まんぼう

東京の某所に住むオッサン。くだらない小説をダラダラと書いてます。 「創作の残骸置き場」…

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東京の某所に住むオッサン。くだらない小説をダラダラと書いてます。 「創作の残骸置き場」http://manbou.blog.jp/ 落語好きでブログを書いています 「らくご はじめのブログ」http://hajime-17.blog.jp/

最近の記事

師匠と弟子と彼女と 13(終)

 あれから一年後、明日香さんは真打に昇進した。同期の仲間五人と一緒だったが、既にマスコミでは話題になり始めていた。  あの日、日村さんが言っていたように、華があって、かって劇団に所属していた程の美観なので周りが放って置かなかったのだ。昇進すると直ぐに人気が爆発した。連日芸能マスコミが姉さんの後を追っかけた。この点では日村さんの言っていた事は間違ってはいなかった。でも、誰にも言えないが、一つだけ俺は知っている。師匠の蔵之介師もウチの師匠も知らない、俺にだけ明日香姉さんが教えてく

    • 師匠と弟子と彼女と 12

       五月上席、初日はいい天気だった。木戸が開けられると、並んでいた客がどんどん客席に入って来る。一階はたちまち満席になった。すぐに二階席も一杯になった。 「はあ~本当に良く入りましたね」  偶然にこの席の前座となった小ふなが袖から見ながら呟く。二つ目ながらこの席に出る事になった俺は既に着物に着替えていた。寄席で二つ目の出番は浅いと相場は決まっている。俺は二番目の出番だった。客席を温めるのが目的みたいなものだ。  トリは師匠遊蔵で、トリの次に大事な仲入りは弟弟子の蔵之介師で食いつ

      • 師匠と弟子と彼女と 11

         わたしの名前は、和久井梨奈。大学の一年生です。この春に大学に入ったばかり。今日は皆さんにわたしの彼氏と言っても良い高梨信春こと小金亭鮎太郎の事を少し話してみようと思います。  それは、もう六年以上前のことでした。わたしの父は小金亭遊蔵と言って少しは名の売れた噺家なんです。寄席や格式の高い落語会などにも年中出ていて、CDやDVDなんかも出しています。でも、それで売れっ子でいい暮らしをしてるかと言うとそうでも無く、恐らく同年代のサラリーマンとそう変わらないと思います。寄席のワリ

        • 師匠と弟子と彼女と 10

           梨奈ちゃんはゴミ袋を俺に出させ、それを広げさせると。彼女の目から見て要らなそうなものを次から次へと放り込み始めた。この時俺は女将さんが、かって言っていた言葉を思い出した。 『ねえ、あゆ。あの子が掃除をするって言う時は気をつけなよ。あの子の掃除は単に要らないと思う物を捨てるだけだからね。一見綺麗になったように見えるけど、大事な物まで捨てられてしまうからね』  そうだった。だから女将さんは、極力梨奈ちゃんには自分の部屋以外は掃除させなかった。尤も師匠の家の八割は弟子の俺が掃除を

        師匠と弟子と彼女と 13(終)

          師匠と弟子と彼女と 9

           妹は梨奈ちゃんに挨拶をすると出て行った。その時家の奥から母の声がした。 「信春、帰ったの誰か一緒なの?」  その声と一緒に母が家の奥の方からエプロンで手を拭きながら出て来た。その姿を見て梨奈ちゃんは 「わたし、信春さんとお付き合いをさせて頂いている和久井梨奈と申します」  梨奈ちゃんがそう言って頭を下げると、母は 「あら、こんな格好でごめんなさいね。もう、この子何も言わないからこんな格好で……和久井さん?」 「はい」  頭を上げた梨奈ちゃんの顔を母はしっかりと見ると 「もし

          師匠と弟子と彼女と 9

          師匠と弟子と彼女と 8

           四月になり梨奈ちゃんも大学に通い出した。俺は神田にある二つ目専用の小屋「連雀亭」にここの所出演している。十一時半から始まる「ワンコイン寄席」だ。あまり収入にはならないが、お客の前で一席出来るのは得難いものなのだ。  その日、出番が終わり「ワンコイン寄席」が終わって外に出た時だった。LINEの着信音が鳴った。相手は梨奈ちゃんだった。俺と梨奈ちゃんはLINEを交換してこの所これで連絡をしている。 『今日逢えるかな?』  それに可愛いスタンプが添えられていた。 『仕事終わったから

          師匠と弟子と彼女と 8

          師匠と弟子と彼女と 7

           世間では春休みになったので、イベント等が結構あり、俺達みたいな売れない噺家向けの仕事もボツボツ入っていた。今日は郊外の遊園地での仕事で、同じ一門の小金亭明日香と言う師匠の弟弟子のお弟子さんと一緒だ。芸の上では従兄弟になる。明日香と言う名前から判るように、兄さんではなく姉さんだ。だが芸歴は俺よりも遙かに長く、あと二年もすれば真打の声が掛かるだろう。  その遊園地で開かれるお笑いのイベントで一席語るのだ。噺家は俺と姉さんだけで他は漫才とかコントのコンビが出る。芸歴から姉さんがト

          師匠と弟子と彼女と 7

          師匠と弟子と彼女と 6

           津軽三味線独特の骨太い旋律が会場を包んでいた。俺はその心地良いリズムに酔いしれていた。それは師匠も同じで、高座の袖でパイプ椅子に腰掛け腕を組んで目を瞑って聴いていた。世話役の青木さんが俺の耳元で 「師匠、結構好きなんですよね。毎回膝はこの二人にお願いしていますから」  そう言って目を細めた。  そうなのだ、昨年まで俺は前座として青森の師匠の独演会には同行していた。高座に登る事は無かったがゲストの師匠や今演奏してくれている津軽三味線の二人の師匠のバチさばきも何度も見ていた。

