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『博士と狂人』『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』『星の子』『ジオラマボーイ・パノラマガール』『おらおらでひとりいぐも』『泣く子はいねぇが』

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11月1日
毎月一日は「映画の日」というわけで、ヒューマントラスト渋谷にて『博士と狂人』をば。
いやあ、やっぱりショーン・ペンは素晴らしいな、壊れていく人の魂についての表現というか、それでも残る知性みたいなものを体現していた。映画の内容は辞書を作る話だけど、メル・ギブソン演じる博士とのやりとりとかにおける友情や知的な会話など好奇心が揺さぶられるものだった。こういう地味ながら良質な作品を観れるのはうれしい。


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11月6日
ル・シネマで『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』を鑑賞。カポーティ作品を読み込めてないけど、人間としての魅力もだけど、成功して緩慢な自殺のようにアルコールにドラッグ、社交界の裏を暴露して大事な人も失っていった彼の人生を残されたテープと友人知人や養女となった女性のインタビューで構成されている。コンパクトながらうまくまとまっている。この映画の中でも絶筆となった遺作『叶えられた祈り』の残りはあるのかどうかというのは周りの人間でも意見がわかれていた。


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11月8日
大森立嗣監督『星の子』をヒューマントラスト渋谷で鑑賞。
新興宗教にハマっている親、思春期の主人公の娘、家から出ていった姉、ほどよい距離感で接してくれる友人。身内や親族、切りたくても切れない距離になにかを崇拝して揺らがない信仰や信頼をしている人がいて、自分がその価値観を信じれない、あるいは信じていたが揺らぐ時、その心情を描いてる。
なにかを信じている者の強さと脆さ、なにも信じていない者の自由さと儚さ、それぞれの価値観のグラデーションが人にはある。
信じてる方が楽だし、立っていられる。その数が少ないとぶっ壊れたり折れたりしたら生きていけなくなってしまうので、多種多様にいろんなものを信じればいい、どうせ矛盾を孕むし、矛盾せずに生きてはいけないとは思う。猜疑心や不満や矛盾を許せるかどうか、最後のシーンは矛盾してるけど、許したりわかったんだろうな、と思った。


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11月12日
シネクイントホワイトで岡崎京子原作映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』をば。
新生PARCOになる前の工事中のPARCOや、月島にある選手村になる予定のマンション群なんかが出てきて、その時にしか撮れないものが物語の背景にあってよかった。毎年晴海埠頭に行くので物語の場所はなんとなくわかる。正月の選手村はゴーストタウンだったけど。
主人公の渋谷ハルコ演じる山田杏奈が角度によっては小芝風花やメルマ旬報でも連載している小川紗良さんにも見えた。小川さんは新垣結衣に似てんなあと思っていたので、彼女たちはガッキーの系統にあるキレイとかわいい両方感じさせる整った顔なんだろうな。顔の系統近いと声質も近いだろうし、骨格はスピーカーみたいな型だろう。好きな顔があれば、好きな声質もたいてい決まるんじゃないかな。似てる顔が好きになりやすいのは声も似てるからなんじゃないかなという仮説。


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11月17日
TOHOシネマズ六本木ヒルズで沖田監督『おらおらでひとりいぐも』を鑑賞。ひとりの人生に連なる歴史、見えなくても共に生きる過去の思い出たち。ある種のマジックリアリズムだと思うけど、僕らが生きている日常でもある。沖田監督作品って日常みたいな中に普通に不思議なものをぶちこんでくる、それがマジックリアリズム的なものなんだけど、今作ではマンモスだったり、悲しみの三人という主人公の脳内にいるであろう存在たちとか。あと『スパイの妻』と蒼井&東出が同じく出演してるので違う世界線にも見える。


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11月20日
新宿ピカデリーで『泣く子はいねぇが』を鑑賞。
父親になったばかりの主人公のたすく(仲野太賀)がナマハゲをしている際に飲みすぎてしまい、お面以外は何もつけていない全裸で町内を歩き、それがテレビで放送されてしまう。そして、彼は地元を逃げ出して東京へ。
2年後、東京にやってきた友人から元妻のことね(吉岡里帆)の父が亡くなり、彼女が風俗で働いていると聞かされたことで、地元に帰ってなんとかやりなそうとするのだが。失敗や炎上をすると一瞬で終わりになる今の世界を考えさせられる作品でもある。ことね(吉岡里帆)のたすくへの表情が何度も突き刺さる。なんか今まで観た中で吉岡里帆さんいちばんいいなって個人的には思った。ことねはことねで新しい生活を手に入れようとしていた。それでも諦めきれないたすく、最後は思った通りの終わり方ではあるのだが、よい終わり方だった。
たすくはなにかに怯えている感じもするけど、友達と密猟して稼いだりとかしているけど、なんかオフビートとは違うんだろうけど、物語のリズムが好きな感じだった。山中崇さんは兄役だったけど、ふたりが並んでいる感じもよかった。
佐藤快磨監督は是枝裕和監督が惚れ込んだ才能という文言が映画のサイトにも踊る期待の若手のようだた。是枝監督や西川美和監督たちを中心にした「分福」という会社はこうやって若手をフックアップもして行っているのは素晴らしい。前に観た『夜明け』という作品の広瀬奈々子監督も助手を務めてデビューしている。

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