難民の第一避難国での教育

今日の学び

INEE

「紛争前・紛争中・紛争後の教育」のnoteでも、少しINEEのミニマムスタンダードについては触れたんだけど、改めて。

元々は、緊急時における教育に関する情報共有を目的に作られたプラットフォームだけど、今では、教育のミニマムスタンダードっていうガイドライン的なものを作成するという重要な役割も担っている。ミニマムスタンダードだから、決して紛争だけでなく、「どんな状況下でも最低限これらを考慮しましょう」っていうレベルのもの。

  1. 資金

  2. アクセスと学習環境

  3. 教え、学ぶ内容

  4. 教員と教育関係者

  5. 教育方針、政策

これらの5つの面から、さらに細分化したスタンダードを記載している。
例えば、教員の質においては、きちんとトレーニングを受けて知識があるものを選別しましょうとか、子どもが安全でインクルーシブな教育を受けられるようなメソッドを知っているようにしましょうとか、割とふわっとした内容が書かれている。


ヨルダンに避難してきた、シリア難民のケーススタディ

シリア人の避難状況
・6,100,000人が国内避難民
・2015年時点で、1,265,000人がヨルダンに避難したシリア人の数(ヨルダン人口の13.2%)
・663,507人がUNHCRに難民申請を提出した(そのうちの1/3は学齢期)
 →自己資金でヨルダンに滞在できる場合は難民申請しなくても良いため、最初は難民申請していなかったけど、数年後に資金が底をついて、申請する人も多くいた。
・2021年の報告書によると、難民の90%はキャンプの外に住んでいる。
 下の図の濃い青の地域に多くのシリア人が住んでおり、色が薄くなるにつれ割合が減っている。主に北に集中しているのは、都市が北部に多い、シリアとの国境に近い、南は砂漠地帯などの理由が考えられる。

・232,000人のシリア人児童生徒を受け入れるために、午前・午後に分けたダブルシフト制の導入。

ヨルダンでの教育上の壁
・学校が満席状態で、入学登録ができない。
・管理上の弊害。
 ー学歴証明の書類がないことによる、登録の遅延。
 ーUNHCRの難民登録ができないと入学できないなど。
・ヨルダンは3年以上学業から離れていたら年齢に応じた学年に入ることができない。
・学校への登校手段(高い、歩くには遠くて危ない。特に女の子は「難民の子」として標的にあいやすい)
・いじめなどのハラスメントと暴力
・教育と最低限の生活との葛藤(児童労働や早期結婚による資金の確保を優先してしまう)
 ー32%の子どもたちは18歳以下の早期結婚をしている。


ヨルダンでの教育制度
全ての学校において、ヨルダンのカリキュラム、ヨルダン人の教員による授業が行われている。1ー②以外は、卒業資格がもらえる。

  1. キャンプでの学校(ヨルダンの学校数の1%)
    キャンプ内にあるため、ヨルダン人との接点はない。

    ①ヨルダン政府が管理している学校
     UNHCRが建物は援助し、中身はヨルダン政府が管轄している。
     研修が不十分な新米教員が派遣されることが多い。
     
    ②国際NGOによる非正規教育。教員はある程度の経験と資格を持った人が派遣される。登校している一部の生徒は、基本ここで学習し、進級試験だけ①の学校で受けるなどして、資格をとっている人もいる。

  2. 午前・午後のダブルシフト制学校(ヨルダンの学校数の5%)
    ヨルダン人の学校施設を使用している。ヨルダン人の児童は午前に登校し、シリア人の児童は午後に登校するため、双方の接点はない。

  3. ホストコミュニティ/統合学校(ヨルダンの学校数の7%)
    ヨルダン人とシリア人が一緒に学んでいる。およそ、10〜50%がシリア人の割合。

  4. 通常学校(ヨルダンの学校数の87%)
    基本的にヨルダン人だけの学校。ただし、10%以下のシリア人が混ざっていることもある。

ちなみに、女の子、男の子に分けるのでより細分化している。

それぞれの課題
キャンプでの学校
・環境設備:窓ガラスがないため、埃っぽく、音も筒抜け、寒暖への対応ができない。
・キャンプ外との関わり不足
・時間とお金
 ーキャンプの学校は、ダブルシフト制学校より22%、ホストコミュニティ学校より34%授業時間が短い。
 ー楽しい創作的な活動、校外学習、個別対応などできない。
・ヨルダンに浸った授業
 ー“My country”という題目で、ヨルダンについて展示したり、国歌斉唱してから一日を始めたり
・教員の質

ダブルシフト制学校
・60%の児童が登下校時に不安や恐怖心を抱いている。
・学校への所属意識
 ーヨルダン人が下校した後に掃除をし、自分たちで使った後も掃除をしたり、掲示物なども自分たちのものは飾られないなど

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自分の中での不明点

・なぜ、ヨルダン政府はそこまで区分けした教育制度にしているのか

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個人的見解

シリア人の子どもたちにも、どんな状況であれ教育機会を均等に与えているという点では、ヨルダンの教育制度はいい難民教育の例と言えるかもしれない。
シリアのカリキュラムを一切許さないことに対して、モヤモヤがありつつも、ヨルダン政府の立場で考えると、今後ヨルダンに住み続けるかもしれない人材の育成とすると、当たり前の行動にも感じられる。(後々、ヨルダン内でシリア人アイデンティティがある人VSヨルダン人の闘争などが起きるかもしれないから、極力ヨルダン人アイデンティティの人を増やしたいのかなと。)ただ、このままシリア人とヨルダン人を分ける教育制度を続けていくと、お互いに不満分子は高まってしまいそうで怖い。

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