本題。
今回の三人の二代目。
・上杉景勝
・毛利輝元
・宇喜多秀家
がタイトルになっている三人の二代目。
上・下巻に分かれている。



【上巻】
上杉・毛利・宇喜多の三氏が織田信長に振り回される

【下巻】
上杉・毛利・宇喜多の三氏が豊臣秀吉、徳川家康に振り回される

力がある者に対し、力がない者たちがどう振る舞いどう立ち向かっていくかというのが上下巻に共通する内容。
二代目で、偉大なる先代から受け継がれたものがあるものの、だからこそ逆に大胆な改革もできず、その結果新興の織田・豊臣・徳川に負けてしまうという末路をたどる。

本書、登場人物が多い。
ただ新聞連載だったこともあるのか、話の舞台がコロコロ変わるもののその都度リード文が挿入されるため話にも入っていきやすい。
また、地名も多い。
上下巻最初にある地図を見たり、地図帳を広げて地形の観察をしたり。
岡山城と堀の位置関係を調べるためにグーグルマップを開いてみたり。
総じていえば、細かいことを気にしだすときりがないが、よほどめんどくさい場合は主要人物の動向を追っていくだけでも十分に楽しめる内容。



ワタクシたちは歴史を知っているだけに、その結果のみを知ろうとする傾向にある。だが本作では、歴史的な事実のみならず、そこに行き着く過程に重点を置きつつ、それに向かう中での葛藤が克明に書かれている。
また、当時の仕組みなどについても今日の制度を例に挙げつつ触れていて面白い。

もしこれがこうだったら…と一つの事象のみが変わったくらいでは歴史は変わらない。
一つの出来事は、たくさんの事象が相まって起こるべくして起こっている。いわば必然である。歴史に「もしも」はないとはこのことか。
出来事の結果を知っているにもかかわらず、大きな出来事(本能寺の変、朝鮮出兵、関ヶ原の戦いなど)が近づくにつれドキドキするのはなぜなんだろう。
これも筆者の筆致のなせる技なのか。



歴史を俯瞰できる後の世の者にとってはわかりやすい流れでも、歴史の中で生きていた人たちにとっては簡単ではない。
いつの時代、どこの場所ででも、それぞれの人々にはそれぞれの問題がある。
ここは歴史の転換点だと気付ける人。
世の中の変化や技術の進歩を直ちに認めることが出来る人。
こういう人たちが歴史に名を残していくんだなと。



というわけで、日本史が好きな人、信長の野望にハマったことがある人には、三人の二代目、ぜひとも読んでいただきたい。
上下巻ともに450ページくらいある。
正直、サクサク読めるってわけではない。
でも、読みだしたら止まらない。めっちゃ面白い。

・名前だけ知っていた人物たちの関係性が明らかになったこと
・当時の仕組みを詳しく知れたこと
・豆知識が増えたこと
(絵図の効用・商品先物取引・住友の祖・千利休の話など)
これらのことも、本書を読んでよかったと思える理由です。



#三人の二代目 #読書感想文 #堺屋太一

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