見出し画像

Valuationの基礎(EVとEV/EBITDAマルチプル)

今回は通常のM&Aで検討されるValuationの手法であるEV/EBITDAを見ていきます。

エンタープライズバリュー(Enterprise Value)

エンタープライズバリュー(Enterprise Value)とは、企業のある時点の金銭的な換算価値をいい、略してEVと呼ばれます。M&Aでの買収対象の経済的価値を評価する手法の一つとして用いられています。

EV=時価総額+純有利子負債(借入金等の有利子負債‐現預金)
時価総額=株価×発行済み株式総数
純有利子負債=借入金等の有利子負債‐現預金
現預金に有価証券等や遊休不動産等の換金可能な資産を含める場合もあります。

つまりEVは、ある会社を取得するために株主に支払うべき金額(=時価総額)と、買収後に銀行等へ返済しなければならない実質的な借入金(有利子負債‐現預金)の合計で計算されるため、買収時の必要資金の合計額と捉えることが出来ます。

EV/EBITDA倍率(EBITDAマルチプル)

EV/EBITDA倍率は、EVと会社が生み出す営業キャッシュフローであるEBITDA(償却前営業利益)で計算される企業価値の評価手法です。

EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)は償却前営業利益と訳され、企業が生み出す営業キャッシュフローを表しており、営業利益に非現金支出項目である減価償却費を足し戻して計算する方法が一般的です。

EBITDA=営業利益+減価償却費
EV/EBITDA倍率=EV÷EBITDA
この倍率が株価の割高・割安等の基準として用いられます。

適正倍率の水準は経済環境や業種によって変化しますが、概ね6~8倍前後が適正水準としての目安となります。

あるアクティビストファンド等は、時価総額は高いが遊休資産を多く保有しているため純有利子負債がマイナス(=現金余剰)となりEVが低くなっている企業、それこそPERは高いがEV/EBITDA倍率が0~1倍の企業を選定し、投資しているケースもありました。

またM&A時にもEV/EBITDA倍率は、買収価格の基準や銀行の資金調達総額の目安として使用されます。買い手は「マルチプルが●倍だから割安だ」、「プレミアムを●%まで付けてしまうとマルチプルが●倍となり高くなってしまう」とか、銀行は「マルチプル●倍まではローンを出せます」といったような会話が現場では行われています。

一般的にはDCF法が最もよく知られていますが、EV/EBITDA倍率で投資判断を行うファンド・会社も多いため是非知っておいてもらいたい指標です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?