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達人紹介#05|陶芸の達人 前田直紀さん

MANAVIVA!で体験を提供する個性豊かな達人たちを紹介する「達人紹介」。
第5回目の達人は、静岡市人宿町に“前田直紀陶芸教室”というアトリエ・陶芸教室を構え、陶芸アーティスト、セラミックコミュニケーター(粘土を通じてコミュニケーションを促していく活動家)としても活躍している前田直紀(まえだなおき)さんをご紹介します。

❚前田直紀陶芸教室ってこんなところ

静岡駅から歩いて約10分、街中のおしゃれエリアとして知られる人宿町に、”前田直紀陶芸教室”はあります。
青と白のコントラストが素敵な外観、ガラス張りの窓から、思わず中を覗いてみたくなるアトリエです。

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前田さんはこの教室で、陶芸のレクチャーをしたり、自身の作品を販売したりしています。子どもから大人まで、様々な年代の生徒さんを教えているんだそう。

前田さんが子どもたちに陶芸のレクチャーをする様子を見学させてもらうと、子どもたちは目を輝かせながら、イキイキと器づくりに没頭していました。
最初は粘土を上手に扱えない子どもたちも、前田さんのレクチャーを受けて徐々に粘土と向き合えるようになり、終わる頃には個性豊かな作品を完成させています。

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子どもたちの作品は、まるでアーティストさんが作ったかのような、繊細な仕上がりです。
前田さんのレクチャー、すごい…!

さて、そんな陶芸の達人である前田さんが、陶芸と出会い、陶芸アーティスト、そしてセラミックコミュニケーターとして活動するまでのお話を伺ってみました。

❚ 前田さんと陶芸の出会い

前田さんが陶芸と出会ったのは、小学校4年生の頃。地元の公民館で陶芸講座を受けたことがきっかけでした。その講座の先生が、粘土を上手に扱い、思い思いに形を作り上げていく様子を見て、「すごい、魔法みたい!自分もこんなふうにやってみたい!」と思った前田さん。また、その先生が「とても上手、君はセンスがあるね」と声をかけてくれたことがとても嬉しく新鮮で、しばらく講座に通ったそうです。

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❚ 恩師たちと、つくることに没頭した日々

その後、再び陶芸に取り組むことになったのは大学生の頃。
大阪にある大学の工学部環境デザイン学科に入り、クラフトコースを専攻、陶芸を学びました。

大学で学んだことについて、「普段なかなか会うことができない著名なアーティストさんの講義があって、学ぶのにとてもいい環境でした。僕は世界的に有名な星野暁先生の授業を受けさせてもらいましたが、実は当時、僕は陶芸の成績があまり良くなかったんですよ。なので、その授業の単位を落としてしまって、もう一度授業を受けることになったんです。改めてしっかりと授業を受けてみると、とても哲学的な授業で、先生が経験した世界中の話が聞けるし、内容もとても面白くって。夢中で陶芸の授業を受けていましたね。」と話す前田さん。
その先生との出会いが、前田さんがさらに陶芸へ打ち込むきっかけだったのかもしれません。

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大学卒業後は、器を扱う商社に入社し、百貨店の食器売り場をプロデュースする仕事などに携わりましたが、2年程で退職。
その後、京都宇治の個人作家である野嶋氏の窯場で1年半ほど修業をした前田さん。師匠のもとで、飽くことなく土と向き合いながら、制作する日々を過ごしました。この修業で、焼き物の楽しさと厳しさを身をもって学んだと言います。

❚ 陶芸家としての人生を問い、大きな決断をする

修業後は、地元である静岡県藤枝市に戻り、個人で活動を始めた前田さん。陶芸講師としての仕事をいくつか掛け持ちしながら、合間に自分の作品づくりをしたりと、忙しい毎日を送っていました。

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そんな慌ただしい日々の中、ふと、前田さんは自分の陶芸家としての人生に疑問を持ち始めます。

「自分はこの生活を一生続けるのだろうか・・・」
「もっと広い世界を見てみたい!」


そう思った前田さんは、仕事をすべて辞めて、海外での制作活動(アーティストインレジデンス)をすることを決断。南フランスにあるピカソの村で約3カ月間ほどの制作活動に参加します。その後、パリで個展を経験し一時帰国。
その後 再び渡航し、フィンランドで約1か月間の制作活動を行いました。

海外で学んだことについて、前田さんは、「南フランスに行って驚いたのは、ピカソ村はヨーロッパで有名な施設であったにも関わらず、窯やろくろの設備が充実しているとは言えない環境だったことです。でもその限られた環境の中で、雰囲気や感性を整える術を学べました。また、フィンランドの制作活動では、世界的に注目される次世代の若いアーティストが集まるプロジェクトだったので、様々な国の同じような世代のアーティストと制作活動をしました。みんないろんな国で活動しているので、情報量が凄いんですよね。刺激になったし、面白かった。」と話してくださいました。

❚ コミュニケーターとして、粘土の楽しさを共有したい

海外での活動を終え、帰国した前田さん。
現在は、藤枝市陶芸センターの館長を務めながら、自身の教室を構え、陶芸家そして”セラミックコミュニケーター”(粘土を通じてコミュニケーションを促していく活動家)として、活躍されています。

また、MANAVIVA!でも、セラミックコミュニケーターとして「五感はたらく陶芸アトリエ」という2つプログラムを実施し、粘土を使いコミュニケーションをしながら、子どもたちの五感を引き出す陶芸体験をしています。

体験を通じて、子どもたちに伝えたいことを聞いてみると、
「子どもたちには”教える”というより、子どもから”知りたい”という気持ちでやっています。子どもは純粋な存在ですし、あまり訓練を受けていないので、手の動きもすごく素直です。そんな子どもたちが、”何か”に気づいた瞬間って、よく見ているとわかるので、とても面白いです。赤ちゃんが立つ瞬間を見たような、そんな感じです。その貴重な瞬間に立ち会えることって、なかなか無いと思います。」

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最後に、今後やってみたいことについて、前田さんは、
「セラミックコミュニケーターとしては、”粘土でプロレス”みたいなことを、子ども大人も含めてみんなでやってみたいです(笑)ひたすら造形した後に、粘土でどろんこになりながら遊ぶ、みたいな感じで。そういった、粘土を通じてコミュニケーションをとるような面白いことを、たくさん作り続けていきたいなと思います。一方で、自身の作品づくりをするための、自分だけの時間もちゃんと大切にしたい。」と話してくださいました。

粘土の楽しさを共有すること
そして、粘土を通じて自分と向き合うこと。

その両方を大切にしながら、陶芸家として、セラミックコミュニケーターとして、今後も前田さんは歩みを止めません。


(撮影・文/辻 芹華)

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