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堀越英美『エモい古語辞典』

忙しい先生のための作品紹介。第63弾は……
堀越英美『エモい古語辞典』(朝日出版社 2022)


ページ数      183ページ
読みやすさ     ★★★★★
図・絵の多さ    ★★☆☆☆
レベル       ★☆☆☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★★★★
教員へのおすすめ度 ★★☆☆☆

作品内容

 
 日本古来の「エモい」単語をジャンルごとにまとめた書籍です。「古語辞典」というタイトルから古文単語の辞典を連想するかもしれませんが、著者が「『古事記』『万葉集』に登場する上代語から、明治時代〜戦前昭和頃まで使われた近代語、現代の文章でも使える伝統的でみやびやかな雅語まで」と説明しているように、古くから使われている言葉が集められています。

 全体は五部構成で、「天文」、「自然」、「人生」、「物語」、「言葉」という順に並んでいます。各部は、さらに細かく分類されており、第一部では「時間」、「季節」、「宇宙」、「気象」という節、その中でも「時間」という節には「時の流れ」、「朝」、「夕」、「夜」という項に分けられています。

 各ページは10単語程度の解説が載っており、単語については、見出し語と読み仮名と解説が付いています。中には用例が載っているものもあり、その出典は、巻末に全てまとめられています。
各項の単語は五十音順ではなく、内容の関連性に基づいて並べられているので、単語を調べるための辞書というよりも、特定のテーマに関する様々な単語を知りたいときに読んで楽しめる書籍です。

おすすめポイント なぜ言葉を「エモい」と感じるのか


 本書で「古語」として取り上げられる単語の中にも、「千本桜」や「魘夢」など、何かしらの作品で目にしたことのあるものが見つかると思います。小説や舞台の作品名や歌詞などに使われていた言葉を見つけることは、本書を読み進める中での一つの楽しみ方だと思います。日常的にはなかなか使われない「古語」が現代の作品名や歌詞などに使われるのは、本書のタイトルにもある「エモ」さゆえではないでしょうか。

 では、なぜ言葉を「エモい」と感じるのでしょう。著者は「まえがき」で、「エモい」と「あはれなり」の類似性を挙げた上で、それらを「『今・ここ』ではないどこかに心が奪われている状態」とまとめています。

 実際に採録されている単語の中で、私が好きな単語は「友待つ雪」(新しい雪が来るのを待っているようにとけずに残っている雪、p.42)、「空に知られぬ雪」(舞い散るサクラの花びらを、空が降らせた覚えのない雪にたとえた言葉、p.55)です。前者は、まだ降っていない雪のことを「友」と、後者は舞い散る桜の花びらを「雪」とたとえて、目の前の状況の説明を「今・ここ」にはないものに託しています。このような言葉のもつ奥行きが、私たちに「エモさ」を感じさせているのでしょう。本書を読めば、このような「エモさ」を感じられるお気に入りの言葉が見つかるはずです。

活用方法

本書は見出し語や項の見出しの文字が大きく、手書き風フォントやイラストなどデザインも凝っています。そのため、一般的な辞書に比べて読みやすく、本書自体を読んで楽しむこともできます。

 しかし、創作活動の際の語彙の参考用として使うのが、最適だと考えられます。「作品内容」にも書いたように、項ごとに細かくテーマが設定され、単語は内容の関連性が高いものがまとめられています。短歌・俳句の創作や小説を書く活動などで、使いたい言葉のイメージがあるときに本書を開けば、適した言葉が見つかるはずです。様々な創作活動での言葉選びの際におすすめの一冊です。


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