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保険CAD/CAM冠の接着

日本の保険診療におけるCAD/CAM冠は、クラウンやインレーなどの歯冠修復物(補綴物)として広く普及しています。一方、脱離や破折などが課題として挙げられます。今回の記事では、できるだけ臨床的失敗を少なくするため、保険CAD/CAM冠の正しい接着操作について解説します。(池田弘)

現在、日本の保険診療におけるクラウンやインレーなどの歯冠修復物(補綴物)として最も使用されている材質は金銀パラジウム合金です。しかし、金銀パラジウム合金の価格はこの20年間で約10倍に高騰しています。また、金銀パラジウム合金は”銀歯”と呼ばれ、見た目も良くありません。このような問題から、代替材料として使用されるようになったのが保険CAD/CAM冠です。CAD/CAM冠の素材は、コンポジットレジンと呼ばれる複合材料です。一般的なコンポジットレジン(いわゆるCR)と違い、工場で高温高圧で固めて作られていますので、強度や耐久性などの物性が比較的高いです。保険CAD/CAM冠は、2014年に小臼歯として導入されて以来、徐々に適用範囲を広め、第一大臼歯、そして前歯にも適用できるようになりました。これらの背景から臨床での使用量が年々増加しています。金銀パラジウム合金の使用量を超える日も近いかもしれません。

一方、CAD/CAM冠には臨床的課題がいくつか残されています。その一つが脱離という問題です。上述したように、CAD/CAM冠の素材であるブロック状のコンポジットレジンは工場で高温高圧で作られているため、未重合モノマーが少ないです。このことは物性の向上には良い影響を与えますが、接着には悪い影響を与えます。つまり、未重合モノマーが少ないとレジンセメントなどと接着しにくくなるのです。つまり、CAD/CAM冠は本質的には接着しにくいのです。CAD/CAM冠の脱離をできるだけ少なくするためには、正しい接着操作を知る必要があります。

CAD/CAM冠の接着操作は次の通りです。口腔内試適→水洗などによる冠に付着した唾液の洗浄→乾燥→サンドブラスト(0.2MPa以下の弱圧)→冠内面へのシランを含むプライマーの塗布→レジンセメントによる接着。

この接着操作で注意したいのがサンドブラスト後の操作です。サンドブラストした冠内面は、水分や汚れが除去されて活性な状態になっています。この活性な状態のまま、プライマーを塗布してください。水洗なスチームなどでの洗浄はしないでください。詳しくは動画をご覧ください。

保険用CAD/CAM冠に関する正しい接着操作を知れば、脱離や破折などのリスクを減らすことができます。ぜひ参考にしてください。

00:30 CAD/CAM冠とは?材質などの説明
12:10 保険診療におけるCAD/CAM冠の接着操作
19:20 まとめと補足:サンドブラスト後の水洗は必要なのか?


補足・訂正

保険CAD/CAM冠の接着システムに関しては日々進歩発展しています。また、保険CAD/CAM冠の材質もメーカーによって様々ですし、新しい製品が登場しています。今回は一般的に正しいとされる接着操作について解説しましたが、新しいレジンセメントやコンポジットレジンブロックの登場により、将来的には接着操作が大きく変化する可能性もあります。その時は改めて解説いたします。 


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