難民・移民の基礎概念

今日の学び

現状
難民出身国トップ5(UNHCR、2021 “Global Trends Report”)
シリア 680万人
ベネゼエラ 460万人
アフガニスタン 270万人
南スーダン 240万人
ミャンマー 120万人
→全体の68%は、この5カ国を出身国とした難民。

受け入れ国トップ5
トルコ 380万人
コロンビア 180万人
ウガンダ・パキスタン 150万人
ドイツ 130万人

*昨年はウクライナ難民が560万人避難したため、2022年報告書では、さらに変化することが予想される。

この写真を見ても分かる通り、基本的に難民が避難先として選ぶ国は近隣国であることが多く、80%の難民は近隣諸国にとどまる。
78%の難民は避難先で5年以上滞在している、「長期難民」とされている。

近隣国に留まる理由
Pierre Bourdieuの文化資本の概念

ここに分かりやすく書いてあるんだけど、簡潔にいうと、親の影響・育ってきた環境によって、子どもの嗜好性や価値観、判断や行為の傾向(habitus)が形成されている。
たとえば、クラシックを幼少期から聴いていたら、何となく音楽を選ぶ時にクラシックを選んでしまう。好きな絵画の系統が似ているなど。

その中でも分けると、
身体的文化資本:教養・言語・感性など(親による影響大)
客体的文化資本:物財として相続できる、絵画・楽器など(ただ相続しているだけでなく、その使い方・価値を認めているという点で経済資本とは違う)
制度的文化資本:社会から認められている、学歴資格や資格証明など。

この文化資本によって、学歴/進路・友人関係・居住地・職業・パートナーまで影響をするというのが、ブルデューの考え方。

(余談)
もっと詳しく、経済資本・人間関係資本についても書いているのがこちら。


これを難民に落とし込むと、避難先の国では、Social Capital(人間関係資本: 人との繋がり)・Cultural Capital(文化資本: 文化の違い)・Symbolic Capital(制度的文化資本: 資格証明)などが影響をしてくる。
避難先国では、友人・親族がいない。言語や習慣の違い。卒業証明などの資格の無効化などがありえる。そうすると、これまでの生活で積み上げてきたBiographyを再構築していく必要が出てくる。

Morriceは論文の中で、「避難先での経験なども全てが学びとなり、それがアイデンティティ形成になる」「学校での学びだけでなく、先生の態度(不平等性など)など、意図していないところでのネガティブな学びを受けることもある」と言っている。

そのため、物理的距離によって、移動距離が少ない近隣諸国にとどまるという理由だけでなく、より文化的・人間関係的に近い場所を難民の人々が避難先として選んでいる可能性もある。

その一方で、必ずしも「難民」「移民」がカテゴライズできるとは限らない。

言葉の慎重性
IOMは、移民は国境線を超えた人は全てが移民としている。
UNHCRは、その国境線を超えた人の中でも、迫害によって移動している人と、そうでない人で難民と移民を区別している。

ただし、難民の中でも最初は迫害されて自国から避難したとしても、その避難国で、経済的困窮・社会的差別などにあって、さらにそこから移動する場合がある。そうすると、移民なのか難民なのかの区別が難しくなる。

そのため、「forced migration」という言葉を使っている人もいる。
→経済的困窮・紛争・開発誘導(都市計画など)・自然災害・環境問題などを要因に移動する人々を指す。

そもそも、1951年条約では「難民」はヨーロッパから移動した人(ユダヤ人など)しか指されておらず、議定書で諸外国の難民について記載しているだけ。→いまだに1951年条約に加盟していない非植民地国も数多くある。

現在も、欧米諸国中心で捉えられていることが多い。たとえば、EUがトルコ・レバノンなどに支援金を支払って、シリア難民などが自国には入ってこないように促すなど。

(余談)
移民について話をしている際、香港人の子からBNO(British National Over-seas)という、植民地用パスポートについて教えてもらった。1987年〜1997年の中国返還まで発行をしていたらしく、そのパスポートで他国への移動が可能だった。ただ、イギリスへは最大6ヶ月までしか滞在できず、市民権の取得もできなかったらしい。

そこから詳しく調べてみたら、イギリス政府が香港の現状を見て2021年1月31日から制度を変更して、BNO保持者に対して、5年以上の就職・就学の受け入れ(+1年働けば市民権も受けられる)、もしくは最大60ヶ月の観光ビザの取得が可能になった。その一方で、中国政府はその対抗措置として、パスポートとしての資格喪失を打ち出した。ただ、現状として香港人は香港パスポート、BNOパスポートの2つ持ちの人も多いため、打撃はないらしい。

ーーーーーーーー

自分の中での不明点

・特になし

ーーーーーーーー

個人的見解

難民・移民のカテゴライズが難しいっていう発想はなかったので、興味深かったし、納得させられた。むしろ、そこまでの発想がなかったことが恥ずかしいし、悔しい。

ブルデューの文化資本についても、昔教育系の授業でさらっと教えてもらっていて、当時も「おぉ!」ってなっていた記憶があるけど、あまり咀嚼しきれていなかったらしく、今回再び学び直して、本当に興味深いなと思った。
親の価値観が自分に相続してるって、心の底から思う。もちろん、友達関係から広がっていったものもあるけど、根底に広がっている価値観・態度・好みは、全て継承されていると確実に言える。服の好みとか、まさに。母兄姉で、色違い持ってることもあるし。

ただ、人間関係の形成へも影響するのは、なかなか面白い。類友ってやつなんだろうけど、確かに基本的なものの考え方が同じ人が周りに多いと思う。その一方で、人間大好き人間だから、全然違う生き方をしている人と話をして、その人の人生の疑似体験をするもの好きだし、その人の価値観に触れるのも好き。ただ、それが自分の価値観に影響して、同じ道を辿るほどではないから、やっぱり継承されている部分が大きいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?