作り方も作る、一緒に作る。そんなラフラフなプロトタイピング
武蔵野美術大学大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダーシップ特論」の講義に関するレポートです。第5回 softdevice/八田晃さん (2021.05.10)
<プロフィール>
株式会社ソフトディバイス代表取締役。1996年よりインタラクションデザイナーとして、家電、情報機器、自動車などの先行開発を中心に様々なUIデザインに関わる。2007年同社CTO、2008年より現職。プロダクトにおけるUIデザインを「人のふるまいのデザイン」からの視点で捉え直し、プロセス上流においても作りながら考えるための簡易プロトタイピング手法を各種開発、実践の場として「softdevice LAB」を設立。
(引用元:AND softdevice #001:プロトタイピングのすがた@京都 )
今回は八田さんのワーク及びsoftdeviceで実践されているプロトタイピングについてお話を伺った。
作ることで未来を予測する
”Predicting the Future by Making”
(作ることで未来を予測する)
これがsoftdevice社のミッションだそうだ。
この言葉はパーソナルコンピューターの父、アラン・ケイの格言から生まれたとのことだった。
”The best way to predict the future is to invent it."
(未来を予測する最良の方法は、それを発明することだ)
元々プロダクトデザインの事務所として創業し、ユーザーインターフェースのデザインを手掛け、現在はその知見を活かして先行開発(将来の商品を考えるための開発)でのデザインやプロトタイピングを手掛けており、「そのまま世に出ることは少ないもの」が多いそうだ。
なお、身近なもので言うと、初代iMode(1998年)のメニューのデザインを手掛けている。
(八田さんは「学生の皆さんは生まれていないかも」とご説明されていたが私はしっかり生まれているし、iModeも触ったことがあるのでちょっと感動した。)
プロトタイプのためのプロトタイプ
プロトタイプは割と後に行うというイメージがあったが、softdevice社では、考えるための、より上流でのプロトタイピングを行っている。
つまり、「(実現に向けた)プロトタイプ(を体感から考える)のためのプロトタイプ」を行っている。これを「ラフラフなプロトタイピング」と八田さんはおっしゃっていた。
紙ベースで考えても納得感が得られないものをプロト対象するアプローチは、観察だけでは着想を得にくい、未来のプロダクトを考えるときに有用だったりもするそうだ。
例えば、UXデザインのアプローチとして知られている「Acting Out」のように、リサーチ結果のオペレーションを演技でなぞりながらその場でアイデアを考えていくこと等を実施しているそうだ。
(Acting Outは、数年前にとある演習で行ったことがあるが、人前で演じる恥ずかしさが先行してしまったのを思い出した。今思えばそこまでプロダクトに納得感がなかったからだというところに思い至り、そっと内省した。)
作り方を作る
softdevice社の面白い点は、プロトタイプを作るだけではなく、プロトタイプのやり方も作ってしまっている点だ。
例えば、「Photo Modeling」のように、演技を写真に撮った写真にアイデアを書きこんでいく形式のやり方だ。
また、「Projection Modeling」のようにプロジェクタの投影を利用してプロトタイプを体感できるようなやり方もある。
そうして、体を動かして考えやすいようなプロトタイプのやり方を考え続けた結果、プロトタイプを行う専用のsoftdevice LAB.という空間を創るに至っている。
LAB.には可動式の壁や様々なプロトタイプを行うことのできる機械があり、そこでプロジェクトが動いていく。
八田さんが大事にしていることの1つとして「一緒に作る」ことを挙げていらっしゃったが、まさにLAB.はクライアントの方と一緒に作ることに適している空間になっているとのことだ。
講義後にプロトタイピングラボのデザインの記事を拝見したが「軽い」プロトの話が興味深かった。
体感性を維持したまま制作・変更の負荷を下げた。いわば「軽い」プロトで繰り返しの検討を行うようになった。…(中略)…こう行った「軽さ」は、従来プロトタイピングが使われてきた設計フェーズだけでなく、プロトの方法から考えることも可能になり、コンセプトフェーズでもプロトを利用できるようになった
(引用元:プロトタイピングラボのデザイン)
一緒に作る
ラフラフなプロトタイピングの醍醐味は「その場で変えられること」「一緒にやることのできる手法であること」だそうだ。
例えば「Photo Modeling」の利点として、「デザイナーじゃなくてもできる」という点が挙げられている。
また、LAB.では考える材料を用意し、クライアントと一緒に一緒に作ったり変えたりして考えることを行っている。
人との接触が制限されるコロナ禍においてもこの姿勢は変わらず、プロとタイピングのライブ感を伝えるためにマルチカメラマルチアングルで配信を行うテストをするといった新たな挑戦にもつながっている。
所感
とにかく作ってみる、試してみることが重要だと感じた。
本講義と別でデザインスプリントを回すという授業を受けていたが、そこでも「ものがあるとなんて議論が進むんだろう」と思ったことにつながる。
とはいえ、作ることに不慣れな私はとにかくラフでもいいから量をこなすことでその姿勢を身につけなければいけないと痛感した。
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