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コンプレックスを活かして 女性化乳房症の僕 【第3章】ブラジャーとの出会い

僕は家に着くなり、ニヤニヤしてしまった。
だって彼女は僕のこと知っていたから。
大学で同じ学科とは言え、同級生は百人以上いる。
その上僕は全く目立たない存在なのに、サヤカさんは僕のことを知っていた。
こんなの嬉しくない訳がない。

翌日の月曜日、僕は朝からソワソワしていた。
今日大学でサヤカさんと会ったら、どんな反応を示すだろう?
もしかしたら、僕に向かってニッコリと微笑んでくれるかもしれない。
そんな期待に胸を膨らませながら、僕は大学へ向かった。

一時限目は大教室での講義だったが、彼女がいる場所はすぐに見つけられた。
彼女の周りには、いつも人だかりができているからね。
今日も遠くから彼女を見つめているけど、本当に美しい。
特にミニスカートから伸びるスラっとした脚は、僕のフェチ心をくすぐる。

それにしても昨日の面影は全く無く、とても同じ人物とは思えない。
彼女は取り巻きと話していて、僕の存在には気付いていないようだ。
しかしこちらから声をかける勇気もなく、彼女の美しさをただ眺めていた。

何度か目が合ったが、彼女は会釈すらしてくれない。
気のせいかと思いながら僕が彼女を見ていると、何回か目が合う。
それでも彼女は、まるで僕を無視するかのような素振りを見せる。
やっぱり昨日の人物とは別人なの?
そんなことを考えながらも、僕は講義を受けることに専念した。
帰宅するまで何度かすれ違ったが、彼女は一向に挨拶してくれない。
やはり、僕なんかには興味はないのだと思い、僕は失意の中で帰宅した。

火曜日から木曜日まで、大学で彼女の姿を見かけることはなかった。
彼女は歌にドラマに、きっとアイドルの仕事が忙しかったのだろう。
話なんかできなくても、彼女を見れるだけでいいので、会いたかった。
そして金曜日、朝から人だかりができていたので、すぐに彼女がいることがわかった。
しかし、今までと同様にただ遠くから彼女を見守ることしかできない。
日曜日の出来事は夢だったのかと思いながら、午前中を過ごした。

お昼になり、学食で一人ランチを食べていると、彼女が取り巻きを引き連れて入ってきた。
そして僕の横を通り過ぎようとした時にハンカチを落とし、それを拾うフリをして僕の手元に一枚のメモを置いた。

彼女が去った後にメモを確認すると、そこにはLINEのIDが書かれていた。
えっ、国民的アイドルのサヤカさんとLINEで繋がる?
僕は驚きと喜びで心が躍り、早速彼女を友達登録してメッセージを送った。

その後、僕はスマホを手放すことなく、彼女からの返信を待ち続けた。
そして一時間後、ついに彼女からの返信が届いた。
「明日の午後、空いてる?」
たったこれだけのメッセージだったが、もしかしたら彼女は僕を誘っているのかもしれない。
「うん、空いてるよ!」
僕はニヤニヤしながら、そう返信した。

すると、次の返信が驚くほど早く届いた。
「じゃあ午後2時に、先週のネットカフェに来て。渡したいものがあるから。」
このメッセージを読んで、僕のテンションはMAXレベル。
彼女が僕のことを気にかけてくれたんだ!
僕はハイテンションのまま、午後の講義を受けた。

そして土曜日、僕はいつもより早く目が覚めた。
あのサヤカさんと再び個別に会えるかと思うと、ドキドキして眠ってなんかいられない。
何を着て行くか迷ったけど、よく考えたら彼女はまた男装して来るかも知れない。
だったら男同士になるので、おしゃれをしても意味がないなぁ。
でももし女性として現れたら、多少はおしゃれしないといけないかな。
そんなことを考えながら、午前中を過ごした。

午後になると早速僕は新宿に向かい、先週と同じファーストフードで昼食をとり、待ち合わせ場所のネットカフェに向かった。
予定の10分前に着いたけど、既にサヤカさんはそこにいて、僕を待っていた。
残念ながら、今日の彼女も男装だ。

「ごめん、待たせちゃって。」
「いいんだよ、俺が早く着きすぎたんだから。」
サヤカさんは男っぽく「俺」と使うけど、声は可愛らしい女性のままで、なんだか微笑ましい。

手続きを終えると、個室に入った。
「ごめん、急に呼び出して。」
「いえ、全然。それよりも学校では目も合わせてくれないから、先週のことは夢だったのかと思ってたんだ。」
「俺はアイドルだからどこで誰が見てるかわからないし、マネージャーから学校では知り合い以外には話しかけないようにって言われてるんだ。だから連絡はLINEにしたくて、昨日メモを渡したの。」
「なるほど、人気者も大変だね。」
「ほんと、私生活は制限されちゃうよ。」