          師匠と弟子と彼女と 6

          マスコミが報道しない荒川決壊

          最近荒川の決壊のことをマスコミが言い出したのですが、最近ほとんど触れられない事があります。 個人的にですが役所の建物の管理運営に関わっているのですが、その管理者に対して色々な講習会があります。その中で危機管理があるのです。  中でも具体的なのは荒川が決壊した時のシュミレーションです。色々とマスコミでは言われていますが、講習会ではより具体的な内容になっています。それは……。 荒川が決壊する時にですが、実は決壊する場所は既に判明しています。それは荒川に架かる京成上野線の荒川橋梁

          マスコミが報道しない荒川決壊

          師匠と弟子と彼女と 5

           口上が終わり緞帳が降りて行く。完全に下まで降りても俺の体は震えたままだった。そんな様子を見て師匠が 「さっさと立たねえとお茶子さんが困ってるだろう」  そう言って高座を降りて舞台の袖に下がって行った。そうなのだ。この後俺は一席やらなければならない。  思い直して立ち上がり師匠の後を追った。舞台の袖で袴を脱いて黒紋付きの着流しになる。お茶子さんが高座の座布団を一枚にして、裏を返した。そして袖のめくりを「口上」から一枚めくった。そこには黒々とした寄席文字で「鮎太郎」と書かれてあ

          師匠と弟子と彼女と 5

          師匠と弟子と彼女と 4

           新幹線は宇都宮を過ぎていた。俺と師匠は車内販売の弁当を買ってそれを食べようとして席のテーブルを開いた時だった。 「あ、そう。会の冒頭の挨拶だがな、口上にしようと会長が言ってくれてな、俺とお前で並んで口上をすることになっているからな。着物は色紋付か? 袴は持って来ているだろう?」  え……挨拶って今までは師匠だけだったじゃない……何で今回だけ口上なんだろう。俺は師匠に思わず問い正してしまった。 「あの、袴は師匠の言いつけで旅に出る時はいつも持っていますし、今回は親子会だと言う

          師匠と弟子と彼女と 4

          師匠と弟子と彼女と 3

           兎に角週末まで幾日も無かった。俺は師匠に当日の演目を尋ねた。すると 「まず俺が挨拶をして、お前が開口一番で何か演じる。それから俺が出て「崇徳院」をやる。そして仲入りになる。膝には地元の津軽三味線の名手が出てくれる。それから俺がトリで「百年目」を演じて終わりになる訳だ。だからお前はこの二つに被らないように演目を選べ。選べないなら俺が指定するが」  冗談じゃない。師匠に決められてたまるかと焦りながら演目を考える。 「時間はどれぐらいですか?」 「そうだな、十九時開演で二十一時終

          師匠と弟子と彼女と 3

          師匠と弟子と彼女と 2

           自分の部屋で、ベッドに寝転がりながら仕事の予定を書いた手帳を取り出して確認をする。やはり今週の末は何も入っていなかった。同期の二つ目との落語会は今月は終わってしまっているので来月までは無い。昨日電話があってのでネタだしは済ませていた。来月四月の演題は先日に師匠から「上がり」を貰った「佃祭」だ。本当は真夏の噺だが、もう春なので良かろうと思ったのだ。仲間の三遊亭圓才なんかは寄席で顔を合わせた時に 「へえ~結構大根多(ねた)やるんだね」  そんな事を言って驚いていたが自分だって

          師匠と弟子と彼女と 2

          師匠と弟子と彼女と 1

           以前書いた作品ですが、タイトルを微妙に変えました。内容も少し変えています。長い作品ですので暫く連載してみょうと思います。内容は落語界に身を置く若者の青春恋愛小説です。 「バカヤローてめえなんざ噺家辞めちまえ!」  師匠の小言と同時に扇子が俺の額目掛けて飛んで来る。扇子は思い切り俺の額にぶつかった。 「今日はもう辞めだ。もっと稽古して、ちったぁマシになったら見てやる。もう寄席に行く時間だ」  師匠はそう言って壁の時計を見ると大きな声で 「小ふな!」  と弟弟子を呼んだ。 「

          師匠と弟子と彼女と 1

          記憶の彼方に

           今から遙か未来。人類は輝かしい繁栄を享受していた。爆発的な人口の増大も未知のウイルスの登場などがあり、少しは抑えられたが、それでは追いつかず、地球の軌道上に衛星型の繁殖コロニーを打ち上げており、そこに移住する喪のも多かった。コロニーは全部で12ありそれぞれが月の名前で呼ばれていた。つまり5番目ならMayという訳である。  殆どの未知のウイルスは根絶したと思われたが、新しいウイルスは宇宙空間から持たらされた。つまり繁殖コロニーで発生したのだった。  そのウイルスに感染すると脳

          記憶の彼方に

          今日から東京都の感染防止協力金の2回目が申請受付だけど、第1回をネットで申請した人以外はネット申請が出来ない! これおかしくない? 簡素化とか言いながら結局は手の込んだ方法で申請するしかないという……。自分は最初は都税事務所に持ち込んだから今回は郵送にした。どうなるか楽しみ!

          今日から東京都の感染防止協力金の2回目が申請受付だけど、第1回をネットで申請した人以外はネット申請が出来ない! これおかしくない? 簡素化とか言いながら結局は手の込んだ方法で申請するしかないという……。自分は最初は都税事務所に持ち込んだから今回は郵送にした。どうなるか楽しみ!