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少女マンガ版百人一首

 今日から記事執筆者の備忘録も兼ねて、「もし学校の国語の授業に使うなら」という観点で、書籍の感想・紹介を行います。それぞれの本の「原作・史実の忠実度」、「読みやすさ」、「図・絵の多さ」、「レベル」については、星5つで評価しています。「レベル」は、学習の導入から学習後のどの段階が適しているかを表しています。

杉田圭『超訳百人一首 うた恋。』(2010年、KADOKAWA)
対応する教材    『百人一首』
既刊        4巻(2021/3/1時点)
原作・史実の忠実度 ★★☆☆☆
読みやすさ     ★★★★★
図・絵の多さ    ★★★★★
レベル       ★☆☆☆☆

作品内容

 『百人一首』の恋の歌を取り上げて、その歌が詠まれた背景をマンガにした一冊。和歌にまつわるストーリーを描いたマンガ、マンガの登場人物の小話を取り上げたショートショート、『百人一首』全首の超訳で構成されています。また、マンガの後には【ていかメモ】がついており、「後朝の文」や「漢字とひらがな」など、古典常識の簡単な説明も掲載されています。『百人一首』を全く知らない人でも読みやすく、古典に興味を持つための導入としてオススメです。

おすすめポイント


 個人的に一番好きなのは、50番「君がため をしからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな」のマンガ。この歌を藤原義孝が詠むに至った経緯を、彼の妻、源保光の娘との恋物語として描いた章です。「あなたのためならば惜しくはないと思っていた命までも、あなたに会えた今では、長くあってほしいと思うようになってしまった」という和歌が、21歳の若さでなくなった義孝の恋と共に、美しく儚く描かれています。
 ただ、ここで「原作・史実の忠実度」を星2にしている点を、特筆しなければなりません。義孝の章は、儚い命を満開に咲かせる系ストーリー好きとしては最高のマンガだと思いますが、読み手の心を動かす場面が、史実に完全に忠実というわけではありません。つまり、タイトル通り百人一首の物語を新たな解釈をした「超訳」なのです。
もちろん、超訳であることが悪いわけではありません。むしろ、個人で読むのであれば、古典を難しく考えずに楽しめて、登場人物に魅力を感じることでしょう。周囲の国語科教員には、このマンガを学生時代に買って、とても好きだという人も複数名いました。このような作品との出会いが、古典に興味を持つきっかけにもなりうると思います。

授業で使うとしたら


 以上の理由から、授業で扱うならば、内容を授業で具体的に取り扱うのではなく、導入として紹介するのが良いかと思います。まだ『百人一首』をよく知らない、これから学びたいという人にオススメの一冊です。

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