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「ウイテマテ」命を守る水泳教育と、里親をする両親の想いとは?

岩崎恭子さんプロフィール
静岡県沼津市出身の日本の元競泳選手、指導者。専門種目は平泳ぎ。1992年バルセロナオリンピック200m平泳ぎ金メダリスト。14歳での競泳史上最年少金メダル獲得記録保持者でもある。
instagram:kyo_koiwasaki

里親をしているご実家の話

諸岡:恭ちゃんのご実家って、里子さん預かったりしてるでしょ? 

岩崎:そうそうそう、してるしてるー。 

諸岡:それもなんか、また特別なご両親の考え方があるのかなぁと思って。 

岩崎:あのぉ、子どもが好きだったのはもちろんあるんだけど。社会に恩返ししたいっていう気持ちはあるみたいで。私も、いっぱいね、みんなに応援してもらったっていうのもあるし。私、はじめ養子と里子の違いも知らなかったのね。 

諸岡:いや、そのレベルだと思う、大体。

里親制度とは
何らかの事情で子を育てられない親の代わりに
一時的に家庭内で子どもを預かり養育する制度
里親と子どもに法的な親子関係はなく
実親が親権者となる  

岩崎:一番上の子はもう14か15になるのか。だから、14年前からずっといて。生まれたてできたから。 

諸岡:へえ。じゃあ本当に0からの子育てなんだね! 

岩崎:そうそうそう。だから、じいじばあばだよね、じいじ、ばあばって言ってるから。それは、私も立派だなって思うし、私も帰った時にはその子たちのために何かしてあげたいなと思うし。帰った時だけじゃないけど、そういう気持ちで。 

諸岡:ええ、じゃあその里子さんたちにとって、恭ちゃんはきょうだいみたいな感じなの? 

岩崎:兄弟とは思ってないと思うんだけど。もちろん里子というのは、本人たちわかってるから。でも帰ったら、ねえね、ねえねって、私のことは言うんだけど。 

諸岡:そういうことをなさってるって、すごいなと思って。 

岩崎:里親って、日本は今、審査があって、すごく大変なんだよね。やっぱりお金(養育費)はいただくからっていうので、審査があるみたいなんだけど。

走って寄付、泳いで寄付!?

岩崎:本当はね、もっと広がって欲しいし、なんか里親とかだけじゃなく、ボランティアとかっていうものがもうちょっと日本に根付いてくれたらいいなって思っていて。ほら、この前キューちゃんがさ、走って寄付ってやったじゃない?日本人ってあれ理解できないじゃない? 

諸岡:そうなの!私、本当にわかってなくって、あの、走って寄付は。 

岩崎:ふふふ。でも、海外では結構そう言うの当たり前で。私がアメリカに1年間留学をさせてもらってた時に、子供たちが、泳いだ距離で、長いほど寄付するの。そう言うのが、年に何回かあるの。そういう子供たちのボランティア活動っていうのをスイミングスクール自体でいろいろやるの。で、そういう姿を見た時に、「あぁ、これが教育だな」って思ったの。やっぱり子供の時にそういうことをやってないと、受け入れられないんだと思うの。
 だから、両親が(里子を)受け入れたのも、「え?」って思ったけど、でも両親が決めたことだから「いっか!」って思ったの。でもそれは、海外に行ってそれを見たのも大きかったのかも。だから、水泳をやってなかったらそういう気持ちにもならなかったかもしれない。

現代の子どもたちの運動能力低下

諸岡:経済格差が子どもの体力の格差にもつながっているっていう風に言われていて。 

岩崎:身長は伸びてるのに体力は低下してるっていうデータが出たんだよね。  

1964年の東京五輪直後に調査した子どもの身長体重と運動能力を、2019年に再び調査したところ、16歳男子で身長は5センチ以上伸びているもののボール投げや握力などの運動能力は低下していることがわかりました。これは男女問わず同様の結果になりました。

岩崎:やっぱね、小中学生までがすごく大事なんだよね、基礎体力作りって。体育の授業でカリキュラムであるんだけど、それだけじゃやっぱり賄えないんだよね、今の体力って。だからこそ習い事をやって補っていかなきゃいけないっていうのもあるから、そこで経済格差が出てしまう。
 昔は家に帰ってランドセルをバーン!って投げて走って遊びに行った。今はほら、公園でゲームをしてるじゃない?みんなスイッチとか持って(笑)。 

諸岡:あは、確かに。滑り台でお兄ちゃんたちがスイッチやってるもんね(笑)。 

岩崎:そう、だからそれは、「今日はゲームしないで遊ぶ日ね」っていうふうに、それは親が導いて欲しいなって思うんですよね。  

学校での水泳教育、どうなるべき?

諸岡:今の日本の学校での水泳教育って、こういう風に変わっていくといいなっていうのはあったりする? 

岩崎:もうちょっと島国だから、本当は泳ぐんじゃなくって、まずは自分の身を守るためのことっていうのを、すごくやって欲しいなって思っていて。溺れないように。本当はね、プールを深くしちゃった方がいいんだよね。 

諸岡:ひい、ドキドキする〜。 

岩崎:でもそれは、足がついちゃうから覚えないんだよ、そういうことを。アメリカのプールとかめちゃくちゃ深いもん。 

諸岡:えー、そうなの? 

