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『ウィンターバケーションEP 2020』

『二〇一八年のサマーバケーションEP』vol.1

『二〇一八年のサマーバケーションEP』vol.2
〜あるいは二〇〇八年のスプリングバケーションEP〜

↑古川日出男20周年記念サイト『古川日出男のむかしとミライ』の中のコーナーである「私的古川論」に僕が寄稿させてもらった『二〇一八年のサマーバケーションEP』も読んでもらえるとこの『ウィンターバケーションEP』 がどういうものかわかりやすいと思います。

↑は去年のですね。2014年、2016年から2020年と五年連続で元旦に歩いたのは六回目。前年同様に大晦日にガルシア=マルケスを読んでいた。『愛その他の悪霊について』にした。そこまでページ数がないのに、やはり重い。読み進めるのにどこか根気がいるような、でも深い底に降りていく感じがあって重厚さについて考えさせられた。


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朝の六時過ぎに起きて歩いて下北沢駅に。井の頭公園駅で降りて公園に入る時にナイキのRUNアプリを立ち上げて距離を記録し始めながら歩き出す。

古川日出男著『サマーバケーションEP』の物語をトレースするのがこの「ウィンターバケーションEP」なので始まりのひょうたん橋、そして神田川の源流の立て札からスタート。基本的に神田川沿いは毎年大きな変化はない。


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川沿いには犬を散歩する人たちと早朝ランナーたちぐらいでどんどん町の方へ歩いていくとたまに人にすれ違うぐらいになっていく。駅をどんどん越えていくと川沿いには公園と駅とお寺が多い。

いつも工事中で遠回りする場所は今年も同様で、河川工事は何年もかかるものなのだろうか。川沿いで一番見かけるのは鳥類であり、鳩やカルガモやカラスや雀など、一番目に入ったのは目白だった。たまに名前がわからない大きめの鳥が木に止まって鳴いていたりした。あと毎年同じような場所で見かける猫たちもいた。陽だまりというか陽がちょうど差し込む場所でまどろんでいた。


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あと里程標ももちろん場所はかわらずにいつもの場所にあって、そこに刻まれた距離数を見ると進もうと思えるのは不思議な気がする。進んでるってわかるのがいいんだろうな。


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善福寺川が神田川に合流するところ。川は川を飲み込んで、取り入れてさらに大きなものになって海に流れていく。いつも思うことだけど、そのことは始まりと終わり、その間にあるいくつもの事柄、そして干上がることがない限り流れが続いていく。


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川沿いを歩いているとどんどん川幅が広がっていくのがわかるし、防波堤というか整備されていて水が流れる場所と歩いている歩道の高低差がどんどんついてくる。それでもこの数年の台風などによる水害のイメージがあるので川沿いにあるうちだったり半地下というか歩道や道路から少し下にある駐車場なんかは大水害が起きたら飲み込まれたり沈没してしまうのだろうな、と思いつつ歩いた。


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新宿区中野区を過ぎて文京区に入ると川は大きく、穏やかだけどどこか手に負えない感じになってくる。中央線が走るのが見えて東京ドームや水道橋駅近くになると隅田川へ合流するための最終段階のようになっていく。


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浅草橋、柳橋で神田川は隅田川に注いで合流する。そこからは隅田川テラス沿いに歩くことになる。ここまでだいたい五時間ぐらいかかっていた。七時に歩き出していたのでちょうど正午過ぎぐらいで太陽もあがっていて暖かい。川沿いからは高層マンションやビルが見えるけど、日差しを遮らないので日に焼けるような暑さになる。今のところ元旦に歩いていて雨に降られたことはない。太陽を一身に浴びているというのはどこか宗教的な、信仰みたいなものを感じてしまう。太陽神、自然の恵みのようなもの、同時にこれで大雨や雪が降ったらおそろしいほど体は凍えてしまうだろう。


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毎年、隅田川沿いを歩いていくと最後に橋を渡ることになる中央大橋を目指すことになる。羽海野チカ『3月のライオン』の舞台でもある月島、漫画にも出てくる中央大橋は漫画の世界に自分がちょっと触れるような気になる。先月最新刊が出て読んだばかりだったから余計に。


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月島に入ってから東京湾をのぞむ晴海埠頭までが地味に長い。そして、晴海埠頭近くに建設されている東京オリンピックの選手村を見るというのもこの歩きの一つの目的にもなってきている。もんじゃストリートを越えて大きな橋を越えるとほぼ終点になる。


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選手村になるであろう場所は確かに去年よりは建物ができているが、まだ整備する場所もたくさんあるみたいだし、これ夏までに間に合うのだろうか、疑問だ。そしてオリンピックが終わればここは売り出されて新しい人たちが住み出すのだろうけど、町としてきちんと成立するのかどうか、それもちょっと気になっている。埋立地、かつては東京湾だったところを再開発するということ、川沿いの先にある海の真ん前の場所を舞台にした話も想像してみたい。


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晴海客船ターミナルに着く。本来はよこにある晴海埠頭公園で物語は終わりたいのだが、去年の時点で再開発というか選手村の建設に合わせて公園も新しくしようとしていて立ち入りができなかった。今年もまだ立ち入り禁止のままだった。本当にオリンピックまでに間に合うのだろうか、間に合わせるんだろうけど、終わった後にどういう風にこの町の、この土地を活用するのか、そういうことをどのくらいの人が真剣に考えているのか、十年、二十年後にこの場所がどんな風になっているのか、たぶん僕は見にくることになるだろう。来年、2011年にオリンピックが終わったあとにもう一度歩いてみてこのシリーズを終わりにしようと思っている。それから神田川から晴海埠頭までの場所をいくつか舞台にした小説を書いてみたい。自分が歩いた時間と場所や思考が混ざり合ってもいいし、別々でも川の流れようにいつか連なって海に出るような、外側に向かっていく、そんなものを。

歩いて勝どき駅まで、右膝が痛くなっていたのを途中から我慢していた。体重を減らさないといけないと思う。もっと体力をつけようと思う。体力をつけよう。そして、もっと歩いて考えよう。歩いて書いていこう。読んで書いていく。歩くながら読んでいこう。

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