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祭りは誰のもの? 前編 @熱海こがし祭り

「三密を避けながら神輿って一体どう担ぐんだろう?」

朝一番に頭に浮かんだことは、横でスヤスヤ眠る生後6ヶ月の愛娘のことではなく、祭のことだった。

妻は呆れていた。かなりの重症のようだ(笑)
祭から離れてほぼ半年。こんなこと想像しても仕方ないから、実際の現場に足を運ぶしかないと思った。7月16日、向かったのは熱海だった。

東京を出るのは5ヶ月ぶり。久々の新幹線は飛沫を意識して一番後ろの席に座ることにした。乗車率20%程度。去年はあんなに出張してたのに、今は電車に乗るのが慣れない行動になっていた。

目的はこれ。2016年からお世話になっている熱海こがし祭り。

※2020年7/15(水)・16(木)の「熱海こがし祭り第52回山車コンクール」は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止となりました。(「來宮神社例大祭」は神事のみ執り行われます。

祭りは中止だが神事はやる。神事をどこまでやるかだ。

「熱海こがし祭り」は少々複雑で、古くから続く来宮神社のお祭り(昼間)に、観光協会主催の山車コンクール(夜)が被さっているとイメージしてもらえれば分かりやすい。

一般的にこがし祭というと、上記のようなキラキラの装飾の山車をイメージする人が多いと思うのだけれど、自分の場合のこがし祭りの経験は特殊で、2016年に警護役として、神事である行列に参加するところから始まっている。

その中心をなすのが「ご鳳輦(ごほうれん)」だ。

御鳳輦(ごほうれん)
七月十六日執行
 神々を乗せた御鳳輦は、毎年四十二才になる男子により担ぎ上げられ、町中を練り歩きます。厄祓の厳守な神事でもあります。御鳳輦奉仕者は、声高らかに『みょうねん』と発し、神々に感謝の気持ちを表しながら力強く担ぎ上げます。
http://kinomiya.or.jp/top/reitaisai.html

厄年の男たちが白装束を着て特別なお神輿を担いで町を練り歩くもの。浜降りという禊の神事も行う。節分から始まるご鳳輦の一年間を経て、熱海の人として一人前として認められるという一種の『通過儀礼』だ。

朝から夕方まで坂の多い熱海を歩く歩く。当時は気温も高かったのでかなり疲れたのを覚えている。

行列が神社に帰ってくると、ようやく終わりかと思いきや、ご鳳輦の方々が全力で神輿を担いだまま境内をグルグル周りだす。あんなに丁寧に厳かに担いでいたのに...めちゃめちゃ激しい。

その後、ご鳳輦の代表が挨拶を行う。
『ようやく第二の成人式を終えることができました!!』
と大の大人が涙ながらに語る姿に、衝撃を受け、目頭が暑くなったのを覚えている。

バブル感もあるディズニーパレードのようなに「熱海っぽい」夜の祭と全然違う、厳かで熱い時間だった。

話を戻そう。神事をどこまでやるか。
僕が熱海に実際に向かったのは「行列は中止だけど、どうやらご鳳輦はやるらしい」と聞いていたからだ。

熱海こがし祭りの接点を作ってくれた方の一人が今年ご鳳輦を担うのを応援したいということと、「この状況下で、何をどうやってやるんだろう」ということが、僕の目下の関心事だった。

後編へ続く

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