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私が、暮らしが、好きになる買い物

今年もいろんな物を買ったけれど、少し前に買った、ある卵のことを書いて締めたいと思う。

全部で20個。かわいらしいケースが、しっかりとダンボールで梱包されて届いた卵は、ただの卵ではない。岡山県の蒜山で禾(kokumono)という名前で活動されているご夫婦の、近藤温子さんがヒヨコから大事に育てたニワトリが産んだ卵だ。私は直接岡山には行かれていないけれど、ずっとこのヒヨコたちの様子をウォッチしてきた。だから彼らが産んだ卵、それだけでとても感慨深い。

まず、事の経緯を説明すると、私と近藤さんご夫婦は昨年のちょうど今頃に初めてお会いした。お互いにTwitterでフォローし合う仲ではあったものの、直接接点がないままだった私たちが出会えたのは、私が作っているインタビューギフトサービス『このひより』に、近藤さんが依頼をしてくださったことが始まり。

本当は、岡山まで伺いたい!と鼻息を荒くしていたのだけれど、いろいろな事情があって、近藤さんたちが年末に帰省しているタイミングでお会いすることになった。

当時は1歳半だった息子くんを連れてきてくれた亮一さんと温子さんは、初対面なのになんだか懐かしさを覚えるくらい気が合う予感が勝手にして、「あ、この人たち、好きだ!」と思った。(この直感、大人になればなるほど当たると自負している)

いろいろインタビューでお話を伺わせてもらうなかで、温子さんが「来年は、ニワトリを飼うんです。今いろいろ準備中で……」と話してくれたのが、とても印象に残っていた。温子さん自身がすごく楽しみにしているのが伝わってきたし、同世代の子を持つ同じ"母”としても、その挑戦を応援したい!という想いもあったのかもしれない。

その後も温子さんや亮一さんのTwitterで、「小屋が建ちました!」とか、「ヒヨコが来ました!」とか「初めての卵が採れました!」と見るたびに、おお…いよいよ…!!なんて、勝手にほくほく楽しみにしていた。

それと同時に、自分が普段食べている卵を育ててくれている人たちの苦労や手間や状況を想像する機会になったのも、ありがたいことだった。スーパーに並んでいる何百という卵だって、ヒヨコから育てられたニワトリが1つ1つ産んで、それを毎朝採って、磨いて、詰める人がいるんだから、すごいことだ。

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前説明が長くなったが、そんな経緯で勝手に見守っていた近藤さんちの卵が、我が家にやってきた。スーパーで売っているのより、ちょびっと小ぶりで、手に取ったとき、この卵が岡山からやってきた道のりを想像して、感動すらした、卵で。

そこには、近藤さんらしい言葉が書かれたお手紙も入っていて、いろんな卵の食べ方を教えてくれていた。ゆで卵は、少し時間が経った卵のほうがいいんだって、初めて知った。

そこからは、もうずっと、クックパッドや白ごはんドットコムで「卵」と検索しまくる日々。大好物のTKG(卵かけご飯)は、届いたその日に!きれいな黄身がくずれて、つやっとご飯にからんで、なめらかに喉をとおっていく。ごくり。(書きながらまた食べたくなっちゃった)

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結局、いろんなものを作った。卵焼き、お味噌汁、ゆで卵、炒めもの、煮玉子、なんとプリンまで作った(ものすごい濃厚な黄色でびっくりした!)のだから、この卵をいかに美味しく食べれるか?への執着がすごい。

おいしかったのはもちろんのこと、冷蔵庫を開けるたび、卵をパリッと割るたび、口に運ぶたび、「あの近藤さんが育てたヒヨコたちの卵なんだなあ……すごいことだなあ」と頭のなかに浮かぶのが、とてもよかった。

私は、この"体験”がめちゃくちゃ好きだ。自分の暮らしのなかで、好きな人たちの顔が浮かんで「あの人、元気かな」と想いを馳せる瞬間があるのは、いいものだなあと思う。

こういう体験を増やしたくて、私は作り手さんのファンになった物を買うし、ものづくりの背景を伝える文章を書いていくんだろう。

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振り返ると、近藤さん以外にも、「この人の物が買いたい!」という理由で購入したものが年々増えていっているかもしれない。自分が取材した方々の商品は、手が届く限りほとんど買ってしまう。

昔は、どこかで作っている人がいることすら意識していなかった。安いとか、流行っているとか、そういう理由で買ってきた。でも、好きな人が作っているものにお金を出して大切にいただく方が、ずっと幸福度が高いことを知ってから、とても買い物が楽しい。

私自身や、自分の暮らしがすごく好きになる。そんな買い物を、来年からも続けていきたいと思う。



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