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歯は口ほどに物を言う:#00053歯の話⑤

食べるために「歯」を使う哺乳類の場合、その歯の構造や数(歯式)から何を食べているのか(食性)が分かることがあります。目は口ほどに物を言うそうですが、歯は「動物の食性」を語ってくれます。(吉野賢一)

肉食:肉食とは動物を食べることです。肉食動物のライオンやチーターは四肢動物を食べ、アシカやペリカンは魚類を、カマキリやクジラは節足動物(昆虫やオキアミ)を、ハイエナやコンドルは動物の死肉を、蚊や蛭は動物の一部(血液)を食べます。これらすべてが肉食です。一口に肉食動物といっても様々なものを食べているのですね~。

草食:草食とは植物を食べることです。ウシやジュゴンは(海)草を、キリンやカタツムリは葉を、リスやゾウムシは実を、シロアリやカミキリムシ(幼虫)は木を、カブトムシやカナブンは(樹)液を食べます。草食動物も色々なのですね~。

上記以外の食性:ミミズやナマコなどは生物由来の有機物質(死骸、糞、フケ、垢などをもとにした粒子)を食べるデトリタス食、トビムシやキクイムシの仲間は菌を食べる菌食、そして何でも食べる雑食などがいます。ヒトはもちろん雑食で、牛肉(動物)、ホウレン草(植物)、シイタケ(菌)を食べることができます。デトリタスは食べないな~。

変化する食性:蚊の幼虫(ボウフラ)はデトリタス食ですが、成虫では肉食(吸血)になります。このように多くの動物でライフステージに応じた食性の変化が見られます。それに伴って口(歯)も変化します。そもそもヒトだって、歯の生えていない肉食の赤ちゃん(動物の分泌物を飲む)から、歯が生えたら雑食になるんですね~。すべての哺乳動物の赤ちゃんは肉食スタートって、なんかイメージないけど・・・。

歯と食性①:哺乳類の場合、歯をみて食性を類推することができます。鋭く大きな犬歯(つまり牙)をもっている動物は肉食です。牙は獲物を捕殺するのに役立ちます。一方、草食動物には牙はありません。その動物の歯(犬歯)から、その動物が肉食か草食かが分かるのです。ちなみにゾウ(草食)やイノシシ(雑食)の牙は犬歯ではありません。

歯と食性②:ウマの上顎には門歯(切歯)が並びますが、ウシには生えていません。ウマもウシも草食動物ですが、ウマは上下の門歯でニンジンやリンゴをかじることができ、ウシにはできません。かじることができないウシは草しか食べません。同じ草食動物でも、その歯(門歯)から根や実も食するのか、草や葉しか食べないのかを知ることができます。

0:54 食性(肉食、草食、雑食、デトリタス食、菌食)について
04:02 歯と食性① クイズ・レベル1:何を食べる?
05:00 歯と食性② クイズ・レベル2:何を食べる?

動画クイズの答え

 YouTube動画エンディングのクイズの答えは、「ゾウの祖先(デイノテリウム)が草食だったことが分かる」です。ゾウの仲間の臼歯は今も昔も大きくて、歯と歯が接する部分(咬合面)が広く平らになっています。セルロースをもつ頑丈な植物を、もぐもぐと物理的に粉砕するのに適した構造をしています。歯は硬くて化石としても残りやすいので、絶滅してしまった動物の食性を類推する際にもとても役立っています。

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