見出し画像

図説 地図とあらすじでわかる! 平清盛と平家物語

忙しい先生のための作品紹介。第61弾は……

日下力監修『図説 地図とあらすじでわかる! 平清盛と平家物語』(青春新書 2011年)
対応する教材    『平家物語』
ページ数      204ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★★
読みやすさ     ★★★★☆
図・絵の多さ    ★★★☆☆
レベル       ★★★☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★★★☆
先生へのおすすめ度 ★★★★☆

作品内容

 『平家物語』研究の第一人者である日下力が監修している、『平家物語』の入門書です。

 全4章構成で、各章では『平家物語』の概要、『平家物語』のあらすじ、知られざる平清盛像、源平合戦についてそれぞれ説明されています。
 各節見開き2~3ページごとにテーマが提示され、地図や系図、絵画などとともに解説されています。原文や現代語訳はほとんど載っておらず、原文を読む上であるとよい前提知識が、簡潔にわかりやすくまとめられています。

おすすめポイント 『平家物語』の全体像がわかる

 個人的なおすすめは第4章です。先述の通り、第4章では戦ごとに節が構成されています。『平家物語』を断片的に読んでいるときにはわかりにくい源平合戦全体の流れが、本章を読むことで見えてきます。

 さらに、図が多いのも本書のポイントです。合戦の場面では、場所の位置関係がわかりにくかったり、多くの人が登場して人物関係が混乱したりしてしまうことも多いのではないでしょうか。本書では地図や家系図がその都度提示されているため、文章だけではわかりにくいポイントも、視覚的に把握することができます。

 また、各節はさらにいくつかの項目に分かれており、それぞれに小見出しが付いています。そのため一つの話題について簡潔にまとまっていて読みやすく、『平家物語』をほとんど知らない人でも、容易に読み進めることができます。

活用方法

 先にも述べたように、『平家物語』の内容を網羅的に解説しているので、作品全体の流れを知りたい人におすすめです。興味を持った生徒に薦めるのはもちろん、『平家物語』にあまり詳しくない先生の教材研究の第一歩としても使えます。

 また、気になった場面だけ部分的に読むという読み方もできます。自分の知っている話同士がどのようにつながっているのか、名前だけ知っている合戦の実態はどうだったのか、有名な人の最期はどのように語られるのか。自分の興味に応じて、辞書のように読むこともできそうです。「『平家物語』の入門書をまず一冊薦めるならこれ!」と言える本です。

 ただし、全体が簡潔にまとまっているが故に、個々の場面の解説はそれほど詳しくなく、また原文や現代語訳もなく淡々と解説が進んでいきます。特に、教科書の定番「木曽最期」や「忠度都落」についても、前者は97~98と175ページ、後者は88~89ページにわずかに書かれるばかりです。そのため、教科書の場面そのものの理解というよりも、あくまで『平家物語』全体像を捉えるために読むのがよいでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?