「ところで、今日のサヤカさんも男装なんだね。」
「そりゃあ、この格好じゃないと自由に動けないし、やっぱりストレス発散には男装が一番なんだ!それと・・・」
「それと、何?」
「男モードの時にサヤカって呼ぶの止めてくれない?」
「じゃあ、何て呼べばいいの?」
「リョウと呼んでくれ!」
「わかった、リョウ君だね。」
「君はいらない、リョウでいいよ!」
「OK、リョウ!」
今日サヤカさんが男装して来たのは残念だったけど、もっと仲良くなれた気がして、僕は嬉しくなった。

「ところで、渡したいものって何?」
「そうだった、じゃあ本題に入ろう。」
そう言うと、リョウは紙袋を手渡した。
「これ、プレゼント。秘密を守ってくれているお礼だよ。開けてみて!」
何が入っているのかと思いながら、紙袋を開けたが、中から出てきたものに驚いた。
それはなんとブラジャーだった。

「これは何?」
「見ての通りブラジャーだけど。」
「それはわかってるけど、なんでこれを僕に?」
「先週、胸を見せてもらった時に何かアドバイスをするって言ったのこと覚えてる?やっぱりナベシャツを着けてないときはブラジャーしなきゃと思って、Aカップのブラを買ってきたんだ。」

「ちょっと待ってよ、確かに女性化乳房症だけど、ブラジャーを着けるような趣味はないよ!」
「ブラジャー着けないと、胸が垂れるよ。」
「垂れても別にいいよ、どっちみち胸オペで取るんだから。」
「胸オペするからこそ、ブラジャーを着けないとダメなんだよ!」
「どういうこと?」

リョウの説明は、こうだ。
Aカップであろうと膨らみには重量があるから、垂れる時は垂れる。
おっぱいが垂れると皮膚がたるんでしまい、たるんだ皮膚は手術しても残るらしい。
完璧な状態でおっぱいを撮るには、垂れたらダメとのこと。。

それを聞いて、僕は不安になった。
胸オペしても、不自然さが残っては困る。
かと言って、はいわかりましたとブラを着ける気にもならない。
僕が考え込んでいると、リョウはこう言った。

「別にブラを着けて大学に来いと言ってる訳じゃなくて、家にいる時だけ着けていれば良いの。それだけでかなり違うから。俺だって帰宅したら、すぐブラに着け変えるし。」
なるほど、家にいる時なら誰にも見られないから、大丈夫か。
垂れることを考えたら、ブラを着けた方がマシかも。
「分かったよ、着けてみる。」
そう返事すると、リョウはニッコリ笑ってこう言った。

「じゃあ今ここで着けてみて!」
「今ここで?」
「ブラ着けたこと無いんだろ?」
「うん。」
「コツがあるから、俺が教えてやるよ。」
リョウはそう言って僕のTシャツとナベシャツを脱がした。
そして俺は言われるがままに、ブラを着けさせられた。

「どう、着け心地は?」
リョウからそう聞かれて、俺は返答に困った。
と言うのもめちゃくちゃ心地が良く、目からウロコだったのだ。

「悪くはない。」
「そうだろ?ナベシャツは胸を潰すためにあるけど、ブラは胸を保護するためにあるからね。同じ締め付けでも着け心地は雲泥の差だよ。」
確かにブラも締め付けられるけど、ナベシャツとは比較にならないほど心地良い。

「ありがとうリョウ。」
「気に入ってくれて俺も嬉しいよ。とりあえず3枚買っといたから使い回して着けて。」
「わかったよ。」
「それにしてもアンダー70のブラが少し緩いだなんて、女子でも細い方だよ。」
そう言ってリョウは微笑んだ。
僕は良く意味がわからなかったが、リョウが喜んでくれたみたいで、安心した。
その後僕はブラからナベシャツに着替えて、帰宅した。

一度ブラの感触を知ると、もうナベシャツでは我慢ならない。
僕は帰宅すると、直ぐブラに着け変えた。
(はぁ、何か落ち着くわコレ)
こうして僕はブラの素晴らしさを知ってしまった。

翌日の日曜は、一日中部屋にいた。
つまり朝からずっとブラを着けている。
一日中着けていて気付いたのだが、ブラってずっと着けていると感覚が慣れてしまい、着けていることを忘れてしまう。
僕はうっかりそのまま外にある郵便ポストを見に行ってしまい、慌てて部屋に戻ったほどだ。
でもその時また気付いたのだけど、階段を降りる時も胸が揺れて不快な思いをすることもなく、本当に快適だ。
ブラは女性にとって必須アイテムなんだなぁと、つくづく思った。


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