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初産で無痛分娩体験談②陣痛中の昼寝と分娩後の恐怖体験

そして麻酔医が登場しました。

背中から麻酔を入れたのでしょう、冷たいものがツーッと流れていくのを感じました。

それでも、しばらくは陣痛との戦いです。

麻酔を入れて、すぐに痛みが消えるんじゃないんだな、と思いました。

ある程度時間がたって、再度麻酔医がやってきて、太ももに冷たいものを当てます。

「この感触がわかりますか?」

と、たずねてきました。

まだ冷たさを感じたため、麻酔が追加されました。

麻酔がききすぎないように、慎重におこなっていると感じました。

麻酔の専門医がいる安心感。

無痛分娩は危ないと言われるけど、ここなら大丈夫だと思えた瞬間でした。

そして、再度何かを当てても感触がありませんでした。

すると、うそのように陣痛を感じなくなりました。

陣痛の痛みから解放されるまで、結局1時間ほどかかったと思います。

もっと早くお願いするんだった…。

麻酔がきいてからは、なんと昼寝をしてしまいました。

出産当日だなんて、全く信じられませんよね。

途中、少し痛みを感じるような気がしたので、麻酔を追加でお願いしました。

それが最後の麻酔でした。

その後、またも昼寝をしました。

陣痛がきてるのに、2度も昼寝…。

子宮口が10cmの全開になっても、痛みを感じません。

これが自然分娩だったら、どれほどの痛みにのたうちまわっていたことでしょう。

そう考えると、麻酔って凄い…。

こわいけど、今回は医療の進歩に感謝だわ…。

心からそう感じました。

そして、パン!と水風船がはじけたような感じがしました。

それをすぐ助産師さんに伝えました。

破水したのでしょう。

順調にお産は進んでいるようです。

先生からも「〇〇さん(私の事です)、すばらしい!」と、お褒めの言葉をいただきました。

そして、分娩台に上がりました。

分娩時に、医学部の学生なのか研修医なのか、若い男性が2名、足を広げた私の先に立っていました。

ぎょっとしたものの、出産という緊急時、かつ非常時でしたから、周囲に質問してるひまはありません。

このタイミングでいきんで、と指示されます。

しかし、麻酔がきいてるため、うまくいきめないのです。

力が入ってるのかどうか、よくわかりません。

男の先生が、私のお腹をギュッギュッとおしだしました。

麻酔されてるのに、おされる痛みを感じました。

下半身だけ麻酔がきいていて、上半身は感覚が残っていたからでしょう。

小柄な女医さんが、会陰切開で「切りますねー」と言いました。

パチン、パチン、と切ったのを今でもはっきり覚えています。

4回切る音がしたので、4か所切ったとわかりました。

はさみで体の一部を切る…。

麻酔がきいていなかったら、とても耐えられなかったでしょう。

自然分娩は、あまりの痛みのためにこの会陰切開にも気づかないそうですね。

一体どれほどの痛いんだ…と、想像するだけで気を失いそうです。

吸引をされて、やがて赤ちゃんが生まれました。

助産師さんから、生まれたばかりの赤ちゃんを胸に抱かされました。

私は、自然と涙がこぼれおちて話しかけました。

「よく来たね。」と。

これが、体重3400gで生まれた大きな息子との、初めての出会いでした。

分娩時間は、7時間を切っていました。

初産の高齢出産にしては、早いと思います。

出産後は、なぜか激しい体の震えが止まりませんでした。

今までの緊張や、恐怖が解かれたからでしょうか。

それとも、力を入れすぎていたのでしょうか。

また、異常なほどののどの渇きに襲われ、水分が欲しかったです。

ところが、出産後の私はたったひとりで分娩室に残されていました。

そのため、誰にものどの渇きを訴えられませんでした。

偶然スタッフさんが通りかかるまで、ひたすら我慢していたのです。

あまりに放置時間が長いので、私ってば忘れられてない?と思い、分娩台から起き上がりました。

その時助産師さんに見られて、

「まだ麻酔が切れてないから、動かないでくださいって言いましたよね?!」

と、きつ~く叱られてしまったのでした。

すみません…。

無痛分娩には、いろいろな批判がありますよね。

・自然分娩こそ、いちばんだ

・痛みに耐えるから、母になる喜びが大きい

・痛みに耐えたから、子供への愛が深まる

・陣痛は、幸せな痛み

・産道を通る赤ちゃんも苦しんでいるんだから、母親だけ楽するな

・麻酔なんて危ない

・赤ちゃんになにかあったらどうするの?


そんな意見を目にすると、

「私は、陣痛から逃げた卑怯者なの?」

「みんなががんばって乗り越える痛みから逃げた、ずるい人間なの?」

と、出産当時は後ろめたさを感じていました。

せっかく望んでいた命に会えたというのに。

幸い、夫は当初より無痛分娩に理解があり、反対されることはありませんでした。

その反面、

・欧米では、ほとんどが無痛分娩での出産

・手術では麻酔で痛みをなくすのに、なぜ出産だけは許されないのか

・ほとんど帝王切開で出産する国もある

・出産の疲労からの回復が早い

という声もあります。

自然分娩、帝王切開、無痛分娩。

生まれたら、大事な我が子に変わりはないのです。

そんなの当たり前です。出産方法は関係ありません。

また、一時期無痛分娩による出産時の事故が大きく取り上げられたことがありました。

これが、「無痛分娩は危ない」というイメージが広まった原因のひとつだと思います。

しっかりと経験のある、専門の麻酔医がついていないのが大きな問題だそうです。

まだ、日本では麻酔医が少ないとききました。

ですから、私は専門の麻酔医が常駐するその大学病院を選びました。

その大学病院からは、出産に関する厚めの冊子を事前に渡されていました。

「当院における年間の無痛分娩の症例数はこれくらい」と、具体的な数字も書かれていました。

出産にのぞむ恐怖や不安はありましたが、もう信頼しておまかせしようと決めたのです。

出産したら、昼夜を問わない赤ちゃんのお世話がスタートします。

寝不足との闘いから始まり、原因不明で泣く赤ちゃんとずっと一緒です。

もう、強制的に待ったなしの新生活です。

それは、どんなママでも同じです。

初産ならば、なおさら心身ともに追いつめられる日々が続きます。

せめて、出産の痛みくらいなくしても罰にはならないですよね?

現在、息子は小学4年生です。

口が達者で生意気、でも少し甘えん坊な男の子になりました。

子供が小学生にもなれば、どんな出産方法だったかなど全く話題になりません。

現在の重要な関心事項は、

・学校での事

・勉強や子供の習い事

・友達関係

だからです。

子供の成長に伴って、子育ての問題の中心は変わっていきます。

自然分娩を否定するものではありません。

無痛分娩だけを肯定するものでもありません。

でも、私は無痛分娩を選択できて本当に良かったです。

望めばできる環境にいたのですから。

・女として生まれたからには、あえて陣痛を経験したい

・無痛分娩を希望していたけど、周囲に反対されて諦めた

・無痛分娩ができる病院がない

・麻酔の影響がこわい

人にはいろいろな意見があって、当然です。

それで、いいんです。

出産時には、何が起こるかわかりせん。

赤ちゃんが誕生する、その瞬間まで。

自分でよく考えて、配偶者とも話し合ってください。

出産するのは、女性なのですから。

・パパ、ママになる夢を叶えてくれた

・何より大切な息子に出会うことができた

だから、私は無痛分娩に感謝しています。


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