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学習コーチの要領 #5|対話

今回は、学び手と学習コーチの対話についてです。

1. 対話

# 2 の記事でも書いたように、学習コーチとは、学習面で学び手の意思決定を引き出す伴走者です。学び手に指示などをするのでなく、学び手による気づきや意思決定の支援を行います。その際に中核となる活動が対話です。

対話においては、まず学び手が安心して話せる環境と関係性をつくり、その上で気づきや意思決定を促します。ここで鍵となる行動が、傾聴と問いかけです。

2. 傾聴

傾聴の本格的な解説は専門家の方に譲るとして、大切なことは「私はあなたに関心を寄せています。どんなことを話してもらっても構いません」といった姿勢を持つことです。ですが、姿勢というのは他人に伝わりづらいので、態度・行動・言動でもそれを示すと効果的です。

具体的には、次のような行為などがあります。
・頷く
・相槌を打つ
・学び手の言葉を繰り返す
・真剣かつ柔らかい表情をつくる
・急かさない(沈黙を含めて待つ。遮るのはもってのほか)
・(基本的に)意見しない

最後の「意見しない」が日常会話と大きく異なるので、補足しておきます。これは、否定はもちろんのこと、肯定さえもしないことを意味しています。学び手の「Aだと考える」に対し、「違います」でも「その通りです」でもなく、「Aだと考えるのですね」と返答するイメージです。

ただ、どんな場合でも意見してはいけないというわけではありません。学び手から意見を求められた場合は応じますし、提案というかたちで意見することもあります。

3. 問いかけ

問いかけには、気づきや意思決定を促す(最低でも阻害しない)ことが求められます。学び手や状況によって問いかける内容は異なりますが、次のような問いは避けた方がよいです。
・漠然とした問い(答えようがない問い)
・誘導的な問い(誘導尋問)
・攻撃的な問い(詰問)

特に、「教える」姿勢でいると誘導的な問いになりがちなので、教える・指示する・助言するといったことに慣れている方は意識的に注意する必要があります。

また、話や視点の軸を把握しておくと、学び手の視点を深めたり広げたりする問いが生まれやすくなります。視点を広げる場合には、次のように軸の対を考えるのも一手です。
・過去/現在/未来
・総論/各論
・論理/感情
・楽観/悲観
・過程/結果

オマケ:問いかけの例

問いかけはマニュアル的なものではないですが、それでもご参考までに一例を書いておきます。

計画
・来週の今日を想像してみてください。どうなっていることを望みますか?
・そのために必要なのは、どんなことでしょうか?
・他にはどんなことがありますか?(他にはないという回答まで繰り返し)
・挙げてもらったことの中で、どれに取り組みますか?
・それはこの1週間でできそうでしょうか?
振り返り(全体)
・この1週間はいかがでしたか?
・この1週間に点数をつけるとしたら、100点満点で何点ですか?
・100点に達していないのは、どのような点からですか?
・もし過去に戻ったとしたら、何をしておきたかったですか?
振り返り(個別の学習内容)
・どの学習内容に伸び悩んでいますか?
・答えや解説を見て、納得できましたか?
・もう一度出題されたら、解けると思いますか?
・解けるようになるには、どうすればよいでしょうか?
・他にはどんな方法がありますか?(他にはないという回答まで繰り返し)
・挙げてもらったことの中で、どの方法に取り組んでみたいですか?

4. おわりに

本記事では、学習コーチにおける対話、および対話における重要な行為である傾聴と問いかけについて書きました。

本連載はここまでで締めさせていただきます。ご参考までに、末尾にこれまでの記事のリンクをまとめておきます。学び手を支援されるどなたかの一助になれば嬉しいです。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!

これまでの記事
# 1 はじめに
# 2 役割
# 3 全体の流れ
# 4 計画と振り返り

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