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「平家物語」(鈴木健一『知ってる古文の知らない魅力』より)

忙しい先生のための作品紹介。第36弾は……

鈴木健一『知ってる古文の知らない魅力』第二章「平家物語」(講談社 2006)
対応する教材    『平家物語』
ページ数      25ページ(43ページ~67ページ)
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★☆☆☆
図・絵の多さ    ★☆☆☆☆
レベル       ★★★★☆

作品内容

 本書は、教科書に載っているような有名作品について解説した一冊。中でも今回紹介するのは、『平家物語』について解説した章です。冒頭「祇園精舎」について、『平家物語』の成立に関係する清盛の罪、類話が載っている他作品との比較など、幅広くそれでいて簡単に説明されています。

おすすめポイント 難しい仏教用語をかんたんに解説!

 まず目を引くのは、冒頭部分の解説です。『平家物語』の冒頭は、仏教用語ばかりでなかなか難解です。しかし、それぞれの言葉の持つ意味、またこの冒頭で読者を引き寄せるための構成の工夫など、冒頭場面を味わうためのエッセンスが紹介されています。例えば「沙羅双樹は何者で、それが枯れるのにはどのような意味があるのか」といった、作品の読解に必要な知識がピンポイントで手に入るのです。

 また、平家が政権を取った意味について触れられているのも面白いポイントです。清盛は政権奪取のために悪行も犯しますが、それが長年の勢力図を変えるためには必要だったことがわかります。このように、作品の背景をも知ることができるので、国語だけでなく歴史が好きな人にも楽しめるでしょう。

 さらに、後世の作品との関連を説明するために、「鹿ヶ谷の陰謀」などで登場する俊寛についても説明されています。鹿ヶ谷の陰謀によって配流された俊寛は、『平家物語』では赦されずに不遇なまま終わります。しかし、能「俊寛」、歌舞伎『平家女護島』では少し物語が異なります。それぞれの時代によって、話のどこに注目されていたか、それによりどのように話が変化したかについて触れられているのも新鮮です。

授業で使うとしたら

 授業で使いやすいのは冒頭場面を解説した箇所でしょう。『平家物語』冒頭場面の理解を助けるのに、本書45~51ページをそのまま用いることができます。この箇所は、言葉の意味や本文の中での役割が説明されているので、授業のレベルに合わせて用いることができます。

 また、作品全体の表現を吟味する際には、本書63~66ページ「受け継がれるドラマ――俊寛」の項を参考資料として用いることもできるのではないでしょうか。

 このように使いやすい場面はレベル3程度なのですが、解説が作品全体に及んでおり、授業では用いられない場面の解説も書かれているため、全体としてレベルは4にしました。

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