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「走れメロス」(『文豪とアルケミスト』より)

忙しい先生のための作品紹介。第13弾は…

アニメ『文豪とアルケミスト』第1話「走れメロス」(テレビ東京ほか 2020)
対応する教材    『走れメロス』
放送時間      24’15”
原作・史実の忠実度 ★★☆☆☆
読みやすさ     ★★★★☆
図・絵の多さ    ★★★★★
レベル       ★★☆☆☆

作品内容

 文豪転生シミュレーションゲームのアニメ化作品。文豪たちには、名作の世界の中で筋書きを変えて作品を消そうとする”侵蝕者”から正しい物語を取り返す、というミッションが課されています。

 妹の結婚式から抜け出したメロスは、オリジナルキャラクターである”謎の男”に助けられながらも順調に『走れメロス』をなぞり、無事日没までに王のもとへと辿り着きますが……。原作をほとんどそのまま映像化した前半はこの物語の入り口であり、後半からがこのアニメ本編の幕開けです。

 第1話のため、若干アニメの展開に関する説明的要素が多いと感じるかもしれません。一話の中で完結する伏線もあるので第1話だけ見るのでもいいですし、第2話以降の有名作品にも興味が持つこともできるかと思います。

おすすめポイント「アニメで見る 太宰とメロスの信頼と裏切り」

 原作を知ってればこそ、”謎の男”が誰なのかを予想したり、原作への軌道修正をハラハラしながら見たりと、存分に楽しむことができるのではないでしょうか。

 文豪たちのいる世界と彼らの作品の中の世界との境目が曖昧で、複雑ではありますが、後半で色々な辻褄が合ったときに「なるほど、そういうことだったのか」と胸に落ちます。

 余談ですが、「走れ、メロス!」という題名がセリフとして出てきたり、川を渡るシーンでは”謎の男”の持つ飛び道具「蜘蛛の糸」に助けられたり、というちょっとしたアクセントも遊び心があって文学作品に親しみを感じるポイントです。

 アニメ内のメロスは 、本当に「メロスは激怒した」という形容がぴったりの態度です。原文の引用も多く、「市を暴君の手から救うのだ」というセリフは、日常では甚だ芝居がかっていると感じてしまうでしょうが、なぜか違和感がありません。

 また、この物語の主題は「信頼と裏切り」だとはっきりと述べられており、壊された話を元に戻すミッションを果たすためには作品の中核を理解していなければいけない、といった姿勢が見られます。

 さらに、太宰の人間関係にも触れられています。芥川龍之介を敬愛し、芥川賞の選考委員であった師・佐藤春夫に入賞を懇願した、という逸話が、アニメのストーリーの鍵となっています。4メートルにもなる手紙で直訴したにも関わらず候補にも登らなかったことで、師に裏切られたと感じるのも無理はありません。太宰自身の負の感情とメロスの主題がうまく絡められています。

授業で使うとしたら

 先にも紹介したように、原作のストーリーをなぞっているのは前半部分(8’30”頃まで)のみです。川を渡る場面、盗賊に襲われる場面など、簡素化されていたり、メロスが走るのに乗り気じゃないなど脚色されていたりする部分もありますが、大筋をおさえるのには十分ではないでしょうか。

 本格的に用いることは難しいでしょうが、このように大筋をおさえ、読解の導入に用いるのにおすすめです。

https://youtu.be/BqxVg8hR2Y4

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