岩崎:浅いから飛び込みできないんでしょ?飛び込み禁止、事故になるから。それはそうだよ、だって教えてないから事故になるよねって思うのね。あと、オランダだと運河が多いから、普通に公道を歩いてておっこっちゃうとかあるみたいなの。 

諸岡:あは、なるほど。 

岩崎:だから、はじめは泳ぐんじゃなくって、自分の身を守るための動きっていうのを教えるらしいの、小さい頃から。そういうのって大事だなって、すごく思ってて。
 今、子どもの方がよく知ってるんだよね、やっぱり。着衣泳って言って、着衣したまま水に入っるっていう、水上安全法みたいな感じなんだけど。「ウイテマテ」とか。 

「ウイテマテ」とは、溺れたり沖に流された時に、水面に仰向けで大の字になり、浮いた状態で救助を待つ方法の合言葉です。

 岩崎:だから私たちの年代の人の方が、そういうのあんまり知らなくって、やってないから。学校にせっかくプールがあるからこそ、親も一緒になってそういうことを考えてもらいたいなって。それから、泳ぐっていう技術になっていってくれたらいいなっていうのは思う。

諸岡:競技とかっていうんじゃなくって、まず身を守るための技術を身につける。 

岩崎:うん。 

諸岡:恭ちゃんから着衣泳を教わることはできるの? 

岩崎:うん、そういう風に浮いてる方法とか、ペットボトルの500mlを持って・・・子どもだと500だと浮くんだよね、力抜けば。 

諸岡:へえ。 

岩崎:大人でも2ℓのやつだと浮くよ。 

諸岡:えええ! 

岩崎:そうこうやって、力入れなければ。クーラーボックスとかもすごく浮くの。 

諸岡:あああ、そっか。確かに。 

岩崎:そういう、普段浮くもの考えてみようとかやって考えてみたりするんだけど。まず、海に行く時はライフジャケットちゃんと持っていきましょうって。で、私でも、娘と遊ぶ時にはライフジャケットつけるの。じゃないと遊べないもん!足のつかないところ。川は特にスニーカーで行かせるの、もう古い。そうすると、スニーカーって空気が入ってるから、下に。何かあった時に足が浮いてくるの。 

諸岡:なるほどー!

岩崎:足が浮くと「ウイテマテ」ができるんだよね。 

諸岡:私たち親世代が勉強したいね。ただ泳ぐだけじゃないね、プールで勉強できることはね。 

岩崎:そう、だからもうちょっと小学生とかの時代に、生きることをやって欲しいなって思うんだよね。 

娘さんの未来について

諸岡:恭ちゃんのお嬢さんはお母さんの姿を見て、夢を語ったりとかってことは、ある? 

岩崎:いや、全然ない!(笑) 

諸岡:あはははは。ないかー。 

岩崎:全然ない(笑)。 

諸岡:娘さんは、ならいごとは? 

岩崎:テニスをやってる、スポーツは。で、テニス選手にはなりたいって話はするけど・・・運動神経はやっぱりいいの、すごく。だけど・・・なんか、もっとやんないとダメだよね!って思っちゃう、私(笑)。
 まだ、(将来)何やるかは決まってないと思うんだけど、それでもいいかなと思ってる。まあ、目標を持つことはすごくいいことだと思うんだけど、絶対に持たなきゃいけないというよりかは、一生懸命やれることをやってくれてたらいいなと思う。それこそ、本当に何が仕事になるかわからないじゃない?なんかもう新しいことがどんどん出てくるから。だから、(娘が)進路を決めた時に、「え、それは・・・」っていうこをと思わない自分でいたいと思うの。 

諸岡:あああ。 

岩崎:本人がやりたいことを自分で決めて、やれる人間になって欲しい。 

岩崎恭子さんの夢

諸岡:最後に、夢や野望ってありますか? 

岩崎:私が? 

諸岡:うん。 

岩崎:やっぱりね、これはずっと言い続けてるんだけど、水泳に携わっていきたいなって思ってるの、ずーっと。なんか、できるじゃん!っていう風に思われるかもしれないんだけど、やっぱりやらなきゃできないんだよね。 

諸岡:そっかぁ。 

岩崎:そう、だって休んじゃえばできなくなっちゃうし。だから、やり続けるっていうのが、夢や野望!やり続ける!水泳と関わり続ける。 

諸岡:恭ちゃん、やっぱり芯が通った・・・14歳で金メダル取るってやっぱりなんか、一本貫く強いものがあったんだろうな、あの時からっていう風に、改めて思った。

岩崎:本当?でもブレブレな時はブレブレだよ〜。

諸岡:いや、うん。ありがとうございました!

岩崎:一緒にお仕事できてよかったです!  

編集後記

「バルセロナオリンピック・競泳・金メダリスト」、という肩書きにあまりにも存在感がありすぎて、その他の側面を想像しにくい部分はあると思うのですが、岩崎恭子さんの側面のひとつには「国際人」というものがあるんだなと感じたインタビューでした。水泳をやっていたからこそ留学や遠征をされたわけですが、その時、1人の人間として様々な国で実際に見てきたこと、感じたことが、今まさに彼女の血肉となっているのだなぁ、と。その国際感覚をもって今の日本を見た時、ということで、学校での水泳教育やボランティアなどについてお話しいただいた最終回、いかがだったでしょうか?
「ウイテマテ」もちゃんと私たち親世代が身につけないとな、とか、里親制度をもっと身近に感じたいと感じた諸岡です。
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