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「ああいうお母さんになりたい」と思った高校時代の私

もう20年以上前。
高校生の頃の私は、ずっと続けていたクラシックバレエの限界を感じていて、バレエが好きかどうかもわからない中でがむしゃらに続けている状態でした。
私よりも上手な年下の子たちに囲まれて、前にも後ろにも道が無いような、なんとも暗い青春時代だったと思います。

それはさておき、通っていたバレエ教室に、コンクールに出場するような実力のある女の子Aさんがいました。
年は4つくらい下。当時中学生。
バレエをするには理想的な細い体、ピルエット(回転)はくるくると4・5回転、誰よりも上手いのに、誰よりも努力していました。
年下ながら、とても尊敬していました。

Aさんは練習のし過ぎで足を疲労骨折していました。
悔しそうに見学する彼女。
そのとき「将来の夢はやっぱりバレリーナ?」と聞くと「ううん、違う」と言う。
バレエは好きでも、それはそれ、これはこれ、という感じでした。
その答えに心底ビックリしました。

 

彼女のお母さんは朗らかで恰幅が良く、いつも笑顔でした。
バレエ髪にまとめるためにパーマをかけた娘のせいで、学校に呼び出されたという話も、笑いながらしてくれました。
でも、Aさん曰く「怒ったらけっこう怖い」のだそう。

AさんもAさんのお兄さんも、学年でトップの成績だと聞きました。
賢くて努力家で、何より自分を信じる力をしっかり持っているAさんを育てているお母さんって、すごいなあ。

まだ結婚すら遠い世界だと思っている高校時代に「こんなお母さんになりたい」と思ったものでした。

今考えると、お母さんも相当、賢い方だったのだろうと思います。
厳しく支配してバレエを上達させるのではなく、「やりたいと言うからやらせている」というあくまで本人主体である印象でした。
大好きなバレエにどっぷり浸かり、なおかつ周囲には高く評価されているにも関わらず、本人はそれを鼻にかけるわけでもない。
バレリーナを夢にするわけでもない。

たぶんそのお母さんは、バレリーナの道が険しいことを把握していたのだと思います。
華々しい世界だけれど、水面で一生懸命水をかく水鳥のように、大変なことも多いことを知っていて、それを本人に推奨することは憚られたのかもしれません。

好きなものに没頭する素晴らしさ、勉強の大切さを子どもに実感させるには、いろいろな工夫が必要だと思います。
文武両道、そして自分を信じる力を持つこと。
力技だけではうまくいかないのが子育て。
それを上手に導いていたそのお母さんには、今も憧れ続けています。
お元気かなあ。

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