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接着における材料の分類 #00066

インレーやクラウンなどの歯冠修復物(補綴物)の接着操作は、補綴の成否を決める重要なステップです。しかし、適正な操作は修復物の材質によって異なるため複雑です。前回の記事(#00065)では、接着前処理の概略を紹介しました。今回は、接着前処理における修復用材料の分類について解説します。(池田弘)

 歯冠修復物の材質は、金属、セラミックス、レジン系複合材料の3つに大別できます。さらに、金属は貴金属と非貴金属に、セラミックスはガラスセラミックスと高密度焼結体に、レジン系複合材料はレジンとコンポジットレジンに分類されます。(下表参照)

図1

 貴金属は、タイプ別金合金や金銀パラジウム合金などの金(Au)を含む合金のことです。非貴金属は貴金属以外の合金(例えば、チタンやコバルトクロムなど)です。通常の材料学的分類では、銀合金なども貴金属に含まれます。しかし、接着前処理のための材料分類では、金を含まない場合は非貴金属に分類します。この点は、通常の貴金属/非貴金属の分類と違いますので注意が必要です。つまり、金属接着では金が成分として入っているかいないかで操作が変わります。

 ガラスセラミックスとは、ガラスが主成分として含まれており、そこに結晶粒子が入ったセラミックスのことです。具体的には、陶材や二ケイ酸リチウムガラス(例:e.max、イボクラ製)などがガラスセラミックスに分類されます。一方、高密度焼結体は、ガラス成分を全く含まず、セラミックスの微粒子が高温で焼結された焼き物のことです。具体的には、アルミナやジルコニアが高密度焼結体に分類されます。ガラスセラミックスと高密度焼結体の機械的性質や審美性を比較すると、ガラスセラミックスは比較的に強度が低く、審美性が高いです。一方。高密度焼結体は、強度が高いものの、透明性は低いため審美性に劣ります。

 レジン系複合材料は、PMMAレジンやCAD/CAM冠用コンポジットレジンに分類されます。

 正しい接着を行うためには、上記に示したような修復物の分類を行う必要があります。

00:00 前回まで
01:55 貴金属の分類
02:50 非貴金属の分類
04:00 ガラスセラミックスの分類
05:05 高密度焼結体の分類
08:10 コンポジットレジンの分類
09:45 まとめ

補足・訂正

 ガラスセラミックスには、リューサイト強化型ガラスセラミックス(例:エンプレス、イボクラ製)などの他の種類もあります。しかし、二ケイ酸リチウムガラスが登場してから臨床でほとんど使用されていませんので、実用的には陶材と二ケイ酸リチウムガラスのどちらかである場合がほとんどです。

動画クイズの答え

Q. 非貴金属と高密度焼結体の接着前処理は同じ?

A. 全く同じ。